1 / 6
『隣国に民に愛されし公爵令嬢あり』
しおりを挟む『隣国に民に愛されし公爵令嬢あり』
そんな言葉を聞いたのは王城で開かれたパーティーでのことだった。
「それはどんな姫なのだ?」
「あ、ポーレッド王太子殿下」
令嬢たちの話を詳しく聞き出そうと声をかけると、令嬢たちは慌てて私にカーテシーを捧げる。
「ああ、挨拶はいい。それで隣国の公爵令嬢というのはどのような姫君だ?」
私の言葉にお互いの顔を見合わせているものの、誰一人として口を開かない。
私が幼い頃から人々に嫌われているのは自覚している。
だから、同腹・異腹の弟たちには幼い頃から婚約者がいるというのに、私は王太子でも婚約者がいない。
「その公爵令嬢のことを教えてもらえるかな?」
「いえ、私たちも詳しくは存じません」
「それでもかまわない」
私の言葉に困った表情で顔を見合わせる令嬢たち。
……腹が立つ。
「いつまで黙っているつもりだ」
脅すように尋ねると令嬢たちは青くなって慌てて頭を下げる。
「本当に私たちは何も存じません。ただ、私たちと同じ年頃で、以前この国に来られたことがあったそうです。そのため今日その令嬢をどなたか存じないかと思いまして」
「ええ、私たちも『その令嬢のように国民とはいかなくても、せめて領民には好かれるようになれ』と言われました。ですがどのようなお方なのか分からず」
令嬢たちがウソを吐いているようにはみえない。
本当に知らないようだ。
「それはいつ誰に言われたのだ?」
「昨日の終業式に学園長からです」
「そうか、わかった」
私の言葉にカーテシーをしてすぐに離れていく。
昨日の終業式、式だけ出て長々とした話を聞いてムダな時間を過ごすだけで面倒だから、理由をつけて行かなかった。
そんな話をしていたのか。
そんな話なら誰に聞けばいいか分かっている。
私はその日のパーティーをそつなくこなし、翌日外交部の下っ端を数人脅して噂となった隣国の公爵令嬢の情報を奪い取った。
「これは面白い」
隣国の公爵令嬢は幼い頃から『傷物令嬢』といわれてきたらしい。
婚約破棄か何かで傷物と蔑まれる立場となったわけだ。
今では幼女趣味の民たちに股を開く淫乱娼婦に身を落としているのだろう。
外交官の口が重たいのもそれが理由か。
私はペンを手に取った。
淫乱に育った公爵令嬢を王太子妃にしてやるから引き渡せ。
その代わりに法外な持参金も寄越せ。
ほかにも見目麗しい『傷物令嬢』がいるなら引き取って後宮で愛妾にしてやろう。
そのほかにも様々な条件をつけた手紙を外交官に預け、急ぎで返信を持ってくるよう命じた。
ひと月後に届いた返信は、私からの婚約を無下に断る内容だった。
今度は断ったら開戦も辞さない旨をチラつかせてみた。
152
あなたにおすすめの小説
愛を騙るな
篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」
「………」
「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」
王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。
「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」
「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」
「い、いや、それはできぬ」
「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」
「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」
途端、王妃の嘲る笑い声が響く。
「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
婿入り条件はちゃんと確認してください。
もふっとしたクリームパン
恋愛
<あらすじ>ある高位貴族の婚約関係に問題が起きた。両家の話し合いの場で、貴族令嬢は選択を迫ることになり、貴族令息は愛と未来を天秤に懸けられ悩む。答えは出ないまま、時間だけが過ぎていく……そんな話です。*令嬢視点で始まります。*すっきりざまぁではないです。ざまぁになるかは相手の選択次第なのでそこまで話はいきません。その手前で終わります。*突発的に思いついたのを書いたので設定はふんわりです。*カクヨム様にも投稿しています。*本編二話+登場人物紹介+おまけ、で完結。
最後の誕生日会
まるまる⭐️
恋愛
「お父様のことを……お願いね……」
母は亡くなる間際、まだ小さかった私の手を握り締めてそう言った。
それから8年……。
母の残したこの言葉は、まるで呪文のようにずっと私の心を縛り付けてきた。
でも、それももう限界だ。
ねぇ、お母様。
私……お父様を捨てて良いですか……?
******
宮廷貴族ゾールマン伯爵家の娘アイリスは、愛する母を病気で亡くして以来、父ヨーゼフと2人肩を寄せ合い暮らしてきた。
そんな日々が続いたある日、父ヨーゼフはいきなり宰相から筆頭補佐官への就任を命じられる。それは次の宰相への試金石とも言える重要な役職。日頃からの父の働きぶりが認められたことにアイリスは大きな喜びを感じるが、筆頭補佐官の仕事は激務。それ以来、アイリスが父と過ごす時間は激減してしまう。
そんなある日、父ヨーゼフは彼の秘書官だったメラニアを後妻に迎えると屋敷に突然連れて帰って来た。
「彼女にはお前と一つ違いの娘がいるんだ。喜べアイリス。お前に母と妹が一度に出来るんだ! これでもう寂しくはないだろう?」
父は満面の笑みを浮かべながらアイリスにそう告げるが……。
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる