ヴォルノースの森の なんてことない毎日

藻ノかたり

文字の大きさ
131 / 218

魔女と奇妙な男 (8) クレオン・ドスタール

しおりを挟む
「あぁ、やっぱりクレオン。でも久しぶりじゃないわよね。二週間くらい前に、魔女会議であったでしょ?」

コリスが、当然のように返します。

「いや、愛しのコリスちゃんに会えない二週間は、僕にとって幾千年にも感じられたって事さ」

クレオンと呼ばれた男の言に、コリスがため息をつきました。どうやら、これがいつもの挨拶のようですね。

事情を全く飲み込めないネリスが、師匠の袖をツンツンと引っ張ります。

「ちょっ、師匠。誰ですかこの人。知り合いなんですか?」

置いてけぼりを食らったような顔で、ネリスがコリスに不満を漏らします。

「あぁ、そうね。ネリスとは初めてだったわよね。こちらは、クレオン・ドスタール。一応、優秀な”魔女”よ」

コリスが、弟子を振り返り答えました。

あれ、変ですね。二人の前にいるのは、まごう事なき「男」です。でも魔女というのは……。

いえ、これは不思議でも何でもない話なんです。確かに薬に関する魔法を使える人の大半は女性です。だけど男性が皆無というわけではありません。ただ、昔は自分が薬の魔法を使えると公言する男性って、非常に少なかったんです。

女ばかりの魔女社会に入っても、異端視されるだけでしたから、薬を扱える男性の存在は透明に扱われて来たのでした。

よって、たとえ自分の能力を公言していても、その人は「魔男」とは呼ばれなかったんですね。「魔女は女であるべきで、女が魔女を支配するべきだ」という古い考え方が、ずっとまかり通って来たというのが、当を得た説明と言えるでしょう。

ただ、ここ二~三十年の間に、その考えも世のジェンダーレスの波に洗われて、少しずつ変わっては来ているんです。

「へぇ、男の魔女って、初めて見た」

コリスの知り合いと分かり、少しは安心したのでしょう。ネリスが、いつもの好奇心を発揮し始めます。

「おい、おい、人を珍獣を見るような目で眺めるんじゃないよ。恥ずかしいじゃないか」

クレオンが、おどけます。

「あ、すいま……」

謝りかけて、ネリスは肝心な事を思い出しました。

「師匠、この人ストーカーです!」

ネリスは精一杯、人差し指をツンと伸ばして男を射抜きます。

「おいおい、失礼な事を言うなよ。新米魔女くん」

クレオンが、下唇をちょっと出しました。

「そうよ。この人は軽薄で、いい加減で、甲斐性なしの如何にもチャラ男だけど、ストーカーなんてする人じゃありません。

それは、私が保証します」

「チャラ男って保証されても、嬉しくないなぁ」

コリスの言葉に、クレオンが頭をかきます。

ネリスは、なおも信用できないという顔をしましたが、

「まぁ、立ち話も何だから、屋敷の中へ入らない?」

と、クレオンが笑いながら言いました。

「それはこの家の主人である、私が言うセリフでしょ」

コリスは、口をへの字に結びます。

「はいはい、仰せの通りで。マダム・コリス」

ウインクをして、クレオンが子供っぽく笑いました。

門扉を開け、屋敷の中に入る三人。

「じゃあ、僕は先に行ってるわ」

クレオンは右手を振り、ズカズカと玄関方へと向かいます。コリスとネリスは、自転車をしまってからでないと屋敷へ入れないので、置きざりになりそうでした。

「ちょっと、待ちなさい。私が行かないと、玄関のドアは開かないわよ」

「いいさ。勝手口から入るから」

クレオンは、気にしません。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...