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黒いモヤの正体のポイントは、パーティーにいた人には黒いモヤをまとわせた人間は少ないとはいえ何人か見かけたが、車の中から見た外にいる人には誰もそのモヤはなかった。
それからするに金持ちの中に紛れていることが多いとなる。
そこから推測するモヤとは、人の強い意志による欲が漏れて溢れているのではないか。
それを寮の部屋で仲樹に話す。
「ああ、我が儘ってことか」
仲樹は倉見の身体を包みこみながら、納得と転校生を思いだし頷いた。
「それだけの枠だと、若いだけでも簡単に現れそうだから、少し違ってもっと強い感じだと思う」
「欲深い?」
「んー、欲がねじ曲がった感じ? 欲って悪いことって感じだけど、当然の欲求だと思う。ただ、多すぎたり、異常なものだったりするのはよくない」
金持ちに紛れているのが多いのは、そういう人だからこそ、金に執着してお金をためたといえる。手段はあまりよくないやり方で金持ちになども考えられる。モヤをまとった人の中には悪い噂を聞く人もいた。
「どちらにせよ。自己中心的な我が儘がそのモヤを出してるって考えでいいだろ」
「まあ、そうかもしれない。それで、モヤは性格直せば消えないだろうか?」
「そうだな。欲深さが黒いモヤの正体だとするならば、可能性は高いな。しかし、どうやってあんな宇宙人を直す?」
仲樹は転校生の非常識ぶりにうんざりしたものだ。倉見の柔らかい髪を撫でて精神を癒す。
「びしっと矯正してみる」
「…できるのか?」
「分からないが、とにかくやってみる。別にちょっと騒がしい猿だと思えばいい。今は怖くはないさ」
ただ1人でいた頃とは違う。恥ずかしい話ではあるが、倉見は今ならなんでもできそうな気がする。
「…無理するな」
「しないさ」
仲樹は心配そうな顔をみせる。自分を思ってくれることに笑みが出る。
とにかく実験してみるしかないと、次の日にはプランもないままながら転校生達に立ち向かう。
生徒会の仕事が一段落してから動いた。
倉見の親衛隊は学園で最大規模をほこり、その親衛隊の情報網を使って転校生達の現在の場所をさぐった。
すぐに食堂で騒いでて迷惑というものがやってきた。
2人は食堂に来たが中には入らない。
簡単に暴れ出す転校生だ。今回やろうとしていることなら癇癪をおこして他生徒が迷惑になるかもしれない。
倉見は仲樹と手を繋ぎながら待つ。
30分後、騒がしくなって誰が食堂を出てきたのか分かる。
「あ! イチカゼ、イルヤ! なんだよ俺に会いに来たんだな。遅いからもう食べちゃったんだぞ!」
嫌な予定通り転校生は2人をすぐに見つけて寄ってきた。
黒いモヤとか関係なく倉見は眉間に皺ができるのを感じながら我慢して口を開く。
「お前達に言いたいことがある」
「おう! なんでも聞いてやるぜ?」
「今さらなんだというんです?」
取り巻きの副会長は倉見を睨む。かつての仲間と思うと胸が痛む倉見だったが、手の温もりを力に集団を見渡す。
「自分達が生徒にどう思われているか分かっているか?」
とにかく正しく転校生のしてきたことを理解してもらうことにする。
「それって親衛隊のことだろ! あいつら最低だ!」
「親衛隊だけじゃない。多くの生徒は迷惑している」
「そんなのあいつらが悪いんだろ」
「食堂であれだけ騒がしくしているだけでも十分迷惑だろう」
「別に普通だって、なあ!」
「そうですね。別にマナーに違反していません」
副会長の言葉に倉見は頭の中で即座にそれはないだろとつっこんだ。
「器物破損もかなり多い。これをどうイイコトだと言える?」
「それだって親衛隊が悪いんだ!」
「親衛隊が常に絡んでるわけじゃないだろう」
「なに言ってんだよ! イチカゼは俺をそんなに悪いふうにしたいのかよ!」
「そうじゃない。俺は…」
「クラミ!!」
分かっていた。転校生は手を出すのが早いと。
しかし防ぐことができず倉見は殴られ身体が後ろに倒れていく。
それを仲樹に支えられ、意識が遠のくなか、支えあえる存在がいるのはいいことだなと、幸せぼけした思考で目を閉じた。
ぱちりと目が覚めた時には後悔した。
