私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第四章

第79話

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昼にカレーを提供した日の夕方。テントから出た時に皆さんから「美味しかった」と笑顔で感想を言われました。一番人気だったのはシーフードカレーでした。次点がきのこカレー。別に肉のカレーが不人気なのではなく、シーフードカレーときのこカレーが『物珍しい』のだそうです。

「シーフードとキノコは、カリーで炒めても美味しくない。それがカレーになったら美味しくなった!」

そういえば、カリーを売っていた屋台の人も「炒め物の味付けに使う」と言っていましたね。
実は素揚げにした野菜をカレーにトッピングする『野菜カレー』も作ったのですが、あれは『外で食べるものではない』と思ったので出しませんでした。アジトに帰ってから、皆さんに出してみましょう。
やはり、帰ってから作る予定なのは『天ぷら』。揚げたてを食べてもらいたいからです。

チョコレートを使った有名なケーキ『ザッハーさんのお菓子ザッハトルテ』も作っていたので、夕食後に試食としてひと切れ出しました。

「え~!ちょっとこれ美味しいんだけど」

「これがあの苦いチョコレートなの?!」

「エアちゃん。『ひとり1個』で出して」

「ダメですよ。『試食』なんですから。帰ってからティータイムで出すつもりです。此方はホットココア。熱いですので気をつけて下さい」

「ン・・・。甘くて美味しい」

「エリーさん。チョコレート好きなんですか?」

「・・・苦いから好きじゃない」

「そうね。エアちゃんが作ったのは絶対美味しいって分かっているから抵抗なく食べられるけど、普通のは苦くてちょっと苦手だわ」

確かにあの苦さは甘い物が好きな人には苦痛でしょう。それに昔、チョコレートは薬だったそうです。そして・・・『媚薬』だったそうです。
ちなみに私は何方でも平気です。だから、『万人ばんにんけする甘さ』でミルクチョコレートを作れたのです。

「今度から『美味しいお菓子』が食べられるようにしましたよ。ひと口で食べられる大きさに作ってあります。でも差し上げるのは王都に着いてから。フィシスさんたちの分も用意しました」

「エアちゃん。今から頂戴」

「ダメですよ。チョコレートには興奮作用があります。食べすぎると慣れていない皆さんは 眠られなくなりますよ」

実はチョコレートというものは適度な量で眠気を吹き飛ばしたり、眠気を誘ったりします。幸福感で一杯にしたり、興奮状態で神経が研ぎ澄まされたりします。今は夕食後。後は寝るだけなのでケーキは少量にしました。代わりにぐっすり眠れるように、ミルクたっぷりのココアを出したのです。


「・・・すぅ」

「エリーさん。寝ちゃった」

「私ももう眠くなってきたわ。今日はもう私たちも寝ましょう」

「エアさん。馬車の中でテントの周りに結界を張って休んでください。明日の夕方には王都に戻れると思います」

「エアちゃん。もう1日だけテントで過ごしていてね」

「はい、分かりました。おやすみなさい」

「うん。おやすみ」

エリーさんはルリットさんが自分たちのパーティ用テントの部屋へと運んで行きました。170センチはあるエリーさんを、ルリットさんは軽々と抱えています。

「さすがに男を運ぶのなら魔法の方がラクだし簡単だけどな。エリーくらいならイチイチ魔法を使う方が面倒だ」

ルリットさんは一見いっけん優男やさおとこ』に見えますが、実は『脱いだらスゴいんです』という細マッチョ系です。以前、エリーさんを片腕で抱えて「ちょうど特訓にいい重さだ」と口走り、エリーさんに特訓という名のスパルタを受けたそうですがルリットさんは全然こたえていなかったそうです。

「女性に対して失礼ですよ」

「そうですか?オレとしては重すぎず軽すぎず、ちょうどいいって『誉めたつもり』だったんですが」

「女性に対して体重のことを口にするのは『礼儀として』どうかと思いますよ」

そういうと「分かりました。礼儀を欠く言動は控えます」と答えてくれました。






馬車で移動すること三日目。今日も朝から温室へ向かいました。当たり前ですが、種をいて1日で芽が出るわけもなく。植えた苗が急成長することもありませんでした。

調合室で万能薬を作り置きしていました。万能薬の説明だと『死んでいなければ、どんな状態にも効く』という効果バツグンで効果覿面てきめんのようです。
たくさんあっても困ることはなく、ポンタくん経由で売ることも可能のようです。

薬師やくしギルドが私から手を引いたため、『貴族の使者』が続々「お抱え薬師にしてやる」と言ってきました。ですが、私はすでに『職人ギルドに登録済み』ということで誰とも会いませんでした。ゴリ押し出来るはずがありません。私の代理として彼らの前に立ったのは『聖女様に認められた冒険者キッカさん』です。

貴族の中には職人ギルドへ圧力をかけてきたそうです。脅し文句は聞いて笑いました。

「貴族は職人ギルドから一切購入しない」

ポンタくんは大喜びで『貴族と貴族邸で働く者に職人ギルドおよび商人ギルドの品を一切販売しない』という取り決めがされ、職人ギルドと商人ギルドは提携しているため商人ギルドも同時に申請され貴族院も承諾しました。

屋台も露店も行商人はすべて『商人ギルド所属』です。・・・それが購入出来なくなったのです。職人ギルドに喧嘩を売った貴族たちは、その他大勢の貴族と使用人から恨まれています。そうです。『貴族邸で働く者』も購入対象外にされたのです。
書類を作ったのは貴族側。ちゃんと署名済み。言い逃れは出来ません。

そのゴタゴタがあり、私は完全に『蚊帳の外』に置かれてしまいました。
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