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閑話(他者視点)
スラフの独白3
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「いいな、メルトがこの魔物を倒したことは今いる者達だけの秘密だ。墓場まで持って行ってくれ。じゃないとメルトが危ない。私はできる限り、彼を守ろうと思うが、申し訳ないが限界がある。君たちはメルトと親しかったはずだ。ぜひ、お願いしたい。それと今回の魔物の足止め、苦労をかけた。帰ったら酒を奢ろう。」
ノヴァク団長が3班に口止めをした。
メルトはダンジョンで何を経験したのだろう。メルトが使ったあの剣は噂の火竜の剣だろう。
メルトがダンジョンから持ち帰って奪われた剣。総団長が執務室に飾っているという曰くの剣。
とにもかくにも野営訓練から引き揚げた後、うちの班は3日ほど使い物にならなくなった。
「ミラン、今度の休みは一緒に出掛けないか?」
メルトが医療棟から戻った後、ミランを誘ってみた。
「えっとその、皆でかな?」
赤くなった顔で聞いてくるミランはとても可愛い。それに嫌がってるようには思えなかった。
「いや、二人で出かけたい。街を回ってランチを一緒にして、お茶して戻ってくるつもりだが、どうだろう?」
ミランの頬の赤みが増した。
「い、いいよ?行こう!」
やった!俺は心の中でガッツポーズをした。さて、リスクに聞いた、フィメルに人気の店をおさらいしておこう。
「すっごく楽しかったー!ランチの店も、お茶の店も美味しかったし。」
もう夕刻、空が茜色に染まる頃だ。
話題はメルトやロステや、最近の見習い訓練のことばかりだが、多少はお互いのことも話した。時間が立つのは早くて、宿舎に戻るのが残念に思えた。
「ああ、付き合ってくれてありがとう。すごく楽しかった。だから、また、二人でこうして出掛けてくれないか?」
そっとミランの両手を取って握る。一回り小さい、だが鍛えられた騎士の手。
「……う、うん。ぜひ。その、僕もスラフと出掛けるのは楽しみ、かな?」
やった!
「ありがとう!ミラン!」
思わず抱きしめてしまった。
「ふえ!??ス、スラフ!??」
真っ赤になったミランに慌てて開放する。
「あ、ごめん。」
「い、いや。その、びっくりしただけだから…」
お互いに赤い顔で視線を逸らした。
それでも、そっと手を握って騎士団の宿舎近くまで帰った。
それから、告白らしき告白はしてない。ちゃんとしないといけないな、と思う。
二人で出かけることは増えて、戦争にも駆り出された。
その時、死を予感した。
だから、きちんとミランと所帯を持ちたいと思った。給与を貯め、新居のあたりを付け、婚約の証しのアミュレットを買った。守護石の色は俺の目の色と同じ。
俺がいなくても、俺の代わりに守ってくれるようにと。
「メルトのペンダントを見てて、俺がそばにいない時でもミランを守れるようにと思ったんだ。もらってくれないか?そして俺と結婚してほしい。すぐにはできないだろうけど、他のやつに取られたくないから婚約だけでもしてほしい。」
ミランは泣きそうで、言葉を詰まらせて、でも頷いてくれた。その時キスをした。
ふわりと彼のいい匂いがして、心が浮き立った。
ラーンは割と、性に関しては緩い。しかし、メイルは勝手で、自分のパートナーには貞淑を求める。
俺はそんなことを強いるつもりはなかったが、ミランを大切にしたくて、初めては結婚してからと決めていた。
もちろん恋人らしくキスくらいはしているが、そこまでだった。
俺はメイルの本能というか習性を舐めていた。
やらかしたのだ。リンドが、ミランの逆鱗に触れた。
