ツクチホ短編まとめ

はるば草花

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君の為に2

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僕は今、とても幸せです。

光魔法ができるってだけで勇者にさせられ、無理矢理魔王退治させられた時は人生終わったと思ったけど、今はそんな嫌な事もよかったって思えるよ。

なんたって…。


「アルサス王子頑張ってー」

「うん。ウィロは危ないから、そこで待っててね」

「はい!」


運命の人と出会えたから。

危ないから待っててとかも一度は言ってみたいセリフだよね。僕の運命の人はほわほわふわふわした雰囲気の可愛い人。でも僕が可愛い可愛いと言ってても、他の人は普通の人にしか見えないらしい。

…僕にだけそう見える魔法でもかかってるのかな?だったら、他の人がウィロが可愛いって近寄ってこないからいいね。


「王子!でれでれしてないで動いてください!」


おっと、そうだった。今は魔王のもとに向かう道中で、いきなり目の前に現れた魔獣を倒すべく奮闘している。

僕を諌めたのは僕の幼なじみの従者で勇者の仲間として付いてきているランドだ。

さて、ウィロに格好いいとこ見せなきゃなと、魔獣に向かう。

うようよ動く触手が僕に向かってきたが、もう何度も戦ってる種類なので、動きは分かりきってるので簡単に避けて、剣で弱点を切りつけた。

そんな感じで全部の魔獣を倒すと、ウィロが近づいてきた。


「お疲れさまです」

「ウィロが側にいてくれるから頑張れるんだよ」


にっこり微笑めば、ウィロも微笑んでくれたよ。嬉しいなあ。

見つめあって幸せを感じていたのだけど、突然の悲鳴に邪魔される。なんなんだと不機嫌にその方向を見れば、


「わっ」


さっきの魔獣とは比べ物にならないくらい大きな魔獣が現れていた。こんな大きいの初めてみた。


「え、え、どうしよウィロ。あんなのどう倒せばいいのか分からないよ」


どう考えても僕の剣も魔法もきかない相手だ。ここはウィロの手を取って逃げるべきかな。


「話してくるよ」


いつもと変わらない穏やかな声でそう言ったウィロは魔獣のほうへと歩いていく。

少し不安だけど、ウィロを信じるよ!


「どうしたの、そんなに暴れる子じゃなかったでしょ?」


本当に話しかけたウィロで、魔獣はグルルと唸った。


「なにかまとわりついてるね。それで機嫌が悪いのかな?とってあげるよ」


ウィロがそう言ったすぐに風が起こり、様々な色の光の粒が魔獣の周りをなぞっていく。
突風のような風が通り過ぎれば、空気が綺麗になった気がした。大きな魔獣もすっきりしたように見える。一鳴きして翼を広げ飛び立っていった。


「わあ。さすがウィロ!魔法詠唱もしてなかったし、すごいな。やっぱり見極める者だからかな?」


ウィロのすごさに僕は嬉しくなる。

ウィロと出会ってウィロを連れて仲間のもとに戻った時、ウィロが自分は見極める者なので、同行させてくださいって言ったんで、ウィロがすごい人だと知ったんだけど、こうして見るとよく分かる。


「あなたはそれでいいんですか?」

「ん?なにが?」


幼なじみ従者兼仲間のランドが呆れた顔で見てくる。なにか意味があるんだろうけど、ランドの呆れた顔は何度見ても意味が分からない。

あ、ウィロが戻ってきた。ので、ハグする。癒される。


「ウィロすごかったよ!」

「いえ…、仕事?みたいなものですから」


謙遜してるウィロは照れてるのか頬が赤くなってて可愛い。ランドがさらに呆れた視線を送ってくるけど、意味が分からないから気にしないことにした。


「はあ…、もう見極める者であるウィロ様がちゃちゃっと魔王を退治していただけませんか?」


呆れた目を僕に向けながらランドが言う。気にしない。


「言ったと思いますが、僕が世界に関与しすぎるのも逆にバランスが悪くなりかねないんで。それに魔王という存在が何かもまだ分かりませんし」


ウィロは申し訳なさそうに言う。
そうだ。前に言ってることなんだからウィロにこんな顔させるなとランドを睨む。まったく効果はないが。


「…ですよね。すみません。こんなに手伝っていただいてるのに贅沢言いました」

「いえ、あのように人が手に負えるものではないものなら僕の仕事ですから」


ウィロの言う通り、まだはっきりはしないよな。


「普通の魔獣とかなら僕が倒すからウィロはのんびりしてていいよ」

「はい。お願いします」


王城で暮らしてた頃は魔獣と戦うなんて考えられなかったけど、ウィロの為に格好いいとこ見せるのだと考えれば、すごくやる気が出る。

君の為に、

僕は頑張るよ!




「あ、また別の魔獣が!しかもさっきよりも大きいですよ!」

「ウィロ。今度もお願い!」

「うん。いってきます」

「いってらっしゃい」


僕の未来のお嫁さんはのんびりと怒り狂う魔獣のもとに向かう。

ものすごく見上げないと全体が見えないほどの魔獣だけど、ウィロはさっきと変わりなく追い払うんだろうな。今度は倒す可能性もあるかな?

そんな日々はとても幸せです。





20130611
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