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魔女と奇妙な男 (55) ガンベルト
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口ではしょうがないと言いながら、明らかに”とっておき”を出したくて、ウズウズしているクレオンです。
「とっておき? 別に武器を隠し持っているようには見えないけどな?」
クレオンの自信に満ちた発言を、いぶかしさに満ちた表情で聞く化け物メサイト。
一方、ネリスは、
もしかしてクレオンさんも、レアロンみたいな悪魔なの?
と考えます。彼女にはそれくらいしか思いつきませんでしたが、以前のコリスやレアロンとの会話を思い起こせば、そんなはずもありません。では、どういう奥の手があるのでしょうか?
クレオンは意を決したように、腰のベルトに手を当てました。それはまるで、ガンベルト風の一品です。銃を収めるホルスターこそないものの、カートリッジホルダーのような縦長で筒状の入れ物が、ベルトの前面に左右で六つずつ設置され、その中にはシリンダー状のアイテムが収まっておりました。
「なんだぁ。 銃を持っていないのに、弾だけ持ってるってぇのは? それともどこかに、銃を隠し持ってるってわけか? まぁ、今のオレにはそんなもの、通用しないと思うけどな」
メサイトは、からかうようにフフンと笑います。確かに進化した彼の肉体を、ヴォルノースの世界にあるような、貧弱な銃で撃ち抜けるとは思えません。
もちろん、ネリスにもワケが分かりませんでした。だって目につく物といえば、やっぱりちょっと変わったベルトしかないのですからね。
「それじゃあ、面白いものを見せてあげようか」
クレオンは、シリンダー状のアイテムを一つ手にすると、側面についている小さなボタンを押しました。すると上部の蓋が勢いよく開き、彼は中に入っている液体をクイッと飲み干します。
何、何? クレオンさんも何か飲んだ? まさか禁忌の薬って事は……。
意外過ぎるクレオンの振る舞いに、ネリスは混乱します。
「何の真似だ? まさかお前も、あの方から薬を!」
虚を突かれたメサイトが、上ずった声を出しました。薬は自分にしか与えられなかったと信じていたのですから、無理もありません。
化け物の言を受け、クレオンが深いため息をつきました。
「冗談言ってもらっちゃ困るよ、化け物くん。僕がそんな醜い姿になる薬を、飲むわけないじゃないか。たとえ、魔女を首になったってご免だね」
じゃぁ、何なのよ、あの液体は? 少なくともこの場面で飲む必要があるものなの?
奇しくもネリスとメサイトの考えが、ここまでは微妙に一致しています。
自信たっぷりのクレオンは、しっかりと化け物の目を見据えました。その目は絶対的な自信に満ち溢れています。またメサイトの方にしても、何が起こるか全く予想がつかないので、無暗に突っ込むわけにもいきません。進化したおかげでしょうか。メサイトも意外と冷静です。
そして、十秒、二十秒と、緊迫した時間が流れていきました。誰もが”何が起こるのだろうか”と固唾をのんで見ています。
ところがです。
何も起こりません。さっきと、全く変わらないのです。クレオンの体は元のままであり、メサイトのように肥大化するわけでも何でもありません。これは一体、どういう事なのでしょうか?
「ハーッ、ハッハッハッハッ! 何だよ、何ともならねぇじゃねぇか。さては、オレを油断させるためのハッタリだな? 腰に巻いているのは、せいぜい栄養ドリンクか何かだろう?」
メサイトは顔に片手を当てて、大笑いをしました。クレオンは、それを只じっと眺めています。
も~っ! クレオンさんたら何やってんのよ。元々、いい加減な人だとは思っていたけれど、こんな時に意味のない大風呂敷を広げるなんて! 少しは期待した私がバカだったわ。
ネリスの頭に、血が上ります。
あの人には、もう頼れない。こうなったら、私が何とか一人で……!
「とっておき? 別に武器を隠し持っているようには見えないけどな?」
クレオンの自信に満ちた発言を、いぶかしさに満ちた表情で聞く化け物メサイト。
一方、ネリスは、
もしかしてクレオンさんも、レアロンみたいな悪魔なの?
と考えます。彼女にはそれくらいしか思いつきませんでしたが、以前のコリスやレアロンとの会話を思い起こせば、そんなはずもありません。では、どういう奥の手があるのでしょうか?
クレオンは意を決したように、腰のベルトに手を当てました。それはまるで、ガンベルト風の一品です。銃を収めるホルスターこそないものの、カートリッジホルダーのような縦長で筒状の入れ物が、ベルトの前面に左右で六つずつ設置され、その中にはシリンダー状のアイテムが収まっておりました。
「なんだぁ。 銃を持っていないのに、弾だけ持ってるってぇのは? それともどこかに、銃を隠し持ってるってわけか? まぁ、今のオレにはそんなもの、通用しないと思うけどな」
メサイトは、からかうようにフフンと笑います。確かに進化した彼の肉体を、ヴォルノースの世界にあるような、貧弱な銃で撃ち抜けるとは思えません。
もちろん、ネリスにもワケが分かりませんでした。だって目につく物といえば、やっぱりちょっと変わったベルトしかないのですからね。
「それじゃあ、面白いものを見せてあげようか」
クレオンは、シリンダー状のアイテムを一つ手にすると、側面についている小さなボタンを押しました。すると上部の蓋が勢いよく開き、彼は中に入っている液体をクイッと飲み干します。
何、何? クレオンさんも何か飲んだ? まさか禁忌の薬って事は……。
意外過ぎるクレオンの振る舞いに、ネリスは混乱します。
「何の真似だ? まさかお前も、あの方から薬を!」
虚を突かれたメサイトが、上ずった声を出しました。薬は自分にしか与えられなかったと信じていたのですから、無理もありません。
化け物の言を受け、クレオンが深いため息をつきました。
「冗談言ってもらっちゃ困るよ、化け物くん。僕がそんな醜い姿になる薬を、飲むわけないじゃないか。たとえ、魔女を首になったってご免だね」
じゃぁ、何なのよ、あの液体は? 少なくともこの場面で飲む必要があるものなの?
奇しくもネリスとメサイトの考えが、ここまでは微妙に一致しています。
自信たっぷりのクレオンは、しっかりと化け物の目を見据えました。その目は絶対的な自信に満ち溢れています。またメサイトの方にしても、何が起こるか全く予想がつかないので、無暗に突っ込むわけにもいきません。進化したおかげでしょうか。メサイトも意外と冷静です。
そして、十秒、二十秒と、緊迫した時間が流れていきました。誰もが”何が起こるのだろうか”と固唾をのんで見ています。
ところがです。
何も起こりません。さっきと、全く変わらないのです。クレオンの体は元のままであり、メサイトのように肥大化するわけでも何でもありません。これは一体、どういう事なのでしょうか?
「ハーッ、ハッハッハッハッ! 何だよ、何ともならねぇじゃねぇか。さては、オレを油断させるためのハッタリだな? 腰に巻いているのは、せいぜい栄養ドリンクか何かだろう?」
メサイトは顔に片手を当てて、大笑いをしました。クレオンは、それを只じっと眺めています。
も~っ! クレオンさんたら何やってんのよ。元々、いい加減な人だとは思っていたけれど、こんな時に意味のない大風呂敷を広げるなんて! 少しは期待した私がバカだったわ。
ネリスの頭に、血が上ります。
あの人には、もう頼れない。こうなったら、私が何とか一人で……!
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