45 / 49
バルファ旅行記すりー前編
すりー前編22
しおりを挟む「他に名所は?」
「歴史的なものは街のはずれだしな。適当に歩いて見つけた店を覗きつつ目的のところに行こう」
「わかった」
たまにある店を見たりして、徐々に目的の場所に近づいた。
こういう場合がっつり見ては駄目なのは分かるが、気になって見てしまいそうだ。というか、傍から見るとあきらかに見ているかもれない。そういったさりげなく見ることも今度訓練で教えてもらおう。
その場所は大きなテントのようだ。中で劇とかサーカスとかしそうなイメージが沸くが、寂れた感はすでに何も営業してなさそうに見える。そう考えるのは向こうで新しいものばかりを見慣れているからかもしれない。
周囲にはほとんど人はいなくて静か、近くにわずかにいる人は完全に荒くれな見た目で、俺を襲った連中のような目をしている。
誠那が俺の肩を叩いた。ここに長くいては目立つからだろう。俺は何も言わずに誠那の後をついていく。
それからというと、まずテントなどの情報を誠那が調べることになった。何故誠那がといえばこの世界での常識を知っているからと、2人分の姿を見られないほうがいいということ。宿は一緒で2人でいることもあるが一応の予防だ。
それでは俺にはやることなしで嫌だと言えば、街での最近の状況を探ってくれという。
この街も荷担はしていなくても違法取引があることを知っている人が多いからだ。知っていて国に進言しないのは、報復が怖いのと、知っているといっても確かなものでなく、さらに街が潤うことに関係しているからだろうと誠那は推測していた。悲しい事実ではあるが、そんなものだろう。ここは資源とかなさそうだしな。
どこまで街人が噂として知っているかは分からないが、俺は次の取引に関して何か街に変化がないか調べる。
方法は宿のミュリシャさんの手伝いだ。家の中にいるだけの人でなく行動範囲は広い。
「あら! 素敵な方。宿のお客?」
「ええ。すごいでしょ」
2人で並んで歩いていれば、花屋のおばちゃんに声をかけられた。
ミュリシャさんとは年齢が近いから俺と一緒に歩くことで変な噂にならないかと思ったが、まったく問題ないようだ。
「本当にどこかの王子様にしか見えないわ。あんたが間違って浮気している相手なんて到底思えないわね」
…そういうことなのか…。まあ、人種の違いが見た目にあるし、余所の人だとは一目瞭然か。
「ないわよー。オミにはちゃんと素敵な人がいるわ」
…はて? そんな話をしただろうか。というか、そんな人がいるのか俺には。
「それは同じくあなたのところに泊まっているもう1人のことね! 詳しく聞きたいわ」
あああ、誠那のことか。そういえば駆け落ちとか言ってたな。駆け落ち説は消えても俺達の関係は消えてなかったんだな。…どうするか…。
ミュリシャさんとおばちゃんは、俺をおいて誠那の話を楽しそうにする。間に入って違うんですと言う勇気が起きないのはどういうことだろう。
誤解をどう解くべきか考えてるうちに話は終わり、次はちゃんと買い物に行く。昨日行った市だ。
そこで今日の料理に使うための食材を買っていく。ミュリシャさんに何が食べたいと聞かれたので、あの!菜っぱをお願いしてみた。あっさりと許可が出てそれも購入される。
ミュリシャさんがカボチャのような見た目の野菜のどれを買おうか悩んでいる時に、俺の耳にするりと目的の話が入ってきた。
「…今度また取引があるらしいわ。最近ちょっと多いわね。それで見つかったりしないかしら」
「…でも、宿にはそんなに上客らしき人が来てるって噂は聞かないけど」
「代理の人が来ているのよ」
「そうなのね。幻獣ってよく知らないけど、中には可愛いのもいるらしいし、今度見に行ってみようかしら」
「あら、幻獣はどれもすごく高いから私達には無理よ」
「…買わないわよ。そんな贅沢できないし。ただ、ちょっと見るだけ」
おばちゃん2人の会話で、2人は普通の井戸端会議のように周囲を気にすることなく話している。
…しかたないとか思ってたけど、ちょっとショックだ。誠那父もそうやって売られて悪ラルクスになったのだから。
「オミ。行くわよ」
「あ。ああ…」
俺が落ち込んでいたら、ミュリシャさんに腕を引かれた。どうやらとっくに買い物は終わっていたらしい。しかしミュリシャさんの表情がちっょと怖い。いい物が手に入らなかったのだろうか?
そうして市を抜けて家にまで帰ってきた。
「…ごめんね?」
「…え?」
なに?え?
腕を引っ張ってたことにか? 女性の力だから、別に痛みとか感じてないけど。
0
あなたにおすすめの小説
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
事なかれ主義の回廊
由紀菜
BL
大学生の藤咲啓嗣は通学中に事故に遭い、知らない世界で転生する。大貴族の次男ランバート=アルフレイドとして初等部入学前から人生をやり直し、学園で出会う無愛想で大人顔負けの魔法の実力者であるヨアゼルン=フィアラルドと親友になるが、彼に隠された力に翻弄され次々と襲ってくる災難に巻き込まれる。終いには、国家の存続を揺るがす大事件にまで発展することに・・・
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる