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君の為に1
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今日も空気が気持ちいいです。家を出て美味しい空気を吸いました。
あれ?普段静かな帰れずの森が騒がしい。ちっちゃなざわめきだけど、どこか気になるので行ってみることにした。
とくに凶暴な動物がいるようでもないなあ。一応と沢までやってくる。カエルを発見しました。おはようございます。
…んー?なにか聞こえる?沢の側にある茂みを覗いてみますか。
ほあ。
物語に出てくる王子様のような美形の男の人が、頭をかかえガクブルしていた。
こんな美形を見るのはいつぶりかな?んー…、すごい昔だった気がする。
涙目なのに気づいて可哀想になり、うちに連れていくことにした。
時々手負いの動物とか拾ってしまうんだよね。自然の摂理に任せるべきなんだけど。人は別かな?
「大丈夫ですか?」
「う…、ありがとう」
王子様(仮)にお茶を出せば手をぎゅっと握られた。首を傾げる。すぐに離してくれたので気にしないことにした。
「あの…、どうしてあそこに?…無理に話す必要はないですけど」
「あー、えと…」
王子様(仮)はほんのり顔を赤くしているから、少し恥ずかしいことなのかな?美形すぎて近づき難い感じだったけど、ほんわりした雰囲気で可愛いらしい人かもしれない。
「…できれば、聞いてほしいかな。…ただの愚痴なんだけど」
「いいですよ」
助けてほしいじゃないなら僕でも問題はないだろうし。
「あ、僕はアルサス。テイルーウィス国の第一王子なんだ」
「ほえ?!」
本当の王子様だったの?!…そりゃそうか、王子様みたいな見た目だものね。
「あ!えと、身分とかは気にしなくて大丈夫だからね?うちはおおらかな国柄だし」
「はい」
身分の問題って大変だものね。わざわざ言うってことはきっと色々あったんだろう。安心させるように微笑んでみる。僕の笑顔なんて王子様には意味ないことかな?
「よかった。君に避けられたくはなかったから」
「そうだ。僕の名前はウィロです」
「ウィロかあ。かわいい名前だね」
そうかな?考えたことない。
「それでどうしたんですか?」
ガクブルするなんてよっぽどだ。魔獣に追いかけられたとか?でも近くにいなかったか。
「それがね。僕は光魔法が使えるんだ」
「神に愛された力ですね」
魔法ができる人も少ないけど、その中でも光属性の魔法ができる人は少ない。性質が合っている人しか備わってないんだ。だいたい愛情深い人が多いから神に愛された力とか言われている。アルサス王子ならぴったりな魔法だ。
「でもたいしたことはできないよ?せいぜい中級のものくらいで。…ただ、今現在この世界で一番の光魔法の使い手なんだ。…ウィロは知ってるかな?魔王を倒す為に必要なウィラルイロの剣は光魔法の使い手しか使えないってこと」
「?」
「知らない?ほとんどの人は知らないかな」
「魔王ってなんですか?」
「え、それも知らないの?小さな村だし魔王の脅威とか関係ないのかな?」
「悪い人ですか」
「そうだよ。人っていうか、魔族の王様なんだ」
そんな存在がいたなんて全く知らなかった。アルサス王子が言ってたみたいに奥地の村にいたら関係ないのかも。
王子の話によると千年くらい前に魔王という存在が現れ、その度に勇者が退治してきて、今は8回目の魔王復活だとか。
「それでね、魔王を倒す為の勇者が選ばれるんだけど、さっき言ったように、光魔法の使い手じゃないと駄目なんだ。これまではとっても強い光魔法の使い手が勇者になってきたのに、今は僕程度の力の人間しかいなくて、さすがにそれでは無理だろうって考えてたんだけど、なかなか強い人が現れなくて、もう待ってられないって…」
「それでアルサス王子が選ばれたんですね」
「そうなんだ!僕は光魔法が使えるだけで、他の魔法もたいして使えないし、剣だってそこらの兵士のほうが強いよ。僕に魔王退治なんてできるわけないんだ!どうして…僕が…、ううう…」
きれいな涙を零しだしたアルサス王子。こんなきれいな人が悲しんでいるなんて普通より可哀想に見える。僕は慌ててどうしたらいいのか分からなかったけど、背中を撫でたり声をかけたりしてみた。
だけどそんなことになってるなんてちっとも知らなかったなあ。
そういえば、村のおばちゃんが何度か話してたかも。勇者がかっこいいとかなんとか言ってたから、演劇の話かと思ってた。吟遊詩人の語りにうっとりするとか言ってたし。
「それで、魔王のもとに向かってる最中なんだけどさ。やりたくなくて逃げたんだ。情けないって分かってるけど…」
悲しそうなアルサス王子。僕の眉も下がってるだろう。
「だけど………。その……、もし君が一緒に来てくれるなら頑張ってみようかなって……いや、あの、えと、」
いきなり、わたわたしはじめたアルサス王子。顔も赤い。よく分からないけど、元気みたいだし可愛い。美形の人はなにやっても似合うよね。
「一緒に行ってもいいですか?」
「え?ついてきてくれるの?」
「はい。アルサス王子がよろしいなら」
「もちろん!僕のほうがお願いしたんだし、大事にするし、魔獣からも絶対守ってみせるよ!」
何故か分からないけど、とっても嬉しそう。やっぱり笑顔のほうがいいね。アルサス王子に必要とされると嬉しいな。ほっこりする。
さて、魔王とやらがどんなものか見に行きますか。
僕は遙か昔に神から見極める者に認定され力を与えられた者だ。
勝手にされてしまったから、最初怒った。と思う。…昔すぎてはっきり覚えてないけど、それからずっと、静かな村ばかりを転々としていた。
時々眠ったりもするよ。百年くらい。
ひっそり生活すぎて世の中のことに疎くなりすぎてた。世界の調和に大きな乱れは感じないから、放っておいてもいい程度のことだと思うけど、アルサス王子の為になんとかしてあげたいなって思う。
…もしかしたら、三百年ほど前に神が一つだけ願いを叶えようと言ったのを頼むかもしれない。
見極める者をやめることを。
あれ?普段静かな帰れずの森が騒がしい。ちっちゃなざわめきだけど、どこか気になるので行ってみることにした。
とくに凶暴な動物がいるようでもないなあ。一応と沢までやってくる。カエルを発見しました。おはようございます。
…んー?なにか聞こえる?沢の側にある茂みを覗いてみますか。
ほあ。
物語に出てくる王子様のような美形の男の人が、頭をかかえガクブルしていた。
こんな美形を見るのはいつぶりかな?んー…、すごい昔だった気がする。
涙目なのに気づいて可哀想になり、うちに連れていくことにした。
時々手負いの動物とか拾ってしまうんだよね。自然の摂理に任せるべきなんだけど。人は別かな?
「大丈夫ですか?」
「う…、ありがとう」
王子様(仮)にお茶を出せば手をぎゅっと握られた。首を傾げる。すぐに離してくれたので気にしないことにした。
「あの…、どうしてあそこに?…無理に話す必要はないですけど」
「あー、えと…」
王子様(仮)はほんのり顔を赤くしているから、少し恥ずかしいことなのかな?美形すぎて近づき難い感じだったけど、ほんわりした雰囲気で可愛いらしい人かもしれない。
「…できれば、聞いてほしいかな。…ただの愚痴なんだけど」
「いいですよ」
助けてほしいじゃないなら僕でも問題はないだろうし。
「あ、僕はアルサス。テイルーウィス国の第一王子なんだ」
「ほえ?!」
本当の王子様だったの?!…そりゃそうか、王子様みたいな見た目だものね。
「あ!えと、身分とかは気にしなくて大丈夫だからね?うちはおおらかな国柄だし」
「はい」
身分の問題って大変だものね。わざわざ言うってことはきっと色々あったんだろう。安心させるように微笑んでみる。僕の笑顔なんて王子様には意味ないことかな?
