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本章

バカよねえ。双子のどちらと婚約したかもわかってないんだから

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「ポーリシア、そっちはどう?」
「そろそろなくなりそう」
「あら、じゃあグレン。奥に乾燥させた薬草があるから持ってきなさい」
「ハイ、喜ンデ♪」

奥の部屋へと入っていくグレンの後ろ姿を見た客の一人が、感心しながら見送る。

「さすが、繁盛店ねえ。あれって最新の人工生命体ロボットなんでしょう?」
「ええ、人型だそうです。行動制限もあるんですけど。ほら、ここにはガードロボもいるでしょう? だから試作品を試してほしいと」
「ルーブンバッハ家の人工知能の研究が成功したおかげで、小国として独立が許されたんですもの。今では小国にも関わらず近隣国一豊かな国として認められ、私たちも豊かな生活ができるようになったわ」
「国民思いの素敵な女王様で本当によかったわ」

ルーブンバッハ領は独立して小国として成り立っている。
ユーレシアは旧リッツン領で領地経営を任されていた執事たちと共に領を繁栄させ、アインは好きな錬金術から派生させた人工知能を開発し、人工生命体ロボットを作り出した。
アインの研究はポーリシアのため。
彼女は確かに湖に身を投げた。
王族である以上、私たちには暗部が付いている。
私たち姉妹の暗部は我が家の私兵だ。
ポーリシアが襲われたのちに父が付けてくれた。
王家の暗部は見守り報告するだけで助けることはない。
それをポーリシアの一件で暗部に開き直られて、父は激怒して暗部を叩き潰した。
今は父の認めた者だけだ。
そのおかげで、湖に身を沈めたポーリシアを救い出してくれた。

私たちは『ポーリシアは湖に沈んだ』と言ってはいたが、ひと言も死んだとはいっていない。
あの一件以降、ポーリシアは男性恐怖症になっている。
しかし、店には男性の手も必要だ。
ガードロボは半長円形の切断面を下にして立てた姿。
お掃除ロボットは円盤形。
受付・販売員は女性タイプに制服を着せている。
荷運びには向いていない。
そこで、人工生命体グレンの登場だ。
身長が190センチもあるのは、グレンにはポーリシアの手足になってもらうためだ。
……ポーリシアは生命は助かったものの、呼吸が止まって脳に酸素が回らず、手足に若干の後遺症が残ってしまった。
一番の問題は内臓。
心臓をはじめとした内臓が弱って、そのままでは長くないと診断された。

すでに不貞を行なっていたデデを使って婚約破棄をおこなう計画をたてた。
それによって次期当主ポーリシアが私と一緒に住んでも問題がない土台を作るためだ。
その調査中に気付いた、ゼアが妊娠していることを。
すべてを知ったリッツン侯爵は今後の領地繁栄のためデデの廃籍を決めた。
しかし、このままデデを廃籍すれば、いま貴族間で起きている『子息たちによる集団婦女暴行事件』の実行犯による子息たち……の大量処分に含まれてしまう。
いや、実際には実行犯の一人だけど……
それが表沙汰になってしまえば、共同事業をしているルーブンバッハ家にとって多大な被害が起きる。
それを別の形で大事オオゴトにすることで、デデの廃籍を正当化させた。

「デデってバカよねえ。双子のどちらと婚約したかもわかってないんだから」
「私たちの名前もわかってなかったわよ」
「今回はそのおかげで助かったわ」

そう、デデの婚約者は姉のポーリシア。
次期当主のポーリシアと結婚すれば、両家の結婚合併でルーブンバッハ領ではなくリッツン領が残ったはずだった。
それほど蔑ろにされてきたのだ。
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