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自室に戻った碓氷は、作業デスクの引き出しからヘッドフォンを取り出し、耳へ装着した。
ヘッドフォンから聞こえてくるのは、ゴソゴソとした音と瀬奈の鼻歌だ。瀬奈に取り付けた盗聴器からの音声だった。碓氷は何でも無い生活音へ熱心に耳を傾ける、どんな些細な異変も見逃さない為に。
「…ふぅ…」
ガサッ
瀬奈がベッドへ飛び込んだ声が聞こえた。碓氷の目が獲物を見つけたかの様に鋭くなる。
「……」
…ゴソゴソ
それから暫くの沈黙の後、瀬奈は声を出さないまま、衣擦れの音だけが小さく聞こえてくる。
「…、っ…」
ほんの僅か聞こえた声に、碓氷は立ち上がった。
「瀬奈様、今すぐこの私めが参ります…」
***
加賀美家の者達が自室で各々の時間を過ごしているであろう晩に、碓氷は誰の目にも触れないよう静かに、しかし速い足取りで屋敷を歩き渡る。
はやる気持ちもあって、碓氷はあっという間に瀬奈の部屋へと到着した。
激しく高鳴る胸の鼓動を抑えつつ、碓氷はドアをコンコンとノックする。
「っ!だ、誰!?」
明らかに焦った様子の、瀬奈の声が帰って来た。
「お休み中申し訳ございません、瀬奈様。お伝えしたい事がございまして…」
「わ、分かった、ちょっと待って…」
それだけ言い終えると瀬奈がゴソゴソと何やら整え、パタパタと慌ててスリッパでドアへと駆け寄って来るらしき音が聞こえてくると、ガチャリとドアが鳴った。
「う、碓氷?どうした?」
ドアから頭だけを出してきた瀬奈だったが、その顔はついさっきまでしていた“行為”のせいで、ほんのり汗ばみ、少しだけ紅潮している。
その顔を見た碓氷は、あまりの色っぽさに興奮し、息が荒くなるのを抑えきれずにいたが、口元へ手を置く事で何とか誤魔化した。
「大変申し訳ございません、実は夜勤の使用人から、この辺にネズミが出たと報告がございまして…」
「えっマジで?」
あからさまに顔をしかめる瀬奈、それもその筈で瀬奈はネズミが苦手な事を、碓氷は当然把握していたのだ。
「もしかすると瀬奈様のお部屋に紛れ込んでいるかもと思いまして、よろしければ部屋の中を確認させて頂けますか?」
「う、うん、お願い」
瀬奈は何の疑いも無く、碓氷を部屋へと通した。
中へ入った碓氷はネズミを探すフリをして部屋の中を捜索する、“あるもの”を探す為に。
適当に壁の隅を探すと、本題であるベッド付近へと向かい、ベッドの下を覗き込んだ。
「(ここには無い、という事は…)」
碓氷は顔を上げると、ベッド付近を探すフリをして、ベッドで無造作に置かれていたスマホに目をつけた。
「…何か、音が聞こえたような…」
「えっ!ネ、ネズミ!?」
そんな音など聞こえるはずもない、瀬奈をベッドから離す口実である。
瀬奈の目を自分から離した碓氷がそつなく瀬奈のスマホのロックを開けると、そこに映った画面に碓氷は目を見開いた。
『あっ♡あっ、はぁん♡』
「!?う、碓氷ちょっ!」
部屋に響いた女性の喘ぎ声を聞いた瀬奈が、ネズミを恐れてくっついていた壁際から慌ててベッドへ戻り、碓氷が凝視していたスマホを取り返して電源を切った。
一方で瀬奈の素早い行動に碓氷はピクリとも反応せず、ただただ身体を小刻みに震わせている。
「瀬奈様…瀬奈様がこんな…」
ブツブツ呟く碓氷に、瀬奈も「う、碓氷?」と心配そうに近付く。
「(瀬奈様が…こんな淫猥な女の猿芝居に興奮していただなんて…そんな…)」
