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世界を変える(ファンタジー)
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その目、その視線が怖かった。憎悪を含んだような強い視線。
いつかとって食われるのではないのかと、ストレスが溜まっていった。
「なんで、思い出すかな」
自嘲の笑みがでるセイレン。こんな時に何故か思い出した、学校に通っていた時の嫌な思い出。
自分よりもずっと身分の高い貴族のフェーライルによく睨まれていた。
ほとんど接点がないので、理由はわからない。
平民が嫌いというだけかもしれないが、話しかけられることもなかったので探りようがなかった。
フェーライルはおそろしく顔の整った男だったから睨む姿は恐怖だった。
「おい!早くしろ!」
「あ…」
嫌なものでも思い出していたのは現実逃避かもしれない。
厳つい兵士に忌々しげに言われ、セイレンは痛む体を震わせながらも、足を進める。
これからセイレンは
魔王に捧げられる。
おそらく、生気を奪われ、命をおとすだろう。
この世界の人と魔族との決まり事で、人の国を荒らさぬ代わりに、特殊な魔力を持つ者が見つかれば、魔王に捧げるというものだ。
魔族にとって、その人の魔力は力を増やす薬のようなものだからだ。
セイレンは決まり事とはいえ、命を差し出す気にはなれず、一度は逃げた。しかし、数十年ぶりの生け贄ということで世界中が探すので、すぐに捕まってしまった。
牢屋の中にいたセイレンが外に出るということは魔王の元に行くということしかない。
もう精神的に疲れきったセイレンは何も考えたくないと思った。
その時、
「がはっ」
「何者だ?!うっ」
騒がしい音に、セイレンは俯いていた顔を上げる。周囲にいた兵が次々と倒されていく。
突然のことに呆然とするしかないセイレン。その目に見知る姿が写る。
「…フェー…ライル…?」
誰か分かったとしも、状況は未だ全く分からない。セイレンはただ立っているだけだが、兵達は全員倒される。
「え、なに…いっ…」
「チっ、痛めつけられてんじやねえよ」
フェーライルが寄ってきたかと思えば、いきなり抱きかかえられたセイレンは驚いたが、すぐに痛みに身体を強ばらせる。
逃げる気をそぐ為にと、兵から暴力をうけていたからだ。
「ど、どこに……」
どこかに連れてかれると分かり、不安に尋ねる。今は人を信用できないし、相手はあのフェーライルだ。
「…誰も、こないところだ」
「??俺、生け贄に…」
「魔王になんてやらない」
「でも…、そうしないと世界中の人が困るんじゃ…」
怖くて逃げたけど、世界の為には受け入れるしかないのかと思っていた。
「生け贄を差し出すしかできない腰抜け連中なんて、どうでもいいだろ。それに、世界よりもお前のほうが大事だ」
「……フェーライル……、俺のこと、嫌いなんじゃ…」
「そんなふうに見えたか?それだけ気持ちが強かったってことだ。だから、こうして奪いにきた。さすがに少々手間どったが」
「フェーライル…」
セイレンは身体が熱くなっていくのを感じる。
ずっと欲しかった言葉が聞けた。
諦めていた。けれど怖くて、受け入れない自分が悪いのかとも考えた。それを吹き飛ばしてくれた。
ずっと、助けて欲しかった。
温かい涙が溢れる。
学生の時の怖かった記憶は消え、フェーライルの身体にしがみついて、されるがまま連れて行かれる。
疲れきっていたセイレンはフェーライルが来てくれたことで安心しきり、ふわふわした心地でフェーライルに連れられ一週間ほどした頃、知らぬ場所に身体を下ろされた。
「ここ…は?」
岩山でかなり高い場所だろう。ただ、岩山とはいえ、どこか神聖な雰囲気が漂っていて、少しだけど植物も生えている。
そこは小さい洞窟だ。雨を避けるには十分だろう。
「これからはここに住む。ここなら誰も来ない」
「誰も…、人も、魔族も…?」
「ああ」
「そっか…」
それは生け贄になる必要がないってことだ。どうして誰も来ないのかはセイレンは分からないが、フェーライルの表情から確かなのだと感じたセイレンは深く安堵する。
ただ、一つ、気になることに気づく。
「あ…、でも、えと…、…フェーライルは、一緒、だよね?」
ここまでされていても、不安になる。もうフェーライルなしなんて考えられない。
「当然だ。この先ずっと俺達二人だけでここで暮らす」
「よかった…、フェーライル…」
「?」
「あり、がと、色々、ありがとう…」
「お前は俺の側にいて、俺のこと好きでいれば、それでいいんだ」
「うん…」
ふんわり柔らかく微笑んだセイレン。
好きだと言ってないのに断定されてることなんて気にならない。世界がもしかしたら困ってるかもしれないことに考えないようにしてても胸が少し痛むのだけど、それも気にしないことにした。
救世主なフェーライルに好かれていて、この先一緒に生きていけるのが嬉しい。
