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初恋(不良×平凡)
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帰る為に校庭をただ何も考えず歩いていれば、ふと何かを感じて視線を横にする。
上原孝太を見つけた。
数ヶ月前に無理矢理付き合っていた男だ。
遠くにいる孝太は俺に気づかず校門を出ていった。
俺は、いわゆる不良で、そこそこ有名なくらいだ。
中学から喧嘩ばかりして、不良チームなんてもってたりする。
そんな俺が、この高校で男の孝太に惚れた。
少し悩んだが、なんとかものにしようとして、呼び出して告白した。
返事は、はいかイエスしか受け付けないなんて言って、無理矢理恋人にした。
無理矢理といっても、俺は孝太に本気で惚れてたから、好きになってほしくて、俺なりに大事にした。
だが……。
不良の俺は怖いらしい。
俺なりに怖がられないようにしたが、どうしても無理だと泣かれて、俺は孝太を手放した。
今まで女とは一応付き合ったことはあったが、ただの性欲処理でしかなく、面倒だとしか感じなかった。
そんな俺が初めて人を好きになった。
確か、初恋は実らないとか聞いたことあるが、その通りだった。
そもそも、俺みたいな不良がまともな恋なんてできないのかもしれない。
他の奴は初恋は駄目でも次の恋で上手くいくんだろうが、俺は今でも孝太にしか興味がもてないから、きっと一生、恋が上手くいくことはない。
孝太をこれ以上不安にさせない為に、俺はなるべく孝太の目に入らないようにしていた。
なのに、
突然目の前に孝太。
どういうことだと若干混乱していれば、孝太が口を開く。
「あの…、ごめん、なさい」
「?なにがだ?」
悲しそうな孝太。なにがそうさせている?
「俺…、キヤマさんは俺をからかって遊びで告白してきたと思ってたんです」
「………そうか」
俺は、俺なりに愛情を伝えていたつもりだったが、伝わってなかったようだ。まあ、無理矢理から始めてたんだから、そう思われてもしかたないか。
「…なら、なんで?」
疑問がつい声になってしまった。
今まで本気だと思わなかったのに、何故いまさら分かったのか。
「キヤマさんのチームの方々に…」
それを聞いて、俺は後ろを振り返る。
チームの副総長をしている幼なじみに、どういうことだと睨んだ。
「…だってさー。リュウってば、コウタちゃんと別れた後、ちょっと荒れたけど普通に戻ったでしょ?…だけど時々、遠くにいるコウタちゃんを見つめたりしてるんだもの。落ち込んだ姿より痛々しかったっつーの。…だから、せめてさー。リュウが本気だったってことだけでも分かってほしかったんだよー」
「…余計なことすんな」
俺のことを心配してくれてのことだってのは、よく分かる。
だが、孝太をこれ以上怖がらせたくない。つか、
「てことは、お前らコウタに何度も近づいたんだな…」
怖がりの孝太は不良が怖かっただろう。
「わりい。コウタ。今後は近づかせないようにする」
「ううん。大丈夫だよ?」
孝太は優しいから、気をつかわせないように言ってくれる。
「それで、あの…」
「ん?」
「俺はあの時、本気だって知らなくて…。だから…」
「ああ…」
だから余計に怖かったってことだな。
「分かってくれたならそれでいい。わざわざ、ありがとな」
俺の気持ちも、少しは報われた。
だけど辛い。こうして側にいても手に入らない。
だからすぐに離れようと、俺は孝太の横を通り過ぎた。
だけど。
「あ…、…あの!」
はっきりと俺を呼び止める声に、足を止めてその人物を見る。
「…コウタ?」
「あ、あの、今更っ、こんなこと言うのは、変だって分かってるんです。だけど…」
孝太はなにが言いたい?
「もう一度、あの、お試しでお付き合いしません、か?」
………なにを言った?
試しに付き合う?
ああ、孝太は責任を感じたんだな。
「無理すんな。…もう別にいい」
「ち、違います!」
「…どっちにしても、俺はあの時、拒絶された。試しにってことは、また無理かもしれないんだろ?俺にどうしたいわけ?」
言い方が非常に悪くなってるのは悪いと思ってるが、もう色々と分かったのなら、余計に今更お試しなんてしてどうなる?