碓氷はショックと嫉妬で発狂寸前だったが、どうにか飛んでいきそうな正気を取り戻し、瀬奈へ向き直した。
「瀬奈様…
申し訳ございません」
「え、何が?」
突然の謝罪に訳が分からない瀬奈に碓氷は構わず続ける。
「この様な売女…いえ、この様な動画で自分を慰める程、瀬奈様に欲を持て余させてしまった事は、私の不徳の致す限りでございます…」
「へ?え?……っ、ちょ!」
説明されても全くもって意味が分からない様子の瀬奈の肩を碓氷が掴むと、そのままベッドへ押し倒した。
「何すんだよ……っ!?」
碓氷が瀬奈の股間辺りに膝を突き、薄っぺらなズボン越しに擦り付けてきた。
「あっ、あ、足…っ♡」
「どうされましたか?瀬奈様」
生地を通してやって来る快感に身悶える瀬奈へ、碓氷はワザとらしく、素知らぬ顔で問い掛ける。
少し前までオナニーしようとする程性欲を持て余していたせいで、少しの刺激でも反応してしまう瀬奈に、碓氷はおいたわしい…とでも言わんばかりの顔で瀬奈を見つめた。
「やはりこの程度でも反応してしまう程、瀬奈様にご負担を掛けさせてしまっていたのですね…」
「はぁ♡っち、乳首当たって…っ♡」
碓氷は今度は寝間着の上から“たまたまそこにあった”という体裁で乳首に手を置き、衣擦れで刺激を加えた。
「ぁっ、乳首、やばっ…♡」
快感で段々と膨らんでいく瀬奈の股間に、碓氷は込み上げる喜びの笑みを抑えきれなかった。
「…くふっ…ふふ…ふっ…」
「(瀬奈様が私の手で、脚で、興奮し、反応されている…)」
碓氷は勝利にも似た高揚感を覚えていた。同時に、自分の行為で矯声を上げ、可愛い反応をする瀬奈を狂おしい程愛おしく感じていた。
「瀬奈様、私に全てお委ね下さい。私、瀬奈様の事なら全て熟知しております。不肖ながらこの碓氷が瀬奈様の不満を解消して差し上げます」
ヘッドフォンから聞こえてくるのは、ゴソゴソとした音と瀬奈の鼻歌だ。瀬奈に取り付けた盗聴器からの音声だった。碓氷は何でも無い生活音へ熱心に耳を傾ける、どんな些細な異変も見逃さない為に。
「…ふぅ…」
ガサッ
瀬奈がベッドへ飛び込んだ声が聞こえた。碓氷の目が獲物を見つけたかの様に鋭くなる。
「……」
…ゴソゴソ
それから暫くの沈黙の後、瀬奈は声を出さないまま、衣擦れの音だけが小さく聞こえてくる。
「…、っ…」
ほんの僅か聞こえた声に、碓氷は立ち上がった。
「瀬奈様、今すぐこの私めが参ります…」
***
加賀美家の者達が自室で各々の時間を過ごしているであろう晩に、碓氷は誰の目にも触れないよう静かに、しかし速い足取りで屋敷を歩き渡る。
はやる気持ちもあって、碓氷はあっという間に瀬奈の部屋へと到着した。
激しく高鳴る胸の鼓動を抑えつつ、碓氷はドアをコンコンとノックする。
「っ!だ、誰!?」
明らかに焦った様子の、瀬奈の声が帰って来た。
「お休み中申し訳ございません、瀬奈様。お伝えしたい事がございまして…」
「わ、分かった、ちょっと待って…」
それだけ言い終えると瀬奈がゴソゴソと何やら整え、パタパタと慌ててスリッパでドアへと駆け寄って来るらしき音が聞こえてくると、ガチャリとドアが鳴った。
「う、碓氷?どうした?」
ドアから頭だけを出してきた瀬奈だったが、その顔はついさっきまでしていた“行為”のせいで、ほんのり汗ばみ、少しだけ紅潮している。
その顔を見た碓氷は、あまりの色っぽさに興奮し、息が荒くなるのを抑えきれずにいたが、口元へ手を置く事で何とか誤魔化した。
「大変申し訳ございません、実は夜勤の使用人から、この辺にネズミが出たと報告がございまして…」
