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第九章
第192話
元の大陸に戻ったスゥたちは、セルヴァンの指導によって今までと違う『獣人の種族による特性を使った体術』を用いた戦闘をするようになったからか。
以前より確実に強くなっていた。
特にルーナの成長は大きかった。
スゥのように、猫種の特性である『身軽さ』を活かした『素早い攻撃』。
シーナのように、犬種の特性である『力強さ』を活かした『強い攻撃』。
そのどちらを見ても羨んでも。
ルーナには『ない物ねだり』だった。
でもルーナには犬種の子供に多くみられる『素早さ』を持っていた。
それこそ、猫種のスゥと同じ素早さを。
「いいなー。ルーナは」
スゥにそう言われてルーナは驚いた。
自分には『何も勝てることはない』と思っていたのだ。
それが何故羨ましがられているのか。
ルーナには分からなかった。
「だって。ルーナは『素早さ』と『力強さ』の両方を持っているんだもん。
私なんて、力が弱いから『2回攻撃』をしないといけないのよ。
私の『2回攻撃』がルーナの『1回攻撃』と一緒・・・ううん。『1回攻撃以下』なんだよ」
スゥの言葉に驚くルーナ。
「あれ?やっぱり気付いていなかったんだね」
〖 ルーナはアレを『偶然』と思っていたのでしょう 〗
「ああ。あのあと『環境が変わった』から、忘れちゃったんだね」
「ご主人さま・・・?」
ルーナはまだ分かっていないようだ。
「ねえ。ルーナ。
ベアを相手にした時、ルーナは『短刀でベアの足を1本、一刀両断にした』んだよ」
「・・・・・・あっ!」
さくらの指摘でやっと『思い出した』のだろう。
驚いた表情のままで固まってしまった。
「ね?私は『筋を切って動きを止めるだけ』しか出来なかったのに、ルーナはちゃんと攻撃してたんだよ。
・・・今でも一撃で攻撃出来ていないんだから。
私にしてみれば、『一撃で倒せるだけの能力があるのに『自分は弱い』ってありえない』んだから」
「そうね。私はルーナと違って『素早さが足りない』のよ。
私たちから見たら、私とスゥ、両方の特性を持ってるルーナが羨ましいわ」
スゥとシーナ。
手を伸ばしても届かない、追いつくことが出来ないと思っていた2人から『羨ましい』と思われていたことを知ったルーナ。
『信じられない』という表情をしてから泣き出してしまった。
「ルーナ。さくらが恐竜たちと『遊ばせた』理由が分かるか?」
セルヴァンの質問に対してルーナは左右に首を振る。
「彼らは強く優しい。
だから、君たちにあわせて手加減をしてくれる。
その彼らが『一番手加減をしないで遊べた』と言ったのはルーナ。キミだ」
「わたし・・・?」
〖 全力で走ったらルーナとスゥはついてきた。
模擬戦をしたらルーナとシーナは力強く打ち込んできた。
空から攻撃したら3人とも反応したけど、反撃をしようとしたのはルーナとスゥだった。
そして攻撃が当たったのはルーナだけだった。
・・・一番、恐竜たちが『楽しく遊べた』のは誰でしょう? 〗
ハンドくんの言葉にポカーンと口を開けているルーナに、全員の視線が集まる。
「わ、た・・・し?」
「そう。『一番強い』からセルヴァンはルーナに『自主鍛錬』させてたんだ。
ルーナに一番足りないものは『自分に自信を持つ』ことだからなー。
セルヴァンが『どうでもいいと思ってた』とか『サボってた』訳じゃないぞ」
「ルーナは『上を見過ぎ』なんだよ。
ちゃんと下を見て、自分の両足がどこについていて、何が出来て何が出来ないのかを知るところから始めないと意味ないよ」
ヨルクとさくらに言われて、ルーナは自分を思い返す。
『スゥのように動けない』
『シーナみたいに敵と戦えない』
ずっとそう思っていた。
ヨルクの言う通り、『自分は出来ない』と思い込んでいた。
「わたしは・・・出来るの?
一緒に戦えるの?」
「自信を持てばね」
スゥにそう言われて、ルーナは自分を見直して前向きに戦う自信をつけた。
自分を覆っていた殻を自ら脱いだルーナは、メキメキとその能力を発揮出来るようになった。
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