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魔女と奇妙な男 (21) 霧の中へ
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「ごめんなさい。ワケは後で、師匠の許可を得てから話します」
オリビアが渡したタオルで顔を拭った後、ネリスは毅然としてそう言いました。容易ならざる事態だと考えたからです。今回は気のせいではなく、実際に何人かの人が目撃しているのですからね。
トントン。
立派な木製のドアを、ネリスがノックします。
いつものように帰宅の挨拶だと思ったコリスは、入室するように促しました。しかし彼女の姿を見るやいなや「なに? なにがあったの」と、コリスの顔色がサッと変わります。
何故かオリビア夫妻がネリスと一緒について来ていますし、なにより彼女の目が真っ赤に腫れあがっています。そしてネリスの全身からは、先ほど以来留まっている恐怖が未だににじみ出ていました。傍にいたレアロンも、微動だにしません。ただ、目の色は少し変わっているように見えました。
「実は……」
ネリスはとまどいながらも間違いがないように、注意深く、でも凛として一部始終をコリスに報告します。
今夜ネリスが味わった恐怖を聞き終わったコリスは、やにわに席を立ちました。椅子が倒れてしまうかと思うほどの勢いです。そして、ネリスの方へツカツカと小走りに近づいて、彼女をギュっと抱きしめました。
「良かったわ、本当に無事で」
コリスの心配と安堵と優しさが、ネリスのまだ華奢な体に染み込んでいきます。
コリスの行動に、ネリスはちょっとビックリしました。師匠がこれほど自分を心配してくれるなんて思ってもみなかったからです。だって、ネリスはコリスに多大な迷惑をかけたあげく、この屋敷に居候しているのですからね。
「そうだ。クレオンはどうしたの、クレオンは!あなたを監視していたのなら、すぐ駆けつける事が出来たでしょうに」
コリスが憤慨する声を発すると、ネリスの周りの風景が急に回り出します。
あれ……?
ネリスはとまどいましたが、実際に回っていたのはネリスの方でした。
全てを話し終り、緊張の糸が切れたせいでしょうか。立ちくらみを起こしたネリスは、勢いよく床に倒れようとしています。このままでは、怪我をしてしまうかも知れません。
「ネリス!」
コリスがいち早くネリスの異変に気がつきますが、助けの手を差し伸べるにはもう遅すぎました。
床に強く体を打ちつけようとしていたネリス。でも、そうはなりませんでした。間一髪のところで、レアロンが彼女を抱きかかえたのです。
「あ……」
自分に何が起きたのか全く理解できないネリスは、間近にあるレアロンの顔を見ながらそう言葉を発するしかありませんでした。使い魔執事は彼女をソファーへ横たわらせると、何も言わずに自分のデスクへと戻っていきます。そして”ドン!”と、鈍く激しい音がネリスの耳に届きました。
あぁ、レアロンがデスクを思いっ切り拳固で叩いたんだろうな。私、また師匠に心配をかけてしまったから怒ってるんだ……。
ネリスは、ぼんやりとした頭でそう思いました。でもそれ以上は、何も考える事が出来ません。目の前の景色がドンドンかすんでいきます。コリスとレアロンが何か話をしていますが、もう聞き取る事は出来ませんでした。
オリビアが渡したタオルで顔を拭った後、ネリスは毅然としてそう言いました。容易ならざる事態だと考えたからです。今回は気のせいではなく、実際に何人かの人が目撃しているのですからね。
トントン。
立派な木製のドアを、ネリスがノックします。
いつものように帰宅の挨拶だと思ったコリスは、入室するように促しました。しかし彼女の姿を見るやいなや「なに? なにがあったの」と、コリスの顔色がサッと変わります。
何故かオリビア夫妻がネリスと一緒について来ていますし、なにより彼女の目が真っ赤に腫れあがっています。そしてネリスの全身からは、先ほど以来留まっている恐怖が未だににじみ出ていました。傍にいたレアロンも、微動だにしません。ただ、目の色は少し変わっているように見えました。
「実は……」
ネリスはとまどいながらも間違いがないように、注意深く、でも凛として一部始終をコリスに報告します。
今夜ネリスが味わった恐怖を聞き終わったコリスは、やにわに席を立ちました。椅子が倒れてしまうかと思うほどの勢いです。そして、ネリスの方へツカツカと小走りに近づいて、彼女をギュっと抱きしめました。
「良かったわ、本当に無事で」
コリスの心配と安堵と優しさが、ネリスのまだ華奢な体に染み込んでいきます。
コリスの行動に、ネリスはちょっとビックリしました。師匠がこれほど自分を心配してくれるなんて思ってもみなかったからです。だって、ネリスはコリスに多大な迷惑をかけたあげく、この屋敷に居候しているのですからね。
「そうだ。クレオンはどうしたの、クレオンは!あなたを監視していたのなら、すぐ駆けつける事が出来たでしょうに」
コリスが憤慨する声を発すると、ネリスの周りの風景が急に回り出します。
あれ……?
ネリスはとまどいましたが、実際に回っていたのはネリスの方でした。
全てを話し終り、緊張の糸が切れたせいでしょうか。立ちくらみを起こしたネリスは、勢いよく床に倒れようとしています。このままでは、怪我をしてしまうかも知れません。
「ネリス!」
コリスがいち早くネリスの異変に気がつきますが、助けの手を差し伸べるにはもう遅すぎました。
床に強く体を打ちつけようとしていたネリス。でも、そうはなりませんでした。間一髪のところで、レアロンが彼女を抱きかかえたのです。
「あ……」
自分に何が起きたのか全く理解できないネリスは、間近にあるレアロンの顔を見ながらそう言葉を発するしかありませんでした。使い魔執事は彼女をソファーへ横たわらせると、何も言わずに自分のデスクへと戻っていきます。そして”ドン!”と、鈍く激しい音がネリスの耳に届きました。
あぁ、レアロンがデスクを思いっ切り拳固で叩いたんだろうな。私、また師匠に心配をかけてしまったから怒ってるんだ……。
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