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略奪者・海編
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強い日差しの暑さや、潮の匂いが常にするのも、慣れてきた。
「これでなにを作るの?」
浜辺の木陰で干した草を道具でゴシゴシと擦ると細かい繊維になっていく。
「敷物だよ。マーサのところのが古くなってね」
隣で同じ作業をしているおばちゃんが繊維で何を作るのか教えてくれた。
「敷物かあ。これで作るんだね」
手元の繊維を見るけど、これがどうやって敷物になるのか分からない。
「ルルハちゃんは布の作り方を知らないんだね」
「やっぱり貴族の子なのよ!」
「えっと…」
おばちゃんの予想にどう答えようか迷っていると、僕の返事をもらう気がなかったのか、おばちゃん達で話が盛り上がっていく。
なので、繊維を作る作業に専念することにした。
おばちゃん達の話は内容がどんどん変わっていく。
日がだいぶ傾いてオレンジ色になってきた頃、村が騒がしくなった。
「男達が帰ってきたみたいだね。ほら、ルルハちゃんもお迎えに行こう」
おばちゃんの言葉に頷いて立ち上がる。
繊維や道具はおばちゃんの1人が片づけておくから、早く言ってあげなさいと言うので、お言葉に甘えてお迎えに行く。
村の中央に着くと村の男達がいた。今日はたしか、近くの街に売りと買いをしにいったのだったかな。
そこに近づくとおじさんに頭を撫でられた。
「おお、坊主。うちの奴に怒られたりしなかったか?」
「怒られてないよ?」
「そうか。もし嫌なことがあればすぐに言えよ?」
嫌なことなんて少しもないけどもこくりと頷いた。
「あんたはルルハちゃんに甘いねえ。誰も怒ったりしないよ。いい子なんだから」
おばちゃんがおじさんから荷物を受け取りながら呆れている。
「おまえだって甘いじゃねえか。ルル坊、早く旦那のとこに行ってやんな」
おじさんがしめす所にスフィルドがいたので、そこに行く。
「スフィルド」
「ルルハ。問題なかったか?」
「うん。今日は繊維を作ったよ」
「そうか」
スフィルドは僕の頭を優しく撫でてくれた。嬉しくて笑顔を作る。
「よお。ルルハ。今日も旦那がいてくれて助かったぞ」
「いや…。たいしたことはしていない」
ちょっと怖そうで、本当はこっそりお菓子をくれるおじさんが話しかけてきた。
「謙遜すんな。あんたがいてくれてるから、街の連中に不当に取引されることがなくなって、助かってる。お前の旦那はすごいな」
頭をぐりぐり撫でられた。ちょっと痛い。
「こっちも助かってる。ルルハのことをいつも見てくれて」
「ははっ。あんなの話相手にしてるだけだろ。まあ、褒め合ってもしょうがねえか。お互い様だな」
おじさんが手を振って家に帰っていったので僕とスフィルドも家へと帰る。
途中おばちゃん達にたくさんのおかずをもらった。
家に入って、スフィルドは荷物を置き、僕は木の床にごろんと転がる。
城にいる時は駄目ってすごく怒られてできなかったから、しあわせだよ~。
「ルルハ」
「んー?」
呼ばれて振り向くと、スフィルドに抱きしめられて身体の向きを変えられる。
「んっ。んんっ」
「…ルルハ…」
いきなり口づけをされた。まだまだ慣れなくて、翻弄されるしかない。後ろの髪を柔らかく掴まれていて、まるで逃がさないとでも言っているようだ。
「…悪い。我慢できなかった」
平気だと頭を振りたいのにそれをするのも出来ないくらい、僕はくったりした。
そんな僕の身体をぎゅと抱きしめるスフィルド。
「悪い…」
今度謝ったのは、僕を連れ去ったことに対してだろう。表情が辛そうだから。
気にしてないのにな。
大人しくここまでついてきたのに。
僕のことが好きだからこんなことをしたっていうのは、信じられないけど、そうなんだろう。
「…メシを食うか」
「ん…」
僕は国でとくに誰かの役に立つような人間じゃなかったから、国から離れたって問題ないと思う。
外の世界は大変だけど、スフィルドがいるから安心してる。
村の人達はとっても優しくて、ここにいるのはほわほわして好きだ。
そんな気持ちを知ってほしくてスフィルドに笑顔を見せる。
すると、スフィルドも優しい笑顔になるから、僕は嬉しくなる。
次の日は、スフィルドはやることがなくて、そういう日は僕もおばちゃんのところには行かないでスフィルドの側にいる。
家のすぐ目の前が浜辺で、僕はスフィルドが見える範囲で遊ぶんだ。
わっカニ!
むむっ。ハサミで威嚇してる。人間のほうが強いんだぞ!チビカニ。
あわわわわ。
…ふう。危なかった。
「………こ……、スフィ…」
カニに気を取られていたら、知らない声がスフィルドを呼ぶ声がした。
なんとなく、そろりとその声を窺う。
「俺は戻る気はない」
建物で隠れたスフィルドの背中が少しだけ見える。誰かと話してる?