ずっと怖そうな顔だったフェーライルも少し笑みを見せる。
世界には二人だけ。
2012・2・6
いつかとって食われるのではないのかと、ストレスが溜まっていった。
「なんで、思い出すかな」
自嘲の笑みがでるセイレン。こんな時に何故か思い出した、学校に通っていた時の嫌な思い出。
自分よりもずっと身分の高い貴族のフェーライルによく睨まれていた。
ほとんど接点がないので、理由はわからない。
平民が嫌いというだけかもしれないが、話しかけられることもなかったので探りようがなかった。
フェーライルはおそろしく顔の整った男だったから睨む姿は恐怖だった。
「おい!早くしろ!」
「あ…」
嫌なものでも思い出していたのは現実逃避かもしれない。
厳つい兵士に忌々しげに言われ、セイレンは痛む体を震わせながらも、足を進める。
これからセイレンは
魔王に捧げられる。
おそらく、生気を奪われ、命をおとすだろう。
この世界の人と魔族との決まり事で、人の国を荒らさぬ代わりに、特殊な魔力を持つ者が見つかれば、魔王に捧げるというものだ。
魔族にとって、その人の魔力は力を増やす薬のようなものだからだ。
セイレンは決まり事とはいえ、命を差し出す気にはなれず、一度は逃げた。しかし、数十年ぶりの生け贄ということで世界中が探すので、すぐに捕まってしまった。
牢屋の中にいたセイレンが外に出るということは魔王の元に行くということしかない。
もう精神的に疲れきったセイレンは何も考えたくないと思った。
その時、
「がはっ」
「何者だ?!うっ」
騒がしい音に、セイレンは俯いていた顔を上げる。周囲にいた兵が次々と倒されていく。
突然のことに呆然とするしかないセイレン。その目に見知る姿が写る。
「…フェー…ライル…?」
誰か分かったとしも、状況は未だ全く分からない。セイレンはただ立っているだけだが、兵達は全員倒される。
「え、なに…いっ…」
「チっ、痛めつけられてんじやねえよ」
フェーライルが寄ってきたかと思えば、いきなり抱きかかえられたセイレンは驚いたが、すぐに痛みに身体を強ばらせる。
逃げる気をそぐ為にと、兵から暴力をうけていたからだ。
「ど、どこに……」
どこかに連れてかれると分かり、不安に尋ねる。今は人を信用できないし、相手はあのフェーライルだ。
「…誰も、こないところだ」
「??俺、生け贄に…」
「魔王になんてやらない」
「でも…、そうしないと世界中の人が困るんじゃ…」
怖くて逃げたけど、世界の為には受け入れるしかないのかと思っていた。
「生け贄を差し出すしかできない腰抜け連中なんて、どうでもいいだろ。それに、世界よりもお前のほうが大事だ」
「……フェーライル……、俺のこと、嫌いなんじゃ…」
「そんなふうに見えたか?それだけ気持ちが強かったってことだ。だから、こうして奪いにきた。さすがに少々手間どったが」
「フェーライル…」
セイレンは身体が熱くなっていくのを感じる。
ずっと欲しかった言葉が聞けた。
諦めていた。けれど怖くて、受け入れない自分が悪いのかとも考えた。それを吹き飛ばしてくれた。
ずっと、助けて欲しかった。
温かい涙が溢れる。
学生の時の怖かった記憶は消え、フェーライルの身体にしがみついて、されるがまま連れて行かれる。
疲れきっていたセイレンはフェーライルが来てくれたことで安心しきり、ふわふわした心地でフェーライルに連れられ一週間ほどした頃、知らぬ場所に身体を下ろされた。
「ここ…は?」
岩山でかなり高い場所だろう。ただ、岩山とはいえ、どこか神聖な雰囲気が漂っていて、少しだけど植物も生えている。
そこは小さい洞窟だ。雨を避けるには十分だろう。
「これからはここに住む。ここなら誰も来ない」
「誰も…、人も、魔族も…?」
「ああ」
「そっか…」
それは生け贄になる必要がないってことだ。どうして誰も来ないのかはセイレンは分からないが、フェーライルの表情から確かなのだと感じたセイレンは深く安堵する。
ただ、一つ、気になることに気づく。
「あ…、でも、えと…、…フェーライルは、一緒、だよね?」
ここまでされていても、不安になる。もうフェーライルなしなんて考えられない。
「当然だ。この先ずっと俺達二人だけでここで暮らす」
「よかった…、フェーライル…」
「?」
「あり、がと、色々、ありがとう…」
「お前は俺の側にいて、俺のこと好きでいれば、それでいいんだ」
「うん…」
ふんわり柔らかく微笑んだセイレン。
好きだと言ってないのに断定されてることなんて気にならない。世界がもしかしたら困ってるかもしれないことに考えないようにしてても胸が少し痛むのだけど、それも気にしないことにした。
救世主なフェーライルに好かれていて、この先一緒に生きていけるのが嬉しい。
ずっと怖そうな顔だったフェーライルも少し笑みを見せる。
世界には二人だけ。
2012・2・6
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