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ニールの目ざめ (43) 魔法の意味
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「ふふん、どうじゃな?」
自慢げに話すゼペックの問いに、ニールは、
「とっても、不思議です。炭酸が、全然きつくない」
と、答えます。
「でしょ? オーナーの作る炭酸は、その強さとか持続時間を思いのままに変えられるんだ」
リュンデムが、まるで自分の手柄のように、横から口をはさみました。
「おい、お前がそれを言うな!」
ゼペックが、出しゃばりの弟子をねめつけます。
「ほうら、お前たち! ショーは終わりだ。仕事に戻れ」
オーナーの一喝で、集まっていたスタッフたちは、慌ててそれぞれの役割に戻りました。
場が落ち着いたところで、
「飲み物を、思いのままの炭酸入りに出来るんなら、喫茶店とかやれば、すごく話題になりますよね。ショーとしても素敵だし……」
と、ニールが言うと、リュンデムが人差し指を立てて”チッチッチッ”と、横に振ります。
「ところがさ、そうは上手く行かないんだよ。ね、オーナー」
彼が、師匠の方を見ながら微笑みました。
ニールはどういう事だろうと、いぶかりました。ゼペックが成功するに至った秘密の一端を、垣間見たような気がしていたからです。
「うるさいの。師匠に魔法を披露させておいて、その言い草は何じゃ」
老オーナーが、歯をギリギリと鳴らします。
「ほら、ニール君が不思議がってますよ。早く教えて差し上げたら」
右手でニールの方を指し示しつつ、不肖の弟子が澄ました顔で言いました。
ゼペックは、しょうがないなという顔をしながらも、
「実はな、この魔法は一日に三回しか使えないんじゃよ」
と、どこかバツの悪そうな顔をして話します。
彼の意外な告白に、ニールは少し困惑しました。
「ボクは、てっきり、今の魔法で稼いだお金を元手に、リサイクルショップの商売を始めて、お店を沢山持つようになったのかと思いました」
ニールが、正直に話します。
それを聞いたリュンデムは、
「僕も、最初はそう思ったんだ。でもまぁ、ほんと、商売には役に立たない魔法のようだね」
と、両方の手の平を上にして、ヤレヤレというポーズを取りました。
その時です。
「いや、それは違う」
ゼペックの声が、取り分けて低く響きました。それはこれまでのカンシャクのような怒り方ではなく、ひどく真剣なものでした。これには、ニールばかりでなく、リュンデムも目を見張ります。
「確かにこの魔法、仕事には直結せん。だけどな、わしだって楽して幾つもの店を持ったわけじゃない。つらい事、苦しい事、沢山あったさ。でもその度に、今の魔法で作った色々な飲み物を飲んで”明日こそは!”と、決意を新たにしたもんじゃ。
それはな、今は墓の下で眠っとる婆さんと一緒になった後でもおんなじだ。いつも二人でグラスをかたむけながら、必死に頑張った結果が、今の”ラッキーエンカウンター・グループ”を作ったんじゃよ」
ゼペックは、そう告白すると、残っていたコーヒーをグイッと飲み干しました。
彼がカップをソーサーに戻す音が聞こえ、暫しの沈黙が場を支配した後、リュンデムが、
「……つまりだね、ニール君。
どんな魔法を使えるかが、重要なんじゃない。授かった魔法を、どういう風に使って人生を豊かにするか、それが重要なんじゃないかな」
と、柄にもなく神妙な面持ちで話します。
ニールは、目からウロコが落ちた思いがしました。彼の心の奥底にへばりついていた、ドロドロとした何ものかは、ゼペックとリュンデムの言葉に綺麗さっぱり洗い流されたのです。
自慢げに話すゼペックの問いに、ニールは、
「とっても、不思議です。炭酸が、全然きつくない」
と、答えます。
「でしょ? オーナーの作る炭酸は、その強さとか持続時間を思いのままに変えられるんだ」
リュンデムが、まるで自分の手柄のように、横から口をはさみました。
「おい、お前がそれを言うな!」
ゼペックが、出しゃばりの弟子をねめつけます。
「ほうら、お前たち! ショーは終わりだ。仕事に戻れ」
オーナーの一喝で、集まっていたスタッフたちは、慌ててそれぞれの役割に戻りました。
場が落ち着いたところで、
「飲み物を、思いのままの炭酸入りに出来るんなら、喫茶店とかやれば、すごく話題になりますよね。ショーとしても素敵だし……」
と、ニールが言うと、リュンデムが人差し指を立てて”チッチッチッ”と、横に振ります。
「ところがさ、そうは上手く行かないんだよ。ね、オーナー」
彼が、師匠の方を見ながら微笑みました。
ニールはどういう事だろうと、いぶかりました。ゼペックが成功するに至った秘密の一端を、垣間見たような気がしていたからです。
「うるさいの。師匠に魔法を披露させておいて、その言い草は何じゃ」
老オーナーが、歯をギリギリと鳴らします。
「ほら、ニール君が不思議がってますよ。早く教えて差し上げたら」
右手でニールの方を指し示しつつ、不肖の弟子が澄ました顔で言いました。
ゼペックは、しょうがないなという顔をしながらも、
「実はな、この魔法は一日に三回しか使えないんじゃよ」
と、どこかバツの悪そうな顔をして話します。
彼の意外な告白に、ニールは少し困惑しました。
「ボクは、てっきり、今の魔法で稼いだお金を元手に、リサイクルショップの商売を始めて、お店を沢山持つようになったのかと思いました」
ニールが、正直に話します。
それを聞いたリュンデムは、
「僕も、最初はそう思ったんだ。でもまぁ、ほんと、商売には役に立たない魔法のようだね」
と、両方の手の平を上にして、ヤレヤレというポーズを取りました。
その時です。
「いや、それは違う」
ゼペックの声が、取り分けて低く響きました。それはこれまでのカンシャクのような怒り方ではなく、ひどく真剣なものでした。これには、ニールばかりでなく、リュンデムも目を見張ります。
「確かにこの魔法、仕事には直結せん。だけどな、わしだって楽して幾つもの店を持ったわけじゃない。つらい事、苦しい事、沢山あったさ。でもその度に、今の魔法で作った色々な飲み物を飲んで”明日こそは!”と、決意を新たにしたもんじゃ。
それはな、今は墓の下で眠っとる婆さんと一緒になった後でもおんなじだ。いつも二人でグラスをかたむけながら、必死に頑張った結果が、今の”ラッキーエンカウンター・グループ”を作ったんじゃよ」
ゼペックは、そう告白すると、残っていたコーヒーをグイッと飲み干しました。
彼がカップをソーサーに戻す音が聞こえ、暫しの沈黙が場を支配した後、リュンデムが、
「……つまりだね、ニール君。
どんな魔法を使えるかが、重要なんじゃない。授かった魔法を、どういう風に使って人生を豊かにするか、それが重要なんじゃないかな」
と、柄にもなく神妙な面持ちで話します。
ニールは、目からウロコが落ちた思いがしました。彼の心の奥底にへばりついていた、ドロドロとした何ものかは、ゼペックとリュンデムの言葉に綺麗さっぱり洗い流されたのです。
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