「よかった。君に避けられたくはなかったから」
「そうだ。僕の名前はウィロです」
「ウィロかあ。かわいい名前だね」
そうかな?考えたことない。
「それでどうしたんですか?」
ガクブルするなんてよっぽどだ。魔獣に追いかけられたとか?でも近くにいなかったか。
「それがね。僕は光魔法が使えるんだ」
「神に愛された力ですね」
魔法ができる人も少ないけど、その中でも光属性の魔法ができる人は少ない。性質が合っている人しか備わってないんだ。だいたい愛情深い人が多いから神に愛された力とか言われている。アルサス王子ならぴったりな魔法だ。
「でもたいしたことはできないよ?せいぜい中級のものくらいで。…ただ、今現在この世界で一番の光魔法の使い手なんだ。…ウィロは知ってるかな?魔王を倒す為に必要なウィラルイロの剣は光魔法の使い手しか使えないってこと」
「?」
「知らない?ほとんどの人は知らないかな」
「魔王ってなんですか?」
「え、それも知らないの?小さな村だし魔王の脅威とか関係ないのかな?」
「悪い人ですか」
「そうだよ。人っていうか、魔族の王様なんだ」
そんな存在がいたなんて全く知らなかった。アルサス王子が言ってたみたいに奥地の村にいたら関係ないのかも。
王子の話によると千年くらい前に魔王という存在が現れ、その度に勇者が退治してきて、今は8回目の魔王復活だとか。
「それでね、魔王を倒す為の勇者が選ばれるんだけど、さっき言ったように、光魔法の使い手じゃないと駄目なんだ。これまではとっても強い光魔法の使い手が勇者になってきたのに、今は僕程度の力の人間しかいなくて、さすがにそれでは無理だろうって考えてたんだけど、なかなか強い人が現れなくて、もう待ってられないって…」
「それでアルサス王子が選ばれたんですね」
「そうなんだ!僕は光魔法が使えるだけで、他の魔法もたいして使えないし、剣だってそこらの兵士のほうが強いよ。僕に魔王退治なんてできるわけないんだ!どうして…僕が…、ううう…」
きれいな涙を零しだしたアルサス王子。こんなきれいな人が悲しんでいるなんて普通より可哀想に見える。僕は慌ててどうしたらいいのか分からなかったけど、背中を撫でたり声をかけたりしてみた。
だけどそんなことになってるなんてちっとも知らなかったなあ。
そういえば、村のおばちゃんが何度か話してたかも。勇者がかっこいいとかなんとか言ってたから、演劇の話かと思ってた。吟遊詩人の語りにうっとりするとか言ってたし。
「それで、魔王のもとに向かってる最中なんだけどさ。やりたくなくて逃げたんだ。情けないって分かってるけど…」
悲しそうなアルサス王子。僕の眉も下がってるだろう。
「だけど………。その……、もし君が一緒に来てくれるなら頑張ってみようかなって……いや、あの、えと、」
いきなり、わたわたしはじめたアルサス王子。顔も赤い。よく分からないけど、元気みたいだし可愛い。美形の人はなにやっても似合うよね。
「一緒に行ってもいいですか?」
「え?ついてきてくれるの?」
「はい。アルサス王子がよろしいなら」
「もちろん!僕のほうがお願いしたんだし、大事にするし、魔獣からも絶対守ってみせるよ!」
何故か分からないけど、とっても嬉しそう。やっぱり笑顔のほうがいいね。アルサス王子に必要とされると嬉しいな。ほっこりする。
さて、魔王とやらがどんなものか見に行きますか。
僕は遙か昔に神から見極める者に認定され力を与えられた者だ。
勝手にされてしまったから、最初怒った。と思う。…昔すぎてはっきり覚えてないけど、それからずっと、静かな村ばかりを転々としていた。
時々眠ったりもするよ。百年くらい。
ひっそり生活すぎて世の中のことに疎くなりすぎてた。世界の調和に大きな乱れは感じないから、放っておいてもいい程度のことだと思うけど、アルサス王子の為になんとかしてあげたいなって思う。
…もしかしたら、三百年ほど前に神が一つだけ願いを叶えようと言ったのを頼むかもしれない。
見極める者をやめることを。
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