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第八章
第352話
しおりを挟む「エ・ミ・リ・ア。いま一体何をしたのかなー?」
「ノーマン……怖~い」
目の前で行われた『騰蛇への譲渡』。そりゃあ、隊長のノーマンにしてみれば怒る問題だろう。カラになった檻の両隣にいた『うまくいけば自分たちも雇ってもらおう』と考えていた連中に目を向ける。
騰蛇は目的の罪人たち五人をパックンと口に含むと両隣の罪人たちを見て『にまぁ』と笑った。……そう、恐怖心を与えてから地中に戻っていったのだ。両隣が土壁ではなく鉄柵で仕切られているため、目の前で起きたことは十分脅しとなっただろう。
「バカは騰蛇に任せるのが一番」
私が怒っているのを声で気付いたのだろう。ノーマンが小さく息を吐いた。
「奴隷堕ちした分際で、私に何を求めてる? お前たちが罪を犯したのはお前たちの責任、そこに私は関係ない。それとも何だ? 許可なく敷地に入ったのは私のせいだとでも言うのか? お前らに何の権利がある? え? 私は職人だ。レシピの公開は職人の権利。お前らに公開する必要も譲渡する理由もない。それに……そこのお前、私に『販売する権利を全権よこせ』と言ったな。私は商人だ。私が作ったものは私が販売する権利を持っている」
私の言葉でノーマンが檻の中に入って、奥の壁まで逃げた商人の男の腕を掴んで戻ってきた。入り口には鑑定石を持った隊員が待っていて、その鑑定石に男を手を強引に乗せた。
「あ、ああ……」
男から絶望に近い声が漏れる。彼は『同じ商人に迷惑をかけない』という商人ギルドの規約を破ったのだ。商人ギルドからの追放、そして私財の押収。被害者である私と、私が所属する商人ギルドへの慰謝料が借金として表示されていた。
これは二年前から追加された内容だが、同業者に迷惑かけた場合、慰謝料はその相手だけではなくその相手が所属するギルドにも支払うことになった。それも、慰謝料は迷惑をかけた本人だけでなく所属ギルドも支払う。管理不十分という理由からだ。同じギルド同士なら収支がゼロとなるため、ギルドからの慰謝料請求はない。
しかし、相手は私だ。冒険者ギルド以外はほかの大陸のギルドに所属している。それはすなわち慰謝料は四倍になっているのだ。
「慰謝料が物納可でよかったね。それでも四倍だよね。とりあえず優先順位は私と私が所属する商人ギルド。借金は自分が今まで所属していたギルドの分。まあ、それらは駆けつけたギルドの職人と相談するんだね。ああ、私も所属ギルドも1ジルだって負けないから」
絶望真っ只中の男に私の声は聞こえていただろうか?
ただ、すでに檻の中にいる男たちの中には同じく青ざめている者たちもいる。自分で気付けないのは、檻の中にいるときはステータスが使えないからだ。
「ほかの連中も、こうなることがわかっててやったんだよね、奴隷になりたいから。おめでとう。希望どおりに奴隷になれて。で・も、犯罪奴隷はこのダンジョン都市にいられないから。もちろん、私の農園で働くこともできない。そして私と所属ギルドへの慰謝料もありがとうございま~す。どんな物納が届くかな~。あ、そうそう。大陸法違反による慰謝料もありがたくいただきま~す! ……