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二度とこの名を忘れるなよ
しおりを挟むそこでヒックスはふと気になった。
『なぜ、彼らは私の計画を知っていたのか』を。
「ああ、ご存知なかったのですか。あなたの尊敬してやまない国王陛下が全く同じことをしでかしたのは二十年前です。それが元で国交は断絶されました。そして九年前、王太子がやはり同じことをしでかしました。そのときはあなたの国の領土で鉱山のある領地を三ついただきました。そして今年、また懲りずにあなたが同じ行為をしました。話し合いの結果、国土の六割をいただくこととなりました。すでにあなたの国は一時間前から北の高山がある二つの領地だけです」
呆然とするヒックスに後方から声がかけられた。
「ヒックス殿下、出発の準備が整いました。荷物はすべて積み込み済みです。殿下、あとはあなたにお乗りいただくだけです」
「マーロウ……知っていたのか。父のことも、兄のことも……」
「もちろんです。私はこの国の者です。あなたは側近もなく学園に入られたためその世話役となることで卒業までの試験免除や学園生活にかかる一切の費用控除。そしてあなたの国からは、あなたの悪行の被害を最小限にする代わりに莫大な報酬をいただくことで引き受けさせていただきました。その報酬は今朝ヒックス殿下の国から一括で支払っていただきました」
ワナワナと震えるヒックス。
それはどんな感情からくるものかわからない。
マーロウと呼ばれた学生がヒックスの腕を掴み引っ張ると何の抵抗もなく馬車へとついていく。
ヒックスを馬車に乗せるとマーロウは外から馬車にかんぬきをかけた。
換気のために僅かに開いた上部からヒックスはマーロウに問いかける。
「マーロウ……お前は」
「ヒックス、私の名を覚えていないのですか?」
「マーロウ、だろう?」
「ファミリーネームは?」
そう問われれてもヒックスは何も言わない。
─── 覚えていないのだから言えるはずがない。
「では改めて名乗ろう。私はマーロウ・グーリアル。モスリーン・グーリアル公爵は我が妻だ。二度とこの名を忘れるなよ、ヒックス」
マーロウの二度目となるであろう自己紹介に驚きの表情で固まっていたヒックスが我に返ったのは、馬車が動き出してからだった。
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