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隠し事2
しおりを挟む「ここで体力回復してけば姿を見せずにすむだろ」
「悪い…」
「いや…」
見物してた身としては心苦しい。
「…平気か?」
「…あ、あ…」
「あんだけまともに殴られてて平気なやつはいねえだろ。おら、湿布でもはってやるから見せろ」
「い、い…」
「意地はんな。こっちこい」
「やめ…」
「大人しく……、あっ」
かぶせてた俺の上着が葉月の頭から落ちてしまった。故意じゃないぞ。
「え、わっ」
葉月の頭に獣耳。やはり相当弱ったようだ。
「それ…。うさぎ?」
あの特徴的な長い耳。
「…変だろう?俺みたいなのが兎って」
自嘲の笑みを浮かべる葉月。しかし、
「いや、つか、かわい」
「はっ?」
「うわっふわふわ」
近くで見ると触り心地が良さそうなのが触らなくても分かる。毛色は白っぽいが、少し茶がまじってるか?髪は黒なんだけどな。
「なあ、触っていいか?」
「なんでだ。やめろ!」
手を近づければ怒る葉月だが怖くない。が、ひとまず触るのは諦める。
「そうだ、怪我してるから耳出てんだよな。観念して見せろ」
「いやだ」
「たく、仕方ないな。だが、耳がおさまるぐらい体力回復するまではここで休んでいけよ」
「…わかった。………悪い」
申し訳なさそうな表情とうさ耳だからか、高身長で男前の顔なのに庇護欲をそそられる。
コーヒーを作ってやって葉月に渡した。いちいち耳に目がいってしまうのは仕方ないことだと思う。
「…なあ、俺みたいな男が兎って変だろ?」
姿を見られるのがよっぽど嫌だったんだろう。
「まあ、男が兎はちょっとな。だけど俺はお前に似合ってていいと思うが」
「はっ、なんだそれ」
「うちのミヤマも馬鹿にしないと思うが。まあ、俺も猫科なんでな。耳が出るのはかなり嫌だ」
「ああ…、黒豹だったか、そうか、耳は可愛いよな。俺は弱く見られるのも嫌なんだが。…見せてくれないか?」
「…いいぜ」
片方だけ見せてるのもフェアじゃないしな。力をこめると耳が現れる。
「さ、触っていいか?」
「いいけど、ハヅキのも触らせろよ」
「う…、わかった」
触るなんて絶対イヤかと思ってたが、渋々ながらも応じたことに驚く。…あれか、そんなにこの猫科耳が魅力的ということか。猫科でよかった。
「く、くすぐったい」
「だろうな」
誰かに触られたなんて一瞬くらいだから、こんなにくすぐったいとは思わなかった。
「よし、俺も」
「うおっ、ちょっ、やめ」
「おおー」
見た目通りふわふわだ。本物の兎よりいいんじゃないだろうか。
「もうやめろ!」
「いって」
長く触りすぎたらしい。葉月に腕を叩かれた。容赦なく。
「…見た目を気にして隠してたのか?」
「…お笑いだろ」
葉月の表情からするに、過去なんかあったかな。からかわれた、とか?
「だから、そんなことないと俺は思うが…。…ひとつ質問だが、兎は弱いイメージだが、ハヅキは強いよな」
「たしかに普通は獣にあった能力だが、厳密にはそういうタイプってだけで、強さは別のようだ」
「んー、つまり、ハヅキは兎では最強だから大型動物の雑魚には負けない?」
「まあ、そんなとこか…」
「へー、すげえな。逆にすげえ。ライオンとか強くて当たり前だ。ハンデがありながら強いとか、かっこよすぎだろ」
「………………」
「ん?どうした?」
「いや…、そんなこと言われたの初めてだ。つーか、そんな考えもできるんだな。ははっ、ありがとな、トウラ」
なにかふっきれたように笑顔を見せた葉月。
その笑顔がきれいで、俺は見惚れる。
というか、これは惚れた?
「…不良トップのお前が言うなら、自信にもなる。兎だっていい気がしてきた。隠してるのもよくないと思ってたし、見せるべきかな」
「…いや、ハヅキ」
人気で生徒会長に選ばれただけあって葉月はかなり整った顔をしている。それがうさ耳がついてるなんて、別の意味でばれるとよくないのでは?
「ハヅキ。誰でも知られたくないことはある。兎と知られるだけならともかく、うさ耳姿は見られたくねえだろ?」
「まあな」
「なら、俺もばれないように協力するから、これからも隠しとけ。罪悪感を感じることはないぞ。ミステリアスでいいってチワワ男子が言ってたし」
俺、必死だな。
隠されてることに不快感を感じてた奴がよく言うよな。しかし、うさ耳葉月は俺のもんだ。やらねえ。
「そうか?ならよろしく頼む」
「ああ、任せろ」
お、気づけば共同関係確保。よし、頑張ろう。
そうして俺は、前以上に不良共を管理するようにしつつ、賭とかしてる怪しい連中を始末。
その努力あって、葉月との仲もよくなっていくのだが、
葉月の身近に馬鹿がいた。
葉月以外の生徒会役員だ。
宿る獣が兎であることを調べて知ったのだろう。俺に従わないような性格の悪い不良を使って、うさ耳を出させようと画策した。
不覚にも俺は引き離されていて、その場に行った時には遅く、葉月はうさ耳を出していた。まあ、怪我されるよりはいいが。
そして葉月は思う存分暴れた。すさまじい蹴りで不良をあっというまに沈めていく。
うさぎ最強伝説として知られることとなった。
「あ、ハヅキ。なに耳出してんだよ」
昼に屋上でのんびりしてればうさ耳出したままの葉月が来た。
一部でうさ耳葉月の写真が出回ってるんだぞ!
俺は風紀かってくらい没収してるのに後がたたない。
「は?兎であることはばれたし、たまに出したほうがすっきりするの知ってるだろ」
「ハヅキはうさ耳の驚異をわかってなさすぎだ。他の奴に見られてないよな」
役員の連中だって、きっと葉月と親しい関係になりたくてあんな子供っぽいちょっかいかけたに違いないんだ。
「…たぶん?」
「気をつけろ!俺以外に見せるの禁止だからな!」
「なんだそれ」
「意味はそのうち分かる」
禁止だと言われた葉月は怒るでなく笑ってる。これは脈ありだよな。絶対ものにする。
「…それは独占欲だと自惚れていいんだよな」
「…あ?」
葉月はきれいな笑みをみせた。
20130605
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