神のみぞ知る《完結》

アーエル

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愛する人の待つ世界へと旅立った

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呆然としていた私は、引き摺られて地下牢に投げ込まれた。
抵抗したくても痛みで不可能だった。

地下牢には、母たちに弟妹たちも入っていた。
私は一人だけ別の牢に入れられた。
次々に投げられる罵りの言葉。
国が滅ぶときは王族が処刑される。
それも公開処刑だ。

5歳の弟が言う、「みんな死ぬの?」と。
4歳の異母妹が聞く「みんなも死ぬの?」と。
母が言う、「みんな一緒よ」と。
側妃が答える「みんなも一緒よ」と。

それも繰り返し。
馬車で護送されて処刑される国に運ばれて地下牢に入るまで繰り返した。

「属国なら生きられたのに」

誰かの言葉が耳に残った。


処刑の日、弱々しくなった父をみて残念に思う。
数日でこんなに簡単に弱るのかと。
幼い弟妹は全員眠らされていた。
そして、眠ったままギロチン台に寝かされて、首を落とされていった。
この国の幼子への配慮だった。
王族として生まれた以上、王族の責任を背負って死ぬことに抵抗を見せなかった。
繰り返し質問してたのは、自分を納得させるためだった。


私と父は彼らの処刑を、跪いて両手をYの字に吊り下げられた状態で見ていた。
パスリム国最後の王族として断頭台にあがる彼ら。
青ざめて固くなった表情で、それでも胸を張り断頭台の露に消えていく。
みんなの夢も希望も未来も奪った私と父にけっして目を向けず。

それが私たちへの拒絶。

事実、私たちは名前も王族としての立場をも剥奪されて無民……平民でも奴隷でも賤民でもない、存在すら認められない者としてここにいる。


「許さない!」

断頭台から私たちを睨みつけている赤い髪の少女。
彼女は前日に公爵家の第三子に嫁入りした侯爵令嬢だ。
いや、翌々日に結婚式を挙げる予定だったから、まだ彼女は王族の伴侶に属していない。

「私は捕まった翌日に結婚式を挙げるはずだった!」
「では助命を求めるか?」
「求めない。私の愛する人はもうこの世にいない。彼のいない世界なんかで生きる意味はない! アイツらはもう私より立場は下でしょ。だから最期に今まで言えなかったことを言わせて!」

彼女の言葉にコートレイル公爵が頷く。
縛られた状態の少女はコートレイル公爵にカーテシーで礼を示す。
その姿は叶えられなかった公爵夫人という立場に相応しく美しかった。

「パスリム国を滅ぼさずに属国のままだったら私たちは幸せになれたのよ。名もなき男、あなたが10年前に公爵令嬢を傷つけた罪を認めて、王族としてその首を差し出していればパスリム国は存続できた。罪を反省して悔い改めていたら、パスリム国は属国として存続できた。ここまで、そしてこれからも死んでいくみんなを殺したのは名もなき男、そして10年前に息子の罪を認めなかった愚かな父親。全部お前たちの犯した罪であり、神は穢れた魂の転生を認めない! 次の生で私たちは幸せになる。それはあんたたちの存在がないからよ」

少女は最期の思いを私と父にぶちまけるとコートレイル公爵にカーテシーをして自ら断頭台に横になり首を固定させる。

「ありがとう。私を愛する人のところへ送ってください」
「…………皆さんの次の生が幸せでありますよう願っております」

死刑執行人の言葉に少女は微笑んで…………愛する人の待つ世界へと旅立った。
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