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第七章
第192話
しおりを挟む《 エミリア。『悪いことをしてる人』がいるよ。やっつけていい?》
そう言われたのが、妖精たちと共にアゴールを庁舎に送り『飛翔』で家に帰ってから三分後。妖精たちを置いていくため、私は自分の魔法を使って家に帰った。そのせいだろうか? 妖精たちは私と帰ったという認識だったようだ。アゴールには、今日一日妖精たちが一緒にいるということをダイバ以外には内緒にするように話していた。もちろん、妖精たちを狙う連中がまだまだ存在するからだ。
そのため、アゴールの周りは通常通りの勤務が始まっていた。彼女が『いつもより遅いが始業時刻の四十五分前』に庁舎へ到着した時は祝福の嵐だった。しかし、最初に前日の職務放棄を謝罪した後は執務室で仕事を始めたため、周囲の盛り上がりも一時的なものだったようだ。
護衛のためアゴールのそばに残った妖精以外が、初めて訪れた庁舎内に興味を持つのはわかりきっていた。だからこそ『仕事の邪魔をしない』と約束させたのだ。もちろん、妖精たちの護衛は交代制だ。その点はちゃんとお互い守っている。
「悪いことって何をしているの?」
《 ……色々 》
「それはちゃんと証拠はある?」
《 あるよ 》
「……証拠を集めて持ってきて。それとダイバは?」
《 ダイバはダンジョン管理部のお仕事が終わって守備隊の詰め所に向かってる 》
「誰か一緒?」
《 ううん、一人だよ 》
《 見つけた証拠、持ってきたよ 》
《 面倒だから、ダイバも持ってきたよ 》
……おい!
ツッコミ満載だけど。誰かを含めて話をするより、まずはダイバに相談しようと思ってたから変わらないか。
一人納得して一階に降りると、ダイバが床に胡座をかいて座っていた。
「エーミーリーア~。なんなんだよ、今日は」
「ダイバ。フーリさんかシューメリさんから話を聞いた?」
「話? なんのことだ?」
私が冗談抜きで話を向けると、ダイバの表情が一変して真面目な表情になった。これがダイバの『真の姿』。普段のおちゃらけた姿は相手の気を緩ませるためだ。
応接用のソファーに座った私にあわせてダイバも座る。そんなダイバの前にアイスティーを出してから、ダイバを追い出してからの話を掻い摘んで話す。真面目な表情で考え込んだダイバに「それは後でコルデさんと相談して」と話すと「わかった」と頷いた。
「それで、俺をここに呼び出したのには理由があるんだな?」
「そう。庁舎の悪意を妖精たちが調べていたところ、こんな証拠を集めてきた」
そう言ってローテーブルに妖精たちが集めてきた証拠である書類などを広げる。中には記録用の魔石もある。妖精には大きい魔石だが、重力を操る暗の妖精が証拠として記録を撮ってきてくれたのだ。
「……コイツは酷いな」
「どうする? いま妖精たちは庁舎に潜り込んでいる。それを知っているのはアゴールとダイバだけだ。まあ、フーリさんたちも知っているが、妖精たちの話では誰もかかわっていない」
「妖精たちに何を手伝ってもらえる?」
「犯人たちの確保。……すでに、一部の連中が動き出していたため妖精たちが閉じ込めている」
「証拠はこれで全部か?」
「いや、ここにあるのは一部だ。倉庫や書庫に移されて、持ち出しても気付かれないやつ。それ以外でも、妖精たちはすでに調べているらしい。……どうする? 証拠隠滅をさけるため、ダイバの取り締まりが始まったらアゴールがいる執務室に移すように言ってあるが」
ダイバは私の話に耳を傾けながら、目の前に出された証拠を手に取って中身を確認していく。
「アゴールは知らないまま、か?」
「シューメリさんもね」
「……父さんに相談してから動きたい」
《 コルデならミリィの店にいる。今朝の確認をエリーにしてるよ 》
「ダイバ。コルデさんはミリィさんたちの店にいるって」
「……エミリア。父さんをここに迎えてもいいか? もしかすると、父さんの仲間たちもくるかも知れんが」
「全員は止めた方がいい。どこで不審がられるかわからない」
「今朝の話として……」
「アゴールの行動を制御するために試作品をつけた。問題は試作品という点だ。それに関して『エルフの祝福』の効果を知るため、という理由を使って」
「ああ。店には客も来ているだろうから、それで父さんと数人を連れてくる」
ダイバはそういうと、裏口から出ていった。
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