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バルファ旅行記すりー前編
すりー前編22
しおりを挟む「他に名所は?」
「歴史的なものは街のはずれだしな。適当に歩いて見つけた店を覗きつつ目的のところに行こう」
「わかった」
たまにある店を見たりして、徐々に目的の場所に近づいた。
こういう場合がっつり見ては駄目なのは分かるが、気になって見てしまいそうだ。というか、傍から見るとあきらかに見ているかもれない。そういったさりげなく見ることも今度訓練で教えてもらおう。
その場所は大きなテントのようだ。中で劇とかサーカスとかしそうなイメージが沸くが、寂れた感はすでに何も営業してなさそうに見える。そう考えるのは向こうで新しいものばかりを見慣れているからかもしれない。
周囲にはほとんど人はいなくて静か、近くにわずかにいる人は完全に荒くれな見た目で、俺を襲った連中のような目をしている。
誠那が俺の肩を叩いた。ここに長くいては目立つからだろう。俺は何も言わずに誠那の後をついていく。
それからというと、まずテントなどの情報を誠那が調べることになった。何故誠那がといえばこの世界での常識を知っているからと、2人分の姿を見られないほうがいいということ。宿は一緒で2人でいることもあるが一応の予防だ。
それでは俺にはやることなしで嫌だと言えば、街での最近の状況を探ってくれという。
この街も荷担はしていなくても違法取引があることを知っている人が多いからだ。知っていて国に進言しないのは、報復が怖いのと、知っているといっても確かなものでなく、さらに街が潤うことに関係しているからだろうと誠那は推測していた。悲しい事実ではあるが、そんなものだろう。ここは資源とかなさそうだしな。
どこまで街人が噂として知っているかは分からないが、俺は次の取引に関して何か街に変化がないか調べる。
方法は宿のミュリシャさんの手伝いだ。家の中にいるだけの人でなく行動範囲は広い。
「あら! 素敵な方。宿のお客?」
「ええ。すごいでしょ」
2人で並んで歩いていれば、花屋のおばちゃんに声をかけられた。
ミュリシャさんとは年齢が近いから俺と一緒に歩くことで変な噂にならないかと思ったが、まったく問題ないようだ。
「本当にどこかの王子様にしか見えないわ。あんたが間違って浮気している相手なんて到底思えないわね」
…そういうことなのか…。まあ、人種の違いが見た目にあるし、余所の人だとは一目瞭然か。
「ないわよー。オミにはちゃんと素敵な人がいるわ」
…はて? そんな話をしただろうか。というか、そんな人がいるのか俺には。
「それは同じくあなたのところに泊まっているもう1人のことね! 詳しく聞きたいわ」
あああ、誠那のことか。そういえば駆け落ちとか言ってたな。駆け落ち説は消えても俺達の関係は消えてなかったんだな。…どうするか…。
ミュリシャさんとおばちゃんは、俺をおいて誠那の話を楽しそうにする。間に入って違うんですと言う勇気が起きないのはどういうことだろう。
誤解をどう解くべきか考えてるうちに話は終わり、次はちゃんと買い物に行く。昨日行った市だ。
そこで今日の料理に使うための食材を買っていく。ミュリシャさんに何が食べたいと聞かれたので、あの!菜っぱをお願いしてみた。あっさりと許可が出てそれも購入される。
ミュリシャさんがカボチャのような見た目の野菜のどれを買おうか悩んでいる時に、俺の耳にするりと目的の話が入ってきた。
「…今度また取引があるらしいわ。最近ちょっと多いわね。それで見つかったりしないかしら」
「…でも、宿にはそんなに上客らしき人が来てるって噂は聞かないけど」
「代理の人が来ているのよ」
「そうなのね。幻獣ってよく知らないけど、中には可愛いのもいるらしいし、今度見に行ってみようかしら」
「あら、幻獣はどれもすごく高いから私達には無理よ」
「…買わないわよ。そんな贅沢できないし。ただ、ちょっと見るだけ」
おばちゃん2人の会話で、2人は普通の井戸端会議のように周囲を気にすることなく話している。
…しかたないとか思ってたけど、ちょっとショックだ。誠那父もそうやって売られて悪ラルクスになったのだから。
「オミ。行くわよ」
「あ。ああ…」
俺が落ち込んでいたら、ミュリシャさんに腕を引かれた。どうやらとっくに買い物は終わっていたらしい。しかしミュリシャさんの表情がちっょと怖い。いい物が手に入らなかったのだろうか?
そうして市を抜けて家にまで帰ってきた。
「…ごめんね?」
「…え?」
なに?え?
腕を引っ張ってたことにか? 女性の力だから、別に痛みとか感じてないけど。
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