9 / 10
9.
しおりを挟む
暫くして恵が名残惜しそうにゆっくりと、しかし確かな感触を噛みしめるように唇を離した。
涼香はしばし蕩けた様な眼差しで恵を見上げていたが、彼の手が自分の顔に伸びてくるのに気づき、慌てて顔を伏せる。
しかし恵は指先で、彼女の顔を覆い隠していた眼鏡をそっと外した。
「…っ、返して…!」
自分を隠す唯一の盾を奪われた涼香は、伏せた顔を左手で隠しながら、眼鏡を取り戻すべく右手で宙を掻いた。しかし恵は外した眼鏡をサイドテーブルに置いてしまい、顔を覆う涼香の左手を優しく、しかし強い意志を持って引き剥がす。
「……やっぱり」
恵の口角がゆるりと上がり、感嘆の息を漏らした。
整った眉、長く揺れる睫毛、そして…今まで隠されていたのが惜しいほどに澄んだ、宝石の様な瞳。
「とても綺麗です。僕が想像していた通り、いや、それより何倍も…」
「…止めて、見ないで…」
涼香はまるで何かを恐れているかの様に顔を逸らしたが、恵はその逃げ場を塞ぐように彼女を力強く抱き寄せると、熱を持った唇で耳朶を甘噛する。
「…ふぁ、っ…」
不意に敏感な部分を刺激され、反応してしまった自分が恨めしく、涼香は目に涙を滲ませる。
「離して、お願い……」
涼香は両手で目の前の厚い胸板を押して身体を離そうとするが、恵は最早愛おしさを抑えきれなくなり、涼香の両手を大きな片手で包み込み、もう片方の手で涼香の腰へ手を回し、完全に逃さない様抱き寄せた。
「……好きだ、涼香さん…」
「…っ、…」
湿り気のある愛の言葉を囁かれ、彼女の凍てつく心が熱を帯び、ドロドロと溶け落ちていく。
抱きしめる恵の腕には、彼女を二度とこの腕から放さないという、静かだが激しい独占欲がこもっている。
「(逃げなきゃ…ダメなのに…)」
拘束された腕が涼香の意志とは関係無く降伏し、唯一コントロール出来る筈の唇は拒否を唱えるどころか、これからの展開を期待している様に震えている。
何も言わない涼香の様子を肯定と受け止めた恵は、じっ…と逃さんとばかりに見つめたまま、彼女の細い身体を抱きかかえた。
「っ、きゃ!!」
「おっと」
バランスを失った涼香は慌てて、恵の上半身に抱きついてしまう。
「ふふっ、大胆ですね、涼香さん」
「そっ!それは急に……っ」
不可抗力とはいえ、自ら恵の胸へ飛び込んだ事に深い後悔を覚えたのも束の間、恵がキングサイズのベッドまで移動すると、涼香の身体をゆっくりと、優しくその中心へと沈み込ませる。そこから雪崩込む様に恵もベッドへと乗り上げ、涼香の身体を組み敷いた。
涼香はしばし蕩けた様な眼差しで恵を見上げていたが、彼の手が自分の顔に伸びてくるのに気づき、慌てて顔を伏せる。
しかし恵は指先で、彼女の顔を覆い隠していた眼鏡をそっと外した。
「…っ、返して…!」
自分を隠す唯一の盾を奪われた涼香は、伏せた顔を左手で隠しながら、眼鏡を取り戻すべく右手で宙を掻いた。しかし恵は外した眼鏡をサイドテーブルに置いてしまい、顔を覆う涼香の左手を優しく、しかし強い意志を持って引き剥がす。
「……やっぱり」
恵の口角がゆるりと上がり、感嘆の息を漏らした。
整った眉、長く揺れる睫毛、そして…今まで隠されていたのが惜しいほどに澄んだ、宝石の様な瞳。
「とても綺麗です。僕が想像していた通り、いや、それより何倍も…」
「…止めて、見ないで…」
涼香はまるで何かを恐れているかの様に顔を逸らしたが、恵はその逃げ場を塞ぐように彼女を力強く抱き寄せると、熱を持った唇で耳朶を甘噛する。
「…ふぁ、っ…」
不意に敏感な部分を刺激され、反応してしまった自分が恨めしく、涼香は目に涙を滲ませる。
「離して、お願い……」
涼香は両手で目の前の厚い胸板を押して身体を離そうとするが、恵は最早愛おしさを抑えきれなくなり、涼香の両手を大きな片手で包み込み、もう片方の手で涼香の腰へ手を回し、完全に逃さない様抱き寄せた。
「……好きだ、涼香さん…」
「…っ、…」
湿り気のある愛の言葉を囁かれ、彼女の凍てつく心が熱を帯び、ドロドロと溶け落ちていく。
抱きしめる恵の腕には、彼女を二度とこの腕から放さないという、静かだが激しい独占欲がこもっている。
「(逃げなきゃ…ダメなのに…)」
拘束された腕が涼香の意志とは関係無く降伏し、唯一コントロール出来る筈の唇は拒否を唱えるどころか、これからの展開を期待している様に震えている。
何も言わない涼香の様子を肯定と受け止めた恵は、じっ…と逃さんとばかりに見つめたまま、彼女の細い身体を抱きかかえた。
「っ、きゃ!!」
「おっと」
バランスを失った涼香は慌てて、恵の上半身に抱きついてしまう。
「ふふっ、大胆ですね、涼香さん」
「そっ!それは急に……っ」
不可抗力とはいえ、自ら恵の胸へ飛び込んだ事に深い後悔を覚えたのも束の間、恵がキングサイズのベッドまで移動すると、涼香の身体をゆっくりと、優しくその中心へと沈み込ませる。そこから雪崩込む様に恵もベッドへと乗り上げ、涼香の身体を組み敷いた。
0
あなたにおすすめの小説
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
なぜ私?スパダリCEOに捕獲され推しの秘書になりました
あいすらん
恋愛
落ち込んでいた私が見つけた最高の趣味。
それは完璧スパダリCEOの「声」を集めること。
動画サイトで最高のイケボを見つけた私、倉田ひかりは、声を録音するためだけに烏丸商事の会社説明会へ。
失業中の元ピアノ講師には、お金のかからない最高のレクリエーションだったのに。
「君、採用」
え、なんで!?
そんなつもりじゃなかったと逃げ出したのに、運命は再び私と彼を引き合わせる。
気づけば私は、推しの秘書に。
時短の鬼CEO×寄り道大好き迷子女。
正反対な2人が繰り広げる、イケボに溺れるドタバタラブコメ!
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる