私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第七章

第205話

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「……ねえ。店の前になんかいるんだけど?」
《 ねえ、倒してもいい? 》
《 あれが聖魔士のルールを破ってるヤツだよね 》
「あいつは私が手を出すから、みんなは涙石から出ないで」
《 わかった 》

ダンジョンから帰って来たら、『自称・聖魔士』が店の前に立っていた。自称とはいえ、警戒は必要だ。

「お帰りなさい。せっかく牢から出てきたのにいないから……探したんですよお。なんでダンジョン行くのに置いていったんですかあ。……酷いなあ」
「……なあ。コイツ、なに? マジでキモいんだけど」

目の前の男を無視して、そばにいる守備隊の一人に確認する。

「自称・聖魔士ですよ」
「えー。無視ですかあ? 酷いなあ。せっかく俺が『弟子になってやる』といっているのに」

パアンッという高い音が響くと同時に、ドサッと目の前の地面に黒い物体が落ちた。半死半生の魔物だ。

「……さすが、ですね」

一瞬、声を失ったようだが、虚勢は張れるようだ。

「あんた、『聖魔士くずれ』だな」

私の言葉に一瞬反応を示したが、言葉で返してこなかった。

「エミリア。『聖魔士くずれ』ってなんだ?」

あまり知られていないのは仕方がない。というのも、聖魔士にとって不名誉だからだ。

「聖魔士と聖魔師テイマーの違いは知ってるでしょ?」
「ああ。聖魔が自ら協力するか、頼み込んで一時的に助けてもらうか。……だよな」

そう。その聖魔に妖精も含まれる。そして、妖精たちの協力を得るには『姿が見える』ことが第一だ。
大火災に遭遇し「力を貸してくれ」と頼んで了承してもらい、「全力でチカラをぶつけてくれ」と言ったとしよう。その時に頼んだ妖精が水の妖精なら鎮火するだろう。だが、地の妖精だった場合、土をかぶせて鎮火してくれるか、草花など『燃えるもの』を追加させて火災をさらに広げる。火の妖精だったら大災害確定だ。
ただし大前提として、妖精だけでなく魔物たちだってそばにいなければ、聖魔士は何もできない。
ここでクズな考えを持つものが現れた。討伐中の魔物に『隷属のシルシ』を使うことで『使役』できることに気付いたのだ。

「そして、魔物を使役するクズ共が現れた。その一匹が……目の前のクズだ」
「ヤダなあ。俺は人間ですよー。なんて呼ばないでくださいよお」
「クズは否定しないっと。……で? クズの使役している魔物はこの子だけ? じゃなさそうね。あの表情、まだいるって言ってるわ」
「エミリア。『予定通り』か?」
「うん。大丈夫だと思うけど、よろしくね」
「また俺を無視ですかあ? もう、酷いなあ。せっかく女なんだから俺が愛人にして使ってやろうって思ってやったのに」
「ヴァーカ。この私の足元にも及ばないカスの分際が。だいたい、出来損ないで聖魔師テイマーにもなれない落ちこぼれの底辺が、この私を使なんて思っているの?」
「……キサマなんか、妖精たちがいなければ何もできない……」
「残念でした~。私の聖魔師テイマーの前職は『魔法剣士』。それも、災害クラスの、ね」

そう言いながら、私の前で半死半生のまま黒く焦げて横たわっている魔物に手を掲げる。

『完全回復』
『状態回復』

この二つの魔法をかけると、目の前の魔物が一瞬で元の姿に戻った。

「フハハハハ! おい! その女の腕を噛みちぎ……ギャアアアア‼︎」

私の目の前に立つ四つ足のキマイラは、聖魔士くずれが私に向けて伸ばしていた右腕を噛みちぎると、私に向けて右前足を折り曲げ頭を下げた。その頭を撫でると「グルルルー」と喉を鳴らした。
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