それは、無理だって言ってるようなものじゃないか?
孝太は俯いて顔を青ざめさせた。
こんな顔、もう二度と、させないと思ったんだがな。
せめてと、俺は再び足を動かし去ろうと思ったが、動く前に孝太が顔を上げた。
「今更だって分かってます!都合がいいこと言ってるのも分かってます!」
真剣な顔の孝太だった。初めてかもしない顔だ。
「だけど…、それでも……、あなたが、好きなんです!」
孝太?!
「自分でもなんで好きなのか分からないんです!でも、遊ばれてるだけだってことにすごく悲しくて、だったら、側にいたくなんてないって思って、だから、あんなことを言って…。
今更だって分かってるんです。だけど、もう一度、試してみたいんです。もう一度…。ちゃんとはっきり好きになるように責任とってください!」
それほぼ告白だよな?
それもけっこう熱烈じゃね?
ははっ。
「ああ、いいぜ。必ず惚れさせてみせる」
俺は不敵な笑みをかっこよく作れただろうか。
涙浮かべて満面の笑みとかじゃないよな?
孝太のほうは泣きそうなので、とりあえず、抱きしめた。
おまけ
「いやー、コウタちゃんてばホント怖がりでさー。説得するのに数ヶ月かかっちゃったよー」
「…ごめんなさい」
「謝ることなんてねえよ。怖がらせるこいつらがわりい」
「…うん。ホント、コウタちゃん以外には俺様だよね。…なんにしても!俺達のおかげっしょー。褒めるくらいしてよー」
「ああ?お前ら馬鹿か。褒められたいってガキか」
「うわー。そんな奴だとは知ってるし元気になったならいいけどもー」
「はんっ!せめて奢れとか言えねーのか?」
「…うえ?」
「今日は溜まり場貸し切れ。俺が全部奢る」
そう言い切ったら歓声が上がる。うるせえ。
孝太はずっとにこにこして俺の側にいる。
きっと、やっぱりこの先孝太以外は考えられない。
あとがき
攻めの名前は季山流
20130514
上原孝太を見つけた。
数ヶ月前に無理矢理付き合っていた男だ。
遠くにいる孝太は俺に気づかず校門を出ていった。
俺は、いわゆる不良で、そこそこ有名なくらいだ。
中学から喧嘩ばかりして、不良チームなんてもってたりする。
そんな俺が、この高校で男の孝太に惚れた。
少し悩んだが、なんとかものにしようとして、呼び出して告白した。
返事は、はいかイエスしか受け付けないなんて言って、無理矢理恋人にした。
無理矢理といっても、俺は孝太に本気で惚れてたから、好きになってほしくて、俺なりに大事にした。
だが……。
不良の俺は怖いらしい。
俺なりに怖がられないようにしたが、どうしても無理だと泣かれて、俺は孝太を手放した。
今まで女とは一応付き合ったことはあったが、ただの性欲処理でしかなく、面倒だとしか感じなかった。
そんな俺が初めて人を好きになった。
確か、初恋は実らないとか聞いたことあるが、その通りだった。
そもそも、俺みたいな不良がまともな恋なんてできないのかもしれない。
他の奴は初恋は駄目でも次の恋で上手くいくんだろうが、俺は今でも孝太にしか興味がもてないから、きっと一生、恋が上手くいくことはない。
孝太をこれ以上不安にさせない為に、俺はなるべく孝太の目に入らないようにしていた。
なのに、
突然目の前に孝太。
どういうことだと若干混乱していれば、孝太が口を開く。
「あの…、ごめん、なさい」
「?なにがだ?」
悲しそうな孝太。なにがそうさせている?