心配というより苦しんでいる仲樹の顔を見たからだ。こんなことなら、ぼんやりせず気合いで意識を保ったのに。
それからするに金持ちの中に紛れていることが多いとなる。
そこから推測するモヤとは、人の強い意志による欲が漏れて溢れているのではないか。
それを寮の部屋で仲樹に話す。
「ああ、我が儘ってことか」
仲樹は倉見の身体を包みこみながら、納得と転校生を思いだし頷いた。
「それだけの枠だと、若いだけでも簡単に現れそうだから、少し違ってもっと強い感じだと思う」
「欲深い?」
「んー、欲がねじ曲がった感じ? 欲って悪いことって感じだけど、当然の欲求だと思う。ただ、多すぎたり、異常なものだったりするのはよくない」
金持ちに紛れているのが多いのは、そういう人だからこそ、金に執着してお金をためたといえる。手段はあまりよくないやり方で金持ちになども考えられる。モヤをまとった人の中には悪い噂を聞く人もいた。
「どちらにせよ。自己中心的な我が儘がそのモヤを出してるって考えでいいだろ」
「まあ、そうかもしれない。それで、モヤは性格直せば消えないだろうか?」
「そうだな。欲深さが黒いモヤの正体だとするならば、可能性は高いな。しかし、どうやってあんな宇宙人を直す?」
仲樹は転校生の非常識ぶりにうんざりしたものだ。倉見の柔らかい髪を撫でて精神を癒す。
「びしっと矯正してみる」
「…できるのか?」
「分からないが、とにかくやってみる。別にちょっと騒がしい猿だと思えばいい。今は怖くはないさ」
ただ1人でいた頃とは違う。恥ずかしい話ではあるが、倉見は今ならなんでもできそうな気がする。
「…無理するな」
「しないさ」
仲樹は心配そうな顔をみせる。自分を思ってくれることに笑みが出る。
とにかく実験してみるしかないと、次の日にはプランもないままながら転校生達に立ち向かう。
生徒会の仕事が一段落してから動いた。
倉見の親衛隊は学園で最大規模をほこり、その親衛隊の情報網を使って転校生達の現在の場所をさぐった。
すぐに食堂で騒いでて迷惑というものがやってきた。
2人は食堂に来たが中には入らない。
簡単に暴れ出す転校生だ。今回やろうとしていることなら癇癪をおこして他生徒が迷惑になるかもしれない。
倉見は仲樹と手を繋ぎながら待つ。
30分後、騒がしくなって誰が食堂を出てきたのか分かる。
「あ! イチカゼ、イルヤ! なんだよ俺に会いに来たんだな。遅いからもう食べちゃったんだぞ!」
嫌な予定通り転校生は2人をすぐに見つけて寄ってきた。
黒いモヤとか関係なく倉見は眉間に皺ができるのを感じながら我慢して口を開く。
「お前達に言いたいことがある」
「おう! なんでも聞いてやるぜ?」
「今さらなんだというんです?」
取り巻きの副会長は倉見を睨む。かつての仲間と思うと胸が痛む倉見だったが、手の温もりを力に集団を見渡す。
「自分達が生徒にどう思われているか分かっているか?」
とにかく正しく転校生のしてきたことを理解してもらうことにする。
「それって親衛隊のことだろ! あいつら最低だ!」
「親衛隊だけじゃない。多くの生徒は迷惑している」
「そんなのあいつらが悪いんだろ」
「食堂であれだけ騒がしくしているだけでも十分迷惑だろう」
「別に普通だって、なあ!」
「そうですね。別にマナーに違反していません」
副会長の言葉に倉見は頭の中で即座にそれはないだろとつっこんだ。
「器物破損もかなり多い。これをどうイイコトだと言える?」
「それだって親衛隊が悪いんだ!」
「親衛隊が常に絡んでるわけじゃないだろう」
「なに言ってんだよ! イチカゼは俺をそんなに悪いふうにしたいのかよ!」
「そうじゃない。俺は…」
「クラミ!!」
分かっていた。転校生は手を出すのが早いと。
しかし防ぐことができず倉見は殴られ身体が後ろに倒れていく。
それを仲樹に支えられ、意識が遠のくなか、支えあえる存在がいるのはいいことだなと、幸せぼけした思考で目を閉じた。
ぱちりと目が覚めた時には後悔した。
心配というより苦しんでいる仲樹の顔を見たからだ。こんなことなら、ぼんやりせず気合いで意識を保ったのに。
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