ヴォルノースの森の なんてことない毎日 《第二部》 (オムニバス短編集)

藻ノかたり

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ニールの目ざめ (50) 助っ人 登場

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マリアは、その言葉にドキリとします。彼女は頭が良い分、どうしても理屈で物を考えようとします。それはそれで素晴らしい事なのですが、ただ”ここ一番”という状況においては、判断を遅らせる要因となっていました。

それに引きかえドッジはと言えば、普段はいい加減極まりない性格にも関わらず、ここぞという時に発揮される理屈抜きの洞察力は、一つの才能と言って良いほど適格なのです。いつもドッジをからかっているマリアさえ、そこは認めざるを得ないところでした。

「わ、わかったわ。ニールを信じる」

マリアがニールの方へ顔を向け、ぎこちないながらも笑顔を見せました。

「よし、じゃぁ、早速行動開始だ!」

ニールを差し置いて、ドッジが号令をかけます。

「ちょっと待って。あそこには今、八人の子供がいるわ。私たちだけじゃ心もとない」

持ち前の聡明さを発揮し始めたマリアが、勇むドッジを止めました。

「おい、出鼻をくじくような事、言うなよ」

ドッジの機嫌が、途端に悪くなります。

「ドッジ。ミリナとファリナを呼んで! 確か彼女たち、小さい動物や幼い子供の心を掴む力があるでしょう?」

名参謀が、より確実な作戦を提案しました。

ミリナとファリナとは、誰かって? それは、すぐにわかります。

「そうだね。人出は多い方がいい。頼むよドッジ。一刻を争うんだ」

ニールが、マリアの後押しをしました。

「ん~、しょうがねぇなぁ。今日は特別だぞ」

少し困ったような顔をしたドッジですが、それでも彼らの要請を受け入れたガキ大将は、両手を前に突き出して、手のひらを上に向けます。

「ミリナにファリナ、出て来ておくれ。可愛い笑顔を、振りまき振りまき」

と、ドッジが呪文を唱えると、その手のひらの上に小さな光の粒が二つ、ほわっと現れました。そして二つはクルクルとお互いに回りあいながら、ドンドン大きくなっていきます。

やがて光の中から、ウスバカゲロウのような美しい羽を持った小さな精霊の女の子、ミリナとファリナの二人が現れました。

そうなんです。この身長十三~四センチほどの小さな精霊を呼びだす事が出来るのが、ドジの魔法なんですね。

ただ硬派のガキ大将を気取るドッジとしては、この魔法、とても公開できるものではありません。”恰好悪い”と思ってるんですね。もちろんニールやマリアは、そんな風に考えてはいませんが、そう言った事情から、彼の魔法を知っている人は、ごく少数に限られました。

「なあに、ドッジ」
「なあに、ドッジ」

二人が揃って口を開きます。

「おい、説明は後だ。あそこの砂場にいる連中な。あいつらを砂場の端から最低十、いや十五メートル離れた場所へ引っ張り出せ。わかったな」

ドッジが、横柄な口調で命令します。

「いやよ。私、ドッジの家来じゃないもの」
「いやよ。私、ドッジの家来じゃないもの」

再び精霊たちは、声を揃えます。

そんな光景を見ていたニールが、

「ミリナ、ファリナ、お願いだ。とっても急ぐんだ」

と、彼女たちを見つめて懇願しました。

二人の精霊は、ニールの余りに真剣な表情にとてもビックリしましたが、少しだけ間を置いた後、

「わかったわ」
「わかったわ」

と、快諾します。

「おい、お前たち、何でニールの言う事なら聞くんだよ」

ドッジが抗議すると、ミリナが、

「ニールはドッジと違って、とっても良い子だもの。信用できるわ」

と、事もなげに言い放ち、ファリナもウンウンと頷きました。

「なんだとぉ!」

ドッジが、気色ばみます。

「ドッジ、うるさいわよ! 今は時間がないの。内輪もめは後にして頂戴!」

マリアがそう言うと、ニールも「ミリナにファリナ。ありがとう、よろしく頼むよ」と、二人にお礼を言いました。
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