「俺…、キヤマさんは俺をからかって遊びで告白してきたと思ってたんです」
「………そうか」
俺は、俺なりに愛情を伝えていたつもりだったが、伝わってなかったようだ。まあ、無理矢理から始めてたんだから、そう思われてもしかたないか。
「…なら、なんで?」
疑問がつい声になってしまった。
今まで本気だと思わなかったのに、何故いまさら分かったのか。
「キヤマさんのチームの方々に…」
それを聞いて、俺は後ろを振り返る。
チームの副総長をしている幼なじみに、どういうことだと睨んだ。
「…だってさー。リュウってば、コウタちゃんと別れた後、ちょっと荒れたけど普通に戻ったでしょ?…だけど時々、遠くにいるコウタちゃんを見つめたりしてるんだもの。落ち込んだ姿より痛々しかったっつーの。…だから、せめてさー。リュウが本気だったってことだけでも分かってほしかったんだよー」
「…余計なことすんな」
俺のことを心配してくれてのことだってのは、よく分かる。
だが、孝太をこれ以上怖がらせたくない。つか、
「てことは、お前らコウタに何度も近づいたんだな…」
怖がりの孝太は不良が怖かっただろう。
「わりい。コウタ。今後は近づかせないようにする」
「ううん。大丈夫だよ?」
孝太は優しいから、気をつかわせないように言ってくれる。
「それで、あの…」
「ん?」
「俺はあの時、本気だって知らなくて…。だから…」
「ああ…」
だから余計に怖かったってことだな。
「分かってくれたならそれでいい。わざわざ、ありがとな」
俺の気持ちも、少しは報われた。
だけど辛い。こうして側にいても手に入らない。
だからすぐに離れようと、俺は孝太の横を通り過ぎた。
だけど。
「あ…、…あの!」
はっきりと俺を呼び止める声に、足を止めてその人物を見る。
「…コウタ?」
「あ、あの、今更っ、こんなこと言うのは、変だって分かってるんです。だけど…」
孝太はなにが言いたい?
「もう一度、あの、お試しでお付き合いしません、か?」
………なにを言った?
試しに付き合う?
ああ、孝太は責任を感じたんだな。
「無理すんな。…もう別にいい」
「ち、違います!」
「…どっちにしても、俺はあの時、拒絶された。試しにってことは、また無理かもしれないんだろ?俺にどうしたいわけ?」
言い方が非常に悪くなってるのは悪いと思ってるが、もう色々と分かったのなら、余計に今更お試しなんてしてどうなる?
それは、無理だって言ってるようなものじゃないか?
孝太は俯いて顔を青ざめさせた。
こんな顔、もう二度と、させないと思ったんだがな。
せめてと、俺は再び足を動かし去ろうと思ったが、動く前に孝太が顔を上げた。
「今更だって分かってます!都合がいいこと言ってるのも分かってます!」
真剣な顔の孝太だった。初めてかもしない顔だ。
「だけど…、それでも……、あなたが、好きなんです!」
孝太?!
「自分でもなんで好きなのか分からないんです!でも、遊ばれてるだけだってことにすごく悲しくて、だったら、側にいたくなんてないって思って、だから、あんなことを言って…。
今更だって分かってるんです。だけど、もう一度、試してみたいんです。もう一度…。ちゃんとはっきり好きになるように責任とってください!」
それほぼ告白だよな?
それもけっこう熱烈じゃね?
ははっ。
「ああ、いいぜ。必ず惚れさせてみせる」
俺は不敵な笑みをかっこよく作れただろうか。
涙浮かべて満面の笑みとかじゃないよな?
孝太のほうは泣きそうなので、とりあえず、抱きしめた。
おまけ
「いやー、コウタちゃんてばホント怖がりでさー。説得するのに数ヶ月かかっちゃったよー」
「…ごめんなさい」
「謝ることなんてねえよ。怖がらせるこいつらがわりい」
「…うん。ホント、コウタちゃん以外には俺様だよね。…なんにしても!俺達のおかげっしょー。褒めるくらいしてよー」
「ああ?お前ら馬鹿か。褒められたいってガキか」
「うわー。そんな奴だとは知ってるし元気になったならいいけどもー」
「はんっ!せめて奢れとか言えねーのか?」
「…うえ?」
「今日は溜まり場貸し切れ。俺が全部奢る」
そう言い切ったら歓声が上がる。うるせえ。
孝太はずっとにこにこして俺の側にいる。
きっと、やっぱりこの先孝太以外は考えられない。
あとがき
攻めの名前は季山流
20130514
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