ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (36) 意外な出会い

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「よっしゃ、ゴール!」

公園から道路へ出る小さな門をくぐったドッジが、ゲンコツを突き上げて叫びます。その声に、何人かの親子連れが振り返りました。

「ちょっ、声が大きい!」

マリアが、ピシャリとドッジを制します。

「まぁ、そう言うなって。この冒険を無事に、乗り切ったんだからさ」

ほんと、小さな小さな冒険でしたが、彼ら三人はやり遂げたのです。

「結局、昨日、頭が痛くなったのは、偶然だったみたいね」

マリアが、楽観的な分析を披露します。

でも本当は、たまたま痛くなったのか、たまたま痛くならなかったのかは、依然としてわかりませんでした。

「二人とも、ありがとう。じゃあ、また明日」

ニールが、二人に声を掛けます。マリアは家のお手伝い、ドッジは母親と新しい洋服を買いに行く事になっていたので、今日も三人はここでお別れです。

二人は冒険の結果に満足したのか、晴れやかな表情で、それぞれの帰路へとつきました。

このまま、明日も明後日も、何事もなければいいな。

検証の結果に、取りあえず安堵したニールは、二度とあのような痛みに襲われない事を祈ります。

さぁて、今日はどうしようかな。一人で川の傍にある、秘密基地に行ってみようか。あそこには、読みかけの本も置いてあるし
……。

(ニールたち三人組の秘密基地に関しては「ヴォルノースの森の なんてことない毎日 第一部《お髭のニール》」参照)

ニールは今日の夕食までどうやって過ごすかを、あれやこれやと考えました。彼は人づきあいが悪い方ではないものの、一人で何かに没頭するのも大好きです。ここら辺は、パパに似たのかも知れませんね。

彼は散歩がてらに、太陽がさんさんと差し込む小道を行き、ようやく見えて来た橋を渡ります。その下の道を入った所が、秘密基地へのルートなんです。

しかし、その時……、

「やぁ、ニールじゃないか」

と、後から誰かの声がニールを引き留めました。

声の主を脳裏によぎらせながら、彼が振り向くと、そこにいたのは予想通り《骨董店エンシャント・ケイブ》のオーナー、ゼペックでした。彼は荷馬車を一人で操っており、大方、骨董品を仕入れての帰りといったところでしょうか。

「あぁ、ゼペックさん。こんにちわ」

パッと明るい表情になったニールが、挨拶をします。ゼペックとニールは、パパを通じて仲良しになっていましたが、最近は何だかんだと無沙汰をしているのでした。

「今、帰りかい? 近頃、セディーは相変わらず良く来てくれるが、お前さんにはとんと見限られたようで、心配してたんだ」

ゼペックは、白く短いあごひげをさすりながら、冗談めかして言いました(パパの名前はセドリックですが、親しい人はセディーと呼んでいます)。

「それが、ママとちょっと喧嘩をしたみたいで、パパは当分、お店には行けないと思います」

ニールが、口落ちそうに答えます。

「そりゃ、残念。じゃぁ、例のお宝も、マルロンのものになっちまうかな」

あぁ、パパが前に言っていた”掘り出し物”の話だなと、ニールは察しをつけました。

もっとも、それがパパとママが喧嘩をした原因なんですけどね。そうそう。マルロンというのは、パパと同世代のコレクター仲間で、ニールとも、ある事件で繋がりが出来たちょっとお調子者の男性です。

苦笑いをするニールに、ゼペックは、

「じゃぁ、どうだい。これから、店に来ないかい? しばらく君に骨董品の話をしていないんで、なんだかノドがムズムズしとるんじゃよ」

と、意外な申し出をしました。

ニールは思ってもみない申し出に、心が浮き立ちますが、

「えっ? でも、パパと一緒じゃないし……」

と、二の足を踏みます。
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