ツクチホSS

はるば草花

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崇拝のハードルは高い(ファンタジー)

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緑の葉がとてもきれいに輝いている大きな木の上にふわりと降り立つ。


「ちょうどよかった」


地面を歩く人を見つけて、僕の顔は綻ぶ。

その人は男性で、とても綺麗で格好いい人だ。
その人の後を追うために僕は木から離れ、ふわふわついていく。

小さな教会の中にその人が入っていったので、僕も扉をすりぬけ中へと入った。


男の人は1年前にこの小さな村にやってきて、木々に埋もれかけていた教会を綺麗にしてくれて、毎日教会にやってきてはお手入れとお祈りをしていく。

祈る姿はとても美しく、神を信じて敬っているのがよく分かる。

なので、僕は初めて人に姿を見せようと思う。あう、どきどきする。

ええと、兄様は演出も大事な勤めだって言ってたよね。

こう上のほうに上がって、


「フェリーアス…」


まずは語りかけるように優しく名を呼ぶ。
フェリーアスは目を開けて周囲を見たけど、すぐに目を閉じた。

気のせいって思ったのかな。

よし、もう一度。


「フェリーアス…」


……名を呼ぶ以外にどう声をかければいいんだろ?

むむむ。

あ。すでにフェリーアスはこっち見てた。上を向いて呆然としている。


「こんにちは」


ふわりと目の前に降りてみる。

フェリーアスは視線で僕を追うけれど、表情は固まったままだ。

安心させるように微笑む。

するとフェリーアスの身体が震え出す。

あれ?ものすごい怖い顔になってる。


「魔よ!ささやかな村になんの用です。退散しなさい!」

「いちゃ?!」


祭壇にあった剣を取ったフェリーアスは僕を切った。

退魔の剣なんで、僕には効かないんだけど、実体化してたから、物理的攻撃として当たった。

ほとんどダメージはないけど、ちょっと痛い。

頭をさすりながら涙目でフェリーアスを見ると、混乱しているようだった。


「私の力が衰えたとか?いや、この剣の力があれば問題ないはず」


どうやら退治できなかったのが信じられないらしい。たしかに退魔の剣はかなり力のあるものだから、そこらの魔族なら瞬殺だろう。


「あのー、僕は魔族ではないので、それでは退治できないんですよ?」

「……魔族でない?それなら納得できますが。だとしたら、あなたは何者ですか?あきらかに人ではないでしょう?」

「はい。僕は神という存在ですよ」

「………は?」


目を見開くフェリーアス。

僕はにこにこ笑う。


「いきゃ!」


また剣で頭を叩かれた。さっきよりは弱かったけど。


「…なにふざけたこと言ってるんですか。馬鹿ですか?神への冒涜ですよ?」


目が怖いです。

退治されてしまいそうな気がしてきた。

はっ、いけない。気持ちがそう思うと本当にそうなる可能性がある。

僕は頭をぷるぷる振って主張する。


「本当ですよ!……ただ、まだ、…見習いですけど…」

見習いでも神だもの!

頑張れば正式な神にちゃんとなれるんだもの。


「見習い?……はっ」


ああう。蔑むような目で見てくる。


「ど、こ、が、ですか。神々しさの欠片も感じないんですが。見習いだからとか言うなら、見習いとれてちゃんと神々しさを身につけてから現れてくれませんか?」

「ほ、ほんとうだし」


本気で泣きそうです。フェリーアスって毒舌だったの?


「だいたい、見習いってことは神はたくさんいるってことになりますよね。神は2人しかいないはずでは?」

「それはきっとパパさんとママさんのことだよ!」

「は?」


ひゃあ!顔の怖さが3割増しした。


「僕たち他の神を作り出す存在のことだよ。そう呼びなさいって言われたの」


人の親子とはだいぶ違うんだけど、何故か僕だけそう呼びなさいって言われてる。


「ふーん」


怖さは減ったけど目が神を見る目じゃないよ。きちがいをまともに相手するのも馬鹿らしいかって目だよ!

気のせいだよね!


「……一応、信じるとして、見習いでも少しは神らしいことはできないんですか?」

「う?神らしい…」


どんなのが神らしいのかな?人ができないこと?…魔族でもできそうだけど…。

まあ、僕のできることは限られてるし。


「で、では…、」


教会の中にまで入り込んでいる木の枝に話しかける。
すると、僕に答えてその枝を僕のもとに近づけてきた。
鳥や蝶も上にある小窓から入ってきて、僕の周りを飛び回る。


「………どうかな?」


魔族や人にはできないと思うんだけど。


「………?」


フェリーアスは俯いていて表情はよく分からない。少し悲しそう?

近づいて様子を見てみる。


「…………なら、」

「?うぴゃ!」


突然、首を掴まれた。


「………く…」


ちょっと苦しい。


「なら、何故、あの時!助けてくれなかったんです!」


フェリーアスは僕を憎むかのように睨む。苦しそうで悲しそう。


「…あの時?」

「…ライハルド国の王が亡くなった日です」


ここから3つくらい隣にある国のことだろう。亡くなった王と言うのは、現王である弟に殺された王のことかな。

世界が大きく変わった日として、兄様が言っていた。
フェリーアスはその人に関係していたのか。その時、神を恨んだのだろうか。


「…神は基本的に人に干渉しないようにしているんだ」

「…なんの為の神ですか」

「自然の調和をたもってる」


調和が崩れればこの世界そのものが存在できなくなる。


「自然…ですか…。では、それなのに、何故、今私の前に姿を現すんです」


納得できる理由でなければ許さないと目が言っている。


「自然は別に植物や動物だけのものじゃないよ」

「人も入ると?では、調和の為に私が重要だと言うんですか」

そうじゃないと頭を振る。


「では、どういう?」

「神も、自然の一部なんだ」

ちなみに魔族もそうなんだよね。


「?それが?」

「僕も自然の一部だから、精神的調和を保とうとしても構わないんだ」


ますます分からないという顔になった。その姿がちょっとおかしく感じる。


「僕が好きだと思った人に姿を見せるのは自由なんだよ」


そう言ったらフェリーアスは驚いたような顔をした後、周囲をきょろきょろと見て、少し考えこんだ後、キレイに破顔した。

ほおおう。美形の微笑みはすごい。


「…そうでしたか。なにも知らず申し訳ありません」

「ううん。神のことを人が知らないのは当然だもの」


納得してくれたようだ。…どうなるかと思ったよ。


「それじゃあ、これから僕と仲良くしてくれる?」

「ええ、もちろんです」


柔らかく微笑んでくれた。姿見せてよかった。



その時の僕は誤解を与えたと気づかなかった。

フェリーアスは僕の好意が自分1人にたいしての、特別なものだと思ったらしく、慣れてきた僕が村人にも姿を見せたら、問いただしてきてやっと僕の好意がどういうものか分かったらしい。

そして今更この気持ちは変えられませんと言って、フェリーアスが僕に求婚してくるのは、何ヶ月も後の話。





(顔はけっこう整ってるのに何故か地味貧相な雰囲気で神に見えず。名前はセントリアル)
(フェリーアスは王国騎士だった過去ありで魔族退治も何度としていて、退魔の剣に認められている)
20130508
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