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魔女と奇妙な男 (57) 一進一退
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禁忌の薬は、人の体そのものを強化させるものよね。だからあいつは普通の肉体だったのが、今のような化け物になったわけよ。メサイトが驚異的な力を使えるのは、あくまでも強化された筋肉のおかげ。それは物理的なものだわ。
それに引きかえ、クレオンさんの体は全く変化がないように見える。だからメサイトのように筋肉の物理的な力で、あの動きをしているわけじゃない。
……つまり?
クレオンさんの動きは、筋肉の力というより魔法そのものの力?
ネリス、イイ線いってます。只これ以上の推理は、彼女が備えている知識だけでは難しいでしょう。実はね、クレオンが飲んだ薬は……。おっと、種明かしはもう少し後で。
さて、クレオンは化け物を沈黙させるため、神速とも呼べるスピードでメサイトに迫ります。しかしクレオンの動きに少し目が慣れて来たメサイトは、自分がへたり込んでいる傍にある物、壺やら木箱やら、果ては台車までをも手当たり次第にクレオンへ投げつけました。
一見メチャクチャな攻撃にも思えますが、化け物となったメサイトが投げているのです。それは、恐ろしいスピードと破壊力を持っておりました。凶器と化した日常道具が、施設の壁と言わず床と言わず、到るところを破壊します。
ネリスはこの時、逃げようと思えば逃げられる位置におりました。しかし、こうも激しい凶器の雨あられの中を動くのは、かえって危険というものです。そうそう、昔”動くと、かえって当たる”とか言った人がいたような、いなかったような……。
それでもネリスは逃げるチャンスを伺うために、クレオンとメサイトの攻防を見つめます。そこでクレオンの、これまた驚くべき能力を目にするのです。
メサイトの投げたあれやこれやは、相手に避ける隙を与えない程、矢継ぎ早に繰り出されます。しかしクレオンは、それを無駄なくギリギリのところで避け続けているのです。しかもやっとこさ、そうしているのではなく、明らかに余裕が伺えました。正に人間の視力では、不可能と思われる芸当です。
また仮に飛来する凶器を見極められたとしても、クレオン自身も凄まじい勢いで走っているわけですから、急な方向転換で幾度も避けるなんて、本当に人間業ではありませんでした。
「あっ!」
ネリスが、思わず叫びます。
メサイトが放った、これは椅子でしょうか、その大きな塊がネリスの方めがけて飛んできたのです。只メサイトが、彼女を意図して狙ったものではありません。偶然にも、ネリスの方へ飛んできたにすぎないものでした。しかしネリスの反射神経と脚力で、これをよけるのはまず不可能です。
ぶつかる!
そう感じたネリスは、思わず両手をクロスして前へ突き出しました、でもそれが有効な手段とは、とてもじゃないけど思えません。このまま当たれば、大怪我間違いなしです。
彼女は、もうダメだとばかりに目をつぶります。凄まじい衝撃を覚悟したネリスですが、体がフッと急に横へと急激に振れました。そして凄まじい音が、傍らで鳴り響きます。気がつくとネリスはクレオンに両肩を掴まれて、先ほどの位置から三メートルばかり離れた位置におりました。
すんでのところでクレオンが駆けつけて、彼女を凶器と化した椅子との激突から救ったのです。彼女は首をあげ、呆然とクレオンを見つめました。
クレオンは優しく彼女を見下ろして、
「大丈夫かい? もう少し待っていてくれ。必ず君の脱出路を作るから」
と言いました。今クレオンは、メサイトに背中を見せています。それがどんなに危険な事かを思えば、彼がネリスをどれだけ大切に扱っているかがわかるでしょう。
それに引きかえ、クレオンさんの体は全く変化がないように見える。だからメサイトのように筋肉の物理的な力で、あの動きをしているわけじゃない。
……つまり?
クレオンさんの動きは、筋肉の力というより魔法そのものの力?
ネリス、イイ線いってます。只これ以上の推理は、彼女が備えている知識だけでは難しいでしょう。実はね、クレオンが飲んだ薬は……。おっと、種明かしはもう少し後で。
さて、クレオンは化け物を沈黙させるため、神速とも呼べるスピードでメサイトに迫ります。しかしクレオンの動きに少し目が慣れて来たメサイトは、自分がへたり込んでいる傍にある物、壺やら木箱やら、果ては台車までをも手当たり次第にクレオンへ投げつけました。
一見メチャクチャな攻撃にも思えますが、化け物となったメサイトが投げているのです。それは、恐ろしいスピードと破壊力を持っておりました。凶器と化した日常道具が、施設の壁と言わず床と言わず、到るところを破壊します。
ネリスはこの時、逃げようと思えば逃げられる位置におりました。しかし、こうも激しい凶器の雨あられの中を動くのは、かえって危険というものです。そうそう、昔”動くと、かえって当たる”とか言った人がいたような、いなかったような……。
それでもネリスは逃げるチャンスを伺うために、クレオンとメサイトの攻防を見つめます。そこでクレオンの、これまた驚くべき能力を目にするのです。
メサイトの投げたあれやこれやは、相手に避ける隙を与えない程、矢継ぎ早に繰り出されます。しかしクレオンは、それを無駄なくギリギリのところで避け続けているのです。しかもやっとこさ、そうしているのではなく、明らかに余裕が伺えました。正に人間の視力では、不可能と思われる芸当です。
また仮に飛来する凶器を見極められたとしても、クレオン自身も凄まじい勢いで走っているわけですから、急な方向転換で幾度も避けるなんて、本当に人間業ではありませんでした。
「あっ!」
ネリスが、思わず叫びます。
メサイトが放った、これは椅子でしょうか、その大きな塊がネリスの方めがけて飛んできたのです。只メサイトが、彼女を意図して狙ったものではありません。偶然にも、ネリスの方へ飛んできたにすぎないものでした。しかしネリスの反射神経と脚力で、これをよけるのはまず不可能です。
ぶつかる!
そう感じたネリスは、思わず両手をクロスして前へ突き出しました、でもそれが有効な手段とは、とてもじゃないけど思えません。このまま当たれば、大怪我間違いなしです。
彼女は、もうダメだとばかりに目をつぶります。凄まじい衝撃を覚悟したネリスですが、体がフッと急に横へと急激に振れました。そして凄まじい音が、傍らで鳴り響きます。気がつくとネリスはクレオンに両肩を掴まれて、先ほどの位置から三メートルばかり離れた位置におりました。
すんでのところでクレオンが駆けつけて、彼女を凶器と化した椅子との激突から救ったのです。彼女は首をあげ、呆然とクレオンを見つめました。
クレオンは優しく彼女を見下ろして、
「大丈夫かい? もう少し待っていてくれ。必ず君の脱出路を作るから」
と言いました。今クレオンは、メサイトに背中を見せています。それがどんなに危険な事かを思えば、彼がネリスをどれだけ大切に扱っているかがわかるでしょう。
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