ヴォルノースの森の なんてことない毎日

藻ノかたり

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魔女と奇妙な男 (3) 執事レアロン

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「師匠、オリビアおばさんは、フレディおじさんと二人っきりで食べたいんですよ。まだまだ、熱々の夫婦なんですから」

ネリスが、小娘ながらに助け舟を出します。

「そぉ……」

少し残念そうにしながら、コリスはオリビアを見送りました。

「……っていうかさ。そもそも何でお前が、マダムや僕と一緒に食事を取るんだよ。居候の立場をわきまえてるか?」

ネリスの前に座った、そうですね、ネリスより少し年上に見える若い男が言いました。

「へーんだ。私だって、あんたと一緒にご飯を食べたくなんてないわよぉ。でも、コリス師匠がどうしてもって言うんで、一緒に食べてあげてるの!」

まるで子供のように、ネリスがアカンベェをします。

「何だとぉ!」

その瞬間です。ニンゲンのように見えたその男の周りに、青白い炎が現れたかと思うと、彼はその姿を大きく変えました。

執事のような出で立ちから、耳は長くなり、目の色は茶色から金色に変わりました。そして緑の黒髪から銀髪へとこれも変わります。おまけに背中には、そこそこ大きい翼すら生えています。一言でいえば、皆さんが想像する悪魔のような格好に変化しました。

「レアロン、やめなさい! 私が決めた事に、反対するの?」

コリスが、ピシャリと言い放ちます。

実は、レアロンと呼ばれたこの青年。コリスの使い魔なのでした。激高すると、元の姿に戻ってしまうのですね。

使い魔とは、主人に尽くすよう契約をした悪魔の一種です。昔はヴォルノース中に存在しましたが、今では殆ど見かけません。悪魔の類は、ある時点で皆、ヴォルノースの北東にある「影の森」に移住してしまったからでした。

レアロンはコリスの使い魔で、彼女の秘書兼執事という役割を仰せつかっています。先ほど、門前より遠く離れた執務室からでさえ、ネリスの行動が把握でき、なおかつ声をかけられたのも、悪魔の力を使ったからなんですね。

「い、いえ、マダム・コリス。そういうわけでは……」

レアロンが、慌てたように釈明します。そして、元のお堅い執事の姿に戻りました。

「やーい、怒られたぁ」

ネリスが、アゴを突き出します。

「なにぃ!」

「ほらほら、二人ともやめなさい。オリビアの料理が不味くなっちゃうわ」

ここ一カ月の間に何度も起こっているいさかいながら、コリスはヤレヤレという表情で両者を諫めます。

「だけど師匠、なんで私と大して年の違わないレアロンが、こんなに威張ってるんですか。ちょっと納得できないわぁ」

この一ヶ月間、こっぴどくやられっぱなしのネリスが抗議をしました。

「あのね、ネリス。確かにレアロンはあなたと同年代に見えるけど、もう二百年近くは生きているのよ。そうよね、レアロン」

コリスが、執事の方を振り向きます。

「そうですとも。正確には二百とんで三年前にこの世に生を受けました」

衝撃の事実に、一瞬顔がこわばるネリスでしたが、ここで怯んでは女がすたります。

「へ、へぇ。つまり、もう相当な年寄りりなんだ。レアロンお爺ちゃん」

ネリス、精一杯の抵抗です。

「お、お爺ちゃん? お前な、知らないのか、悪魔の二百歳は、人間でいえば……」

と、レアロンが言いかけた所で、

「いい加減にしてちょうだい! やめないと二人ともお仕置きです!」

コリスが、ついに爆発しました。
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