その人の姿は見えない。
「…そうですか。まあ、俺はスフィルド様がそう望まれるのなら従いますよ」
「…そうか」
「ただ…。俺が見つけたってことは、他の奴も見つけられる可能性がありますよ」
「わかってる」
「そうですか…」
それから人が砂を踏む音がしたので、話していた人が去ったんだろう。
じっと見ていると気づいたスフィルドがこちらを見て優しく笑いかけてくる。
…きっともう、ここには長くいられないんだろう。
だけど、スフィルドがずっと一緒にいてくれるなら、なんの心配もないって知っている。
さくさくと歩いてスフィルドに近づき、
その手を取った。
2013/02/09
「これでなにを作るの?」
浜辺の木陰で干した草を道具でゴシゴシと擦ると細かい繊維になっていく。
「敷物だよ。マーサのところのが古くなってね」
隣で同じ作業をしているおばちゃんが繊維で何を作るのか教えてくれた。
「敷物かあ。これで作るんだね」
手元の繊維を見るけど、これがどうやって敷物になるのか分からない。
「ルルハちゃんは布の作り方を知らないんだね」
「やっぱり貴族の子なのよ!」
「えっと…」
おばちゃんの予想にどう答えようか迷っていると、僕の返事をもらう気がなかったのか、おばちゃん達で話が盛り上がっていく。
なので、繊維を作る作業に専念することにした。
おばちゃん達の話は内容がどんどん変わっていく。
日がだいぶ傾いてオレンジ色になってきた頃、村が騒がしくなった。
「男達が帰ってきたみたいだね。ほら、ルルハちゃんもお迎えに行こう」
おばちゃんの言葉に頷いて立ち上がる。
繊維や道具はおばちゃんの1人が片づけておくから、早く言ってあげなさいと言うので、お言葉に甘えてお迎えに行く。
村の中央に着くと村の男達がいた。今日はたしか、近くの街に売りと買いをしにいったのだったかな。
そこに近づくとおじさんに頭を撫でられた。
「おお、坊主。うちの奴に怒られたりしなかったか?」
「怒られてないよ?」
「そうか。もし嫌なことがあればすぐに言えよ?」
嫌なことなんて少しもないけどもこくりと頷いた。
「あんたはルルハちゃんに甘いねえ。誰も怒ったりしないよ。いい子なんだから」
おばちゃんがおじさんから荷物を受け取りながら呆れている。
「おまえだって甘いじゃねえか。ルル坊、早く旦那のとこに行ってやんな」
おじさんがしめす所にスフィルドがいたので、そこに行く。
「スフィルド」
「ルルハ。問題なかったか?」
「うん。今日は繊維を作ったよ」
「そうか」
スフィルドは僕の頭を優しく撫でてくれた。嬉しくて笑顔を作る。
「よお。ルルハ。今日も旦那がいてくれて助かったぞ」
「いや…。たいしたことはしていない」
ちょっと怖そうで、本当はこっそりお菓子をくれるおじさんが話しかけてきた。
「謙遜すんな。あんたがいてくれてるから、街の連中に不当に取引されることがなくなって、助かってる。お前の旦那はすごいな」
頭をぐりぐり撫でられた。ちょっと痛い。
「こっちも助かってる。ルルハのことをいつも見てくれて」
「ははっ。あんなの話相手にしてるだけだろ。まあ、褒め合ってもしょうがねえか。お互い様だな」
おじさんが手を振って家に帰っていったので僕とスフィルドも家へと帰る。
途中おばちゃん達にたくさんのおかずをもらった。
家に入って、スフィルドは荷物を置き、僕は木の床にごろんと転がる。
城にいる時は駄目ってすごく怒られてできなかったから、しあわせだよ~。
「ルルハ」
「んー?」
呼ばれて振り向くと、スフィルドに抱きしめられて身体の向きを変えられる。
「んっ。んんっ」
「…ルルハ…」
いきなり口づけをされた。まだまだ慣れなくて、翻弄されるしかない。後ろの髪を柔らかく掴まれていて、まるで逃がさないとでも言っているようだ。
「…悪い。我慢できなかった」
平気だと頭を振りたいのにそれをするのも出来ないくらい、僕はくったりした。
そんな僕の身体をぎゅと抱きしめるスフィルド。
「悪い…」
今度謝ったのは、僕を連れ去ったことに対してだろう。表情が辛そうだから。
気にしてないのにな。
大人しくここまでついてきたのに。
僕のことが好きだからこんなことをしたっていうのは、信じられないけど、そうなんだろう。
「…メシを食うか」
「ん…」
僕は国でとくに誰かの役に立つような人間じゃなかったから、国から離れたって問題ないと思う。
外の世界は大変だけど、スフィルドがいるから安心してる。
村の人達はとっても優しくて、ここにいるのはほわほわして好きだ。
そんな気持ちを知ってほしくてスフィルドに笑顔を見せる。
すると、スフィルドも優しい笑顔になるから、僕は嬉しくなる。
次の日は、スフィルドはやることがなくて、そういう日は僕もおばちゃんのところには行かないでスフィルドの側にいる。
家のすぐ目の前が浜辺で、僕はスフィルドが見える範囲で遊ぶんだ。
わっカニ!
むむっ。ハサミで威嚇してる。人間のほうが強いんだぞ!チビカニ。
あわわわわ。
…ふう。危なかった。
「………こ……、スフィ…」
カニに気を取られていたら、知らない声がスフィルドを呼ぶ声がした。
なんとなく、そろりとその声を窺う。
「俺は戻る気はない」
建物で隠れたスフィルドの背中が少しだけ見える。誰かと話してる?
その人の姿は見えない。
「…そうですか。まあ、俺はスフィルド様がそう望まれるのなら従いますよ」
「…そうか」
「ただ…。俺が見つけたってことは、他の奴も見つけられる可能性がありますよ」
「わかってる」
「そうですか…」
それから人が砂を踏む音がしたので、話していた人が去ったんだろう。
じっと見ていると気づいたスフィルドがこちらを見て優しく笑いかけてくる。
…きっともう、ここには長くいられないんだろう。
だけど、スフィルドがずっと一緒にいてくれるなら、なんの心配もないって知っている。
さくさくと歩いてスフィルドに近づき、
その手を取った。
2013/02/09
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