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野ペンギンと恋4
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幸せが突然に来るのなら、去るのも突然なものだ。
「え。学園で飼うことが正式に決まったんですか?」
「ああ。…今の理事長の孫がペンギンが好きだと分かったんだそうだ。それで、画像とか見せたいとか言ってた」
「それで、…渋ってたペンギンを飼うことを決めたんですか」
「そうだ。これからはペンは学園のアイドルになることだろう。ああ、ペンという名前はそのままにしてもらうことには成功した。………ユキ?」
突然、理事長に機嫌よく告げられたことに俺は目眩がしそうになったが、雪は喜ぶだろうと泣く心を説得して、表情を引き締め雪に話したんだが、………話を聞いた雪の顔はすぐれない。
どうした? ものすごい心配だ。
「あ、いえ、突然なもので。…もっと、ペンを独り占めできると思いこんでいました」
「ああ、そうだな。学園のアイドルになれば、いつも一緒とはいかなくなる」
「いつまでもそういうわけにもいかないし、飼われることが決まってペンにはよかったですよね。ペン。よかったな」
雪に辛い思いをさせたいわけじゃなかったのにな。雪は笑顔でペンを見ているが、少し無理をしているように見える。
雪が喜ぶだろうなんて考えた俺はまだまだ浅いな。
「それじゃあ、ペンはいつここを離れることになるんですか?」
「そうだな。はっきりしてないが、ペンをどこで飼うのか考えてからになる。…おそらく、屋内プールの近くに場所をもうけるんじゃないか?」
「すぐに移動する可能性はないってことでいいですか?」
「ああ、そうだな。もうしばらくは一緒にいられるだろう」
「よかった。もう少しだけ、俺達とよろしくな?」
準備には時間もかかる。それまでの間は、雪はペンと一緒だな。よかった。
……そうだ。俺ももう少し、一緒だな。
その少しの間に俺は…、仲良くなっても意味ないか。幸せは限りだと噛みしめる。
金が充実した学園なだけに改装はけっこう早く終わった。うぅ…。
「それじゃあ、今日までですね」
「ああ。明日には新しく作ったペン専用の部屋に移動させる」
しんみりするな。雪のことだけでなく、ペンとも離れることになるのは少し寂しい気持ちになる。
会えなくなるわけでもないのにな。
「あの、会長」
「ん?」
「えっと、今までありがとうございました」
「別に。俺がやりたくてやったことだ」
下心で行動していたといってもおかしくないからな。
「それじゃあ、これで」
ちんまりと頭を下げた雪が俺の前から去ろうとする。
「ユキ!」
「…会長?」
去っていく雪の姿を見ているのが苦しくて呼び止める。
しかし口が勝手に呼んだだけに何も言えない。
「…会長?」
雪には立派な男の恋人がいる。ここで俺が何かを言っても雪を困らせるだけだ。
けれど、どうしても言いたい。
「悪い。ユキ。忘れてくれてかまわないから」
できれば覚えていてほしいんだが。
「…何をですか?」
雪の顔がくもった。当然だろう。いきなり何言ってんだこいつって思うよな。
「…好きなんだ。ユキ。例えお前が…、ユキ?! どうした? すまん。そんな嫌だったか?」
俺が告白したら雪の顔が瞬間的に苦しそうになる。
「…それは本当ですか?」
それは、そんな気持ち悪いこと本気じゃないですよねって意味だったらきついが、嘘なんて言えない。
「本当だ。好きだ。気持ち悪いなら忘れてくれ。ただ…。わー! ユキ、どうした?!」
今度は雪が泣き出した。そんなに嫌だったのか? 気持ち悪かったのか? だったらすまん。
「…ごめんなさい」
そ、そそそれは、応えられなくてごめんなさいで、泣いてるのか?!
あ、頭の血が下がってくのがわかる。
「俺も、会長が好き、です」
「えええええ?! さっきのごめんなさいはどういうこと?!」
驚きすぎて喜ぶより何故かと思う。
「自分でもよく分からないけど、会長を諦められないことに、ですかね」
「なんで諦める?!」
「俺みたいな、平凡な取り柄のない人間じゃ会長の役に立たない。それどころか邪魔になるかもしれない」
「関係ない! 好きなんだ。ユキが。好きなんだ。側にいてほしいんだ」
必死すぎて情けなかろうといい。俺は幸せが欲しい。ゆーきー!
「…はい。俺も。会長と少しでも一緒にいられればそれでいいと思ってたんですけど。…もっと一緒にいたいです」
「ユキ!」
感極まって雪の華奢な身体を抱きしめる。ふおおお。なんかいい。
「はう。会長…」
「ユキー!」
この時、雪が可愛らしく顔を赤くしていたが、感動してた俺は気づかなかった。惜しいことした。
落ち着いてくると疑問が思い浮かぶ。
「あれ? ユキは風紀委員長と付き合ってるんじゃないのか?」
「え?! うわ、見たんですか?」
「見た。抱き合ってた」
偶然見たことがある。2人が人目を忍んで抱き合っているのを。そこで失恋したと思ったんだよな。
略奪成功でもしたのだろうか? ペンのことで点数稼いだんだろうか。
「…違いますよ。付き合ってなんてないです。風紀委員長は従兄弟で、向こうは1つ年が上だから俺のこと弟みたいらしくて、しかもスキンシップはげしい人だから、ああいうふうに抱きしめてくることもあって。男同士で抱き合ってるからって簡単に付き合ってるなんて考えるのは、この学園だからですよ?」
「な、なるほど…」
あっさり付き合ってると思ってしまった。
とにかく、略奪でも浮気でもなく純粋な両思いなわけか。いかん。頬がゆるむ。
めでたく付き合うことになったが、俺が会長やってるので、ほとんど内緒であるが、問題ない人には喋りまくって雪に怒られた。
風紀委員長にも自慢したら、腹を立てて許可をもらうのに時間かかったりした。
今日は秘密のデートだ。
ペンの為の部屋へとこっそりやってきた。
「ユキ」
「会長」
会長じゃなくて名前がいいが、それはそのうちとして、振り返った雪可愛い。
「掃除していたのか?俺も手伝おう」
「いえ。もうだいたい終わったんで」
「そうか…。共同作業とかしたかったな…」
「ななな、なに言ってるんですか」
赤い顔の雪可愛い。
「なにって、俺は結婚を前提に付き合ってるつもりだが。あ、今すぐってわけじゃないし、そんな重く考えることはないぞ? 俺が、そう思ってるだけだから」
びびっときた相手と両思いになったんだ。身体の相性も悪くなさそうだし、年齢関係なく将来のこと考えるだろ。
「け、け、結婚は男同士では無理ですよ? 外国ならとかもなしです」
「紙にのるだけなんて意味はない。外国じゃ男女で子供いても書類上の結婚しないなんてのはけっこうあるそうだぞ? ということで雪とは養子縁組みはしたいとは思うけど、そこにこだわりはない。結婚は神と周囲に誓えば、結婚だろ?」
「ま、まだ早いです」
「分かってる。俺が、そう思ってるだけだから」
「卑怯だー!」
…雪がペンを運んで離れてしまった。
て、照れ隠しだよな? よし、迎えにいこう。
そうだ。子供はできないから、動物をたくさん飼おう。
当然、ペンギンも。
2014/04/19
「え。学園で飼うことが正式に決まったんですか?」
「ああ。…今の理事長の孫がペンギンが好きだと分かったんだそうだ。それで、画像とか見せたいとか言ってた」
「それで、…渋ってたペンギンを飼うことを決めたんですか」
「そうだ。これからはペンは学園のアイドルになることだろう。ああ、ペンという名前はそのままにしてもらうことには成功した。………ユキ?」
突然、理事長に機嫌よく告げられたことに俺は目眩がしそうになったが、雪は喜ぶだろうと泣く心を説得して、表情を引き締め雪に話したんだが、………話を聞いた雪の顔はすぐれない。
どうした? ものすごい心配だ。
「あ、いえ、突然なもので。…もっと、ペンを独り占めできると思いこんでいました」
「ああ、そうだな。学園のアイドルになれば、いつも一緒とはいかなくなる」
「いつまでもそういうわけにもいかないし、飼われることが決まってペンにはよかったですよね。ペン。よかったな」
雪に辛い思いをさせたいわけじゃなかったのにな。雪は笑顔でペンを見ているが、少し無理をしているように見える。
雪が喜ぶだろうなんて考えた俺はまだまだ浅いな。
「それじゃあ、ペンはいつここを離れることになるんですか?」
「そうだな。はっきりしてないが、ペンをどこで飼うのか考えてからになる。…おそらく、屋内プールの近くに場所をもうけるんじゃないか?」
「すぐに移動する可能性はないってことでいいですか?」
「ああ、そうだな。もうしばらくは一緒にいられるだろう」
「よかった。もう少しだけ、俺達とよろしくな?」
準備には時間もかかる。それまでの間は、雪はペンと一緒だな。よかった。
……そうだ。俺ももう少し、一緒だな。
その少しの間に俺は…、仲良くなっても意味ないか。幸せは限りだと噛みしめる。
金が充実した学園なだけに改装はけっこう早く終わった。うぅ…。
「それじゃあ、今日までですね」
「ああ。明日には新しく作ったペン専用の部屋に移動させる」
しんみりするな。雪のことだけでなく、ペンとも離れることになるのは少し寂しい気持ちになる。
会えなくなるわけでもないのにな。
「あの、会長」
「ん?」
「えっと、今までありがとうございました」
「別に。俺がやりたくてやったことだ」
下心で行動していたといってもおかしくないからな。
「それじゃあ、これで」
ちんまりと頭を下げた雪が俺の前から去ろうとする。
「ユキ!」
「…会長?」
去っていく雪の姿を見ているのが苦しくて呼び止める。
しかし口が勝手に呼んだだけに何も言えない。
「…会長?」
雪には立派な男の恋人がいる。ここで俺が何かを言っても雪を困らせるだけだ。
けれど、どうしても言いたい。
「悪い。ユキ。忘れてくれてかまわないから」
できれば覚えていてほしいんだが。
「…何をですか?」
雪の顔がくもった。当然だろう。いきなり何言ってんだこいつって思うよな。
「…好きなんだ。ユキ。例えお前が…、ユキ?! どうした? すまん。そんな嫌だったか?」
俺が告白したら雪の顔が瞬間的に苦しそうになる。
「…それは本当ですか?」
それは、そんな気持ち悪いこと本気じゃないですよねって意味だったらきついが、嘘なんて言えない。
「本当だ。好きだ。気持ち悪いなら忘れてくれ。ただ…。わー! ユキ、どうした?!」
今度は雪が泣き出した。そんなに嫌だったのか? 気持ち悪かったのか? だったらすまん。
「…ごめんなさい」
そ、そそそれは、応えられなくてごめんなさいで、泣いてるのか?!
あ、頭の血が下がってくのがわかる。
「俺も、会長が好き、です」
「えええええ?! さっきのごめんなさいはどういうこと?!」
驚きすぎて喜ぶより何故かと思う。
「自分でもよく分からないけど、会長を諦められないことに、ですかね」
「なんで諦める?!」
「俺みたいな、平凡な取り柄のない人間じゃ会長の役に立たない。それどころか邪魔になるかもしれない」
「関係ない! 好きなんだ。ユキが。好きなんだ。側にいてほしいんだ」
必死すぎて情けなかろうといい。俺は幸せが欲しい。ゆーきー!
「…はい。俺も。会長と少しでも一緒にいられればそれでいいと思ってたんですけど。…もっと一緒にいたいです」
「ユキ!」
感極まって雪の華奢な身体を抱きしめる。ふおおお。なんかいい。
「はう。会長…」
「ユキー!」
この時、雪が可愛らしく顔を赤くしていたが、感動してた俺は気づかなかった。惜しいことした。
落ち着いてくると疑問が思い浮かぶ。
「あれ? ユキは風紀委員長と付き合ってるんじゃないのか?」
「え?! うわ、見たんですか?」
「見た。抱き合ってた」
偶然見たことがある。2人が人目を忍んで抱き合っているのを。そこで失恋したと思ったんだよな。
略奪成功でもしたのだろうか? ペンのことで点数稼いだんだろうか。
「…違いますよ。付き合ってなんてないです。風紀委員長は従兄弟で、向こうは1つ年が上だから俺のこと弟みたいらしくて、しかもスキンシップはげしい人だから、ああいうふうに抱きしめてくることもあって。男同士で抱き合ってるからって簡単に付き合ってるなんて考えるのは、この学園だからですよ?」
「な、なるほど…」
あっさり付き合ってると思ってしまった。
とにかく、略奪でも浮気でもなく純粋な両思いなわけか。いかん。頬がゆるむ。
めでたく付き合うことになったが、俺が会長やってるので、ほとんど内緒であるが、問題ない人には喋りまくって雪に怒られた。
風紀委員長にも自慢したら、腹を立てて許可をもらうのに時間かかったりした。
今日は秘密のデートだ。
ペンの為の部屋へとこっそりやってきた。
「ユキ」
「会長」
会長じゃなくて名前がいいが、それはそのうちとして、振り返った雪可愛い。
「掃除していたのか?俺も手伝おう」
「いえ。もうだいたい終わったんで」
「そうか…。共同作業とかしたかったな…」
「ななな、なに言ってるんですか」
赤い顔の雪可愛い。
「なにって、俺は結婚を前提に付き合ってるつもりだが。あ、今すぐってわけじゃないし、そんな重く考えることはないぞ? 俺が、そう思ってるだけだから」
びびっときた相手と両思いになったんだ。身体の相性も悪くなさそうだし、年齢関係なく将来のこと考えるだろ。
「け、け、結婚は男同士では無理ですよ? 外国ならとかもなしです」
「紙にのるだけなんて意味はない。外国じゃ男女で子供いても書類上の結婚しないなんてのはけっこうあるそうだぞ? ということで雪とは養子縁組みはしたいとは思うけど、そこにこだわりはない。結婚は神と周囲に誓えば、結婚だろ?」
「ま、まだ早いです」
「分かってる。俺が、そう思ってるだけだから」
「卑怯だー!」
…雪がペンを運んで離れてしまった。
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当然、ペンギンも。
2014/04/19
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