「えっマジで?」
あからさまに顔をしかめる瀬奈、それもその筈で瀬奈はネズミが苦手な事を、碓氷は当然把握していたのだ。
「もしかすると瀬奈様のお部屋に紛れ込んでいるかもと思いまして、よろしければ部屋の中を確認させて頂けますか?」
「う、うん、お願い」
瀬奈は何の疑いも無く、碓氷を部屋へと通した。
中へ入った碓氷はネズミを探すフリをして部屋の中を捜索する、“あるもの”を探す為に。
適当に壁の隅を探すと、本題であるベッド付近へと向かい、ベッドの下を覗き込んだ。
「(ここには無い、という事は…)」
碓氷は顔を上げると、ベッド付近を探すフリをして、ベッドで無造作に置かれていたスマホに目をつけた。
「…何か、音が聞こえたような…」
「えっ!ネ、ネズミ!?」
そんな音など聞こえるはずもない、瀬奈をベッドから離す口実である。
瀬奈の目を自分から離した碓氷がそつなく瀬奈のスマホのロックを開けると、そこに映った画面に碓氷は目を見開いた。
『あっ♡あっ、はぁん♡』
「!?う、碓氷ちょっ!」
部屋に響いた女性の喘ぎ声を聞いた瀬奈が、ネズミを恐れてくっついていた壁際から慌ててベッドへ戻り、碓氷が凝視していたスマホを取り返して電源を切った。
一方で瀬奈の素早い行動に碓氷はピクリとも反応せず、ただただ身体を小刻みに震わせている。
「瀬奈様…瀬奈様がこんな…」
ブツブツ呟く碓氷に、瀬奈も「う、碓氷?」と心配そうに近付く。
「(瀬奈様が…こんな淫猥な女の猿芝居に興奮していただなんて…そんな…)」
碓氷はショックと嫉妬で発狂寸前だったが、どうにか飛んでいきそうな正気を取り戻し、瀬奈へ向き直した。
「瀬奈様…
申し訳ございません」
「え、何が?」
突然の謝罪に訳が分からない瀬奈に碓氷は構わず続ける。
「この様な売女…いえ、この様な動画で自分を慰める程、瀬奈様に欲を持て余させてしまった事は、私の不徳の致す限りでございます…」
「へ?え?……っ、ちょ!」
説明されても全くもって意味が分からない様子の瀬奈の肩を碓氷が掴むと、そのままベッドへ押し倒した。
「何すんだよ……っ!?」
碓氷が瀬奈の股間辺りに膝を突き、薄っぺらなズボン越しに擦り付けてきた。
「あっ、あ、足…っ♡」
「どうされましたか?瀬奈様」
生地を通してやって来る快感に身悶える瀬奈へ、碓氷はワザとらしく、素知らぬ顔で問い掛ける。
少し前までオナニーしようとする程性欲を持て余していたせいで、少しの刺激でも反応してしまう瀬奈に、碓氷はおいたわしい…とでも言わんばかりの顔で瀬奈を見つめた。
「やはりこの程度でも反応してしまう程、瀬奈様にご負担を掛けさせてしまっていたのですね…」
「はぁ♡っち、乳首当たって…っ♡」
碓氷は今度は寝間着の上から“たまたまそこにあった”という体裁で乳首に手を置き、衣擦れで刺激を加えた。
「ぁっ、乳首、やばっ…♡」
快感で段々と膨らんでいく瀬奈の股間に、碓氷は込み上げる喜びの笑みを抑えきれなかった。
「…くふっ…ふふ…ふっ…」
「(瀬奈様が私の手で、脚で、興奮し、反応されている…)」
碓氷は勝利にも似た高揚感を覚えていた。同時に、自分の行為で矯声を上げ、可愛い反応をする瀬奈を狂おしい程愛おしく感じていた。
「瀬奈様、私に全てお委ね下さい。私、瀬奈様の事なら全て熟知しております。不肖ながらこの碓氷が瀬奈様の不満を解消して差し上げます」
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