私を見つけないで下さい 〜元✕✕は平穏を望む〜

米穀店

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暫くして恵が名残惜しそうにゆっくりと、しかし確かな感触を噛みしめるように唇を離した。

​涼香はしばし蕩けた様な眼差しで恵を見上げていたが、彼の手が自分の顔に伸びてくるのに気づき、慌てて顔を伏せる。

しかし恵は指先で、彼女の顔を覆い隠していた眼鏡をそっと外した。

​「…っ、返して…!」

​自分を隠す唯一の盾を奪われた涼香は、伏せた顔を左手で隠しながら、眼鏡を取り戻すべく右手で宙を掻いた。しかし恵は外した眼鏡をサイドテーブルに置いてしまい、顔を覆う涼香の左手を優しく、しかし強い意志を持って引き剥がす。

​「……やっぱり」

​恵の口角がゆるりと上がり、感嘆の息を漏らした。

整った眉、長く揺れる睫毛、そして…今まで隠されていたのが惜しいほどに澄んだ、宝石の様な瞳。

「とても綺麗です。僕が想像していた通り、いや、それより何倍も…」

​「…止めて、見ないで…」

​涼香はまるで何かを恐れているかの様に顔を逸らしたが、恵はその逃げ場を塞ぐように彼女を力強く抱き寄せると、熱を持った唇で耳朶を甘噛する。

「…ふぁ、っ…」

不意に敏感な部分を刺激され、反応してしまった自分が恨めしく、涼香は目に涙を滲ませる。

「離して、お願い……」

涼香は両手で目の前の厚い胸板を押して身体を離そうとするが、恵は最早愛おしさを抑えきれなくなり、涼香の両手を大きな片手で包み込み、もう片方の手で涼香の腰へ手を回し、完全に逃さない様抱き寄せた。

「……好きだ、涼香さん…」

「…っ、…」

湿り気のある愛の言葉を囁かれ、彼女の凍てつく心が熱を帯び、ドロドロと溶け落ちていく。

​抱きしめる恵の腕には、彼女を二度とこの腕から放さないという、静かだが激しい独占欲がこもっている。

「(逃げなきゃ…ダメなのに…)」

拘束された腕が涼香の意志とは関係無く降伏し、唯一コントロール出来る筈の唇は拒否を唱えるどころか、これからの展開を期待している様に震えている。

何も言わない涼香の様子を肯定と受け止めた恵は、じっ…と逃さんとばかりに見つめたまま、彼女の細い身体を抱きかかえた。

「っ、きゃ!!」

「おっと」

バランスを失った涼香は慌てて、恵の上半身に抱きついてしまう。

「ふふっ、大胆ですね、涼香さん」

「そっ!それは急に……っ」

不可抗力とはいえ、自ら恵の胸へ飛び込んだ事に深い後悔を覚えたのも束の間、恵がキングサイズのベッドまで移動すると、涼香の身体をゆっくりと、優しくその中心へと沈み込ませる。そこから雪崩込む様に恵もベッドへと乗り上げ、涼香の身体を組み敷いた。
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