ミランは言葉を濁したが、団長が主催した飲み会で寄ったメルトを連れ出して、手籠めにしたらしい。
いや、暴力は使ってないとは思うが、酔って判断力のないところをというのはそれに等しい。
烈火のごとく怒りに燃えたミランはリンドを殴り飛ばし、啖呵を切ったらしい。
現場を見たものは誰もいないが、呼び出したときのミランにはだれも近づけなかったと聞いた。
そして俺に詰め寄ってきたミランの背にドラゴンが見えた。火を噴くドラゴンだ。
「経験してないフィメルの情報、メイルの間で噂になってるって聞いた。最低。僕初めてだって噂になってて、例えば誰かが経験しとくべきだって言ってきて一回でやり捨てられたらどんな気持ち?スラフはそれって許せるの?許せるなら僕別れるよ。そういう情報のせいで、よく恋愛とかわかってない子を誘ってやり捨てて。本気で恋をしたその子があとで後悔するような事させたくないんだけど。」
その言葉を聞いて状況がわかった。
つまり、経験のないフィメルを言葉巧みに丸め込み、やってそれきりという、愚かなメイルの欲望の対象にされているということだ。
俺が聞きまわったら、ミランも対象だった。
ああ、それは怒る。
大切なミランをただの性のはけ口にされたとしたら、大切な宝物を穢されたら。
そして俺も相当に怖い顔で噂を消しにかかっていたと、リスクに聞いた。リスクにも頼んで言いまわってもらった。恋人や思い人がいると。
それからしばらくして俺達は結婚した。
ミランは世界一綺麗だった。
結婚式の夜、お互い初めてで、戸惑うこともあったが、無事、一つになれた。
可愛すぎてどうしようかと思った。
「子供はもう少し待って。せめて、メルトが結婚したら。」
発情期は薬を飲んでやり過ごした。
だが、メルトに恋人はできず、ある日突然いなくなった。
メルトの残した手紙に本当の事情は書いてないと思われた。
ミランの焦燥は見ていられないほどだった。しっかりと励まして、何とか、前に進めるようになった矢先、メルトが帰還した。
美形の伴侶を連れて。
それからは大騒ぎだったが、それはまたの機会に。
ただ、彼らのおかげで、ミランからうれしい言葉をもらった。
「ねえ、スラフ、僕子供が欲しくなった。」
次の発情期には二人で籠ることになった。感謝する。
ノヴァク団長が3班に口止めをした。
メルトはダンジョンで何を経験したのだろう。メルトが使ったあの剣は噂の火竜の剣だろう。
メルトがダンジョンから持ち帰って奪われた剣。総団長が執務室に飾っているという曰くの剣。
とにもかくにも野営訓練から引き揚げた後、うちの班は3日ほど使い物にならなくなった。
「ミラン、今度の休みは一緒に出掛けないか?」
メルトが医療棟から戻った後、ミランを誘ってみた。
「えっとその、皆でかな?」
赤くなった顔で聞いてくるミランはとても可愛い。それに嫌がってるようには思えなかった。
「いや、二人で出かけたい。街を回ってランチを一緒にして、お茶して戻ってくるつもりだが、どうだろう?」
ミランの頬の赤みが増した。
「い、いいよ?行こう!」
やった!俺は心の中でガッツポーズをした。さて、リスクに聞いた、フィメルに人気の店をおさらいしておこう。
「すっごく楽しかったー!ランチの店も、お茶の店も美味しかったし。」
もう夕刻、空が茜色に染まる頃だ。
話題はメルトやロステや、最近の見習い訓練のことばかりだが、多少はお互いのことも話した。時間が立つのは早くて、宿舎に戻るのが残念に思えた。
「ああ、付き合ってくれてありがとう。すごく楽しかった。だから、また、二人でこうして出掛けてくれないか?」
そっとミランの両手を取って握る。一回り小さい、だが鍛えられた騎士の手。
「……う、うん。ぜひ。その、僕もスラフと出掛けるのは楽しみ、かな?」
やった!
「ありがとう!ミラン!」
思わず抱きしめてしまった。
「ふえ!??ス、スラフ!??」
真っ赤になったミランに慌てて開放する。
「あ、ごめん。」
「い、いや。その、びっくりしただけだから…」
お互いに赤い顔で視線を逸らした。
それでも、そっと手を握って騎士団の宿舎近くまで帰った。
それから、告白らしき告白はしてない。ちゃんとしないといけないな、と思う。
二人で出かけることは増えて、戦争にも駆り出された。
その時、死を予感した。
だから、きちんとミランと所帯を持ちたいと思った。給与を貯め、新居のあたりを付け、婚約の証しのアミュレットを買った。守護石の色は俺の目の色と同じ。
俺がいなくても、俺の代わりに守ってくれるようにと。
「メルトのペンダントを見てて、俺がそばにいない時でもミランを守れるようにと思ったんだ。もらってくれないか?そして俺と結婚してほしい。すぐにはできないだろうけど、他のやつに取られたくないから婚約だけでもしてほしい。」
ミランは泣きそうで、言葉を詰まらせて、でも頷いてくれた。その時キスをした。
ふわりと彼のいい匂いがして、心が浮き立った。
ラーンは割と、性に関しては緩い。しかし、メイルは勝手で、自分のパートナーには貞淑を求める。
俺はそんなことを強いるつもりはなかったが、ミランを大切にしたくて、初めては結婚してからと決めていた。
もちろん恋人らしくキスくらいはしているが、そこまでだった。
俺はメイルの本能というか習性を舐めていた。
やらかしたのだ。リンドが、ミランの逆鱗に触れた。
ミランは言葉を濁したが、団長が主催した飲み会で寄ったメルトを連れ出して、手籠めにしたらしい。
いや、暴力は使ってないとは思うが、酔って判断力のないところをというのはそれに等しい。
烈火のごとく怒りに燃えたミランはリンドを殴り飛ばし、啖呵を切ったらしい。
現場を見たものは誰もいないが、呼び出したときのミランにはだれも近づけなかったと聞いた。
そして俺に詰め寄ってきたミランの背にドラゴンが見えた。火を噴くドラゴンだ。
「経験してないフィメルの情報、メイルの間で噂になってるって聞いた。最低。僕初めてだって噂になってて、例えば誰かが経験しとくべきだって言ってきて一回でやり捨てられたらどんな気持ち?スラフはそれって許せるの?許せるなら僕別れるよ。そういう情報のせいで、よく恋愛とかわかってない子を誘ってやり捨てて。本気で恋をしたその子があとで後悔するような事させたくないんだけど。」
その言葉を聞いて状況がわかった。
つまり、経験のないフィメルを言葉巧みに丸め込み、やってそれきりという、愚かなメイルの欲望の対象にされているということだ。
俺が聞きまわったら、ミランも対象だった。
ああ、それは怒る。
大切なミランをただの性のはけ口にされたとしたら、大切な宝物を穢されたら。
そして俺も相当に怖い顔で噂を消しにかかっていたと、リスクに聞いた。リスクにも頼んで言いまわってもらった。恋人や思い人がいると。
それからしばらくして俺達は結婚した。
ミランは世界一綺麗だった。
結婚式の夜、お互い初めてで、戸惑うこともあったが、無事、一つになれた。
可愛すぎてどうしようかと思った。
「子供はもう少し待って。せめて、メルトが結婚したら。」
発情期は薬を飲んでやり過ごした。
だが、メルトに恋人はできず、ある日突然いなくなった。
メルトの残した手紙に本当の事情は書いてないと思われた。
ミランの焦燥は見ていられないほどだった。しっかりと励まして、何とか、前に進めるようになった矢先、メルトが帰還した。
美形の伴侶を連れて。
それからは大騒ぎだったが、それはまたの機会に。
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次の発情期には二人で籠ることになった。感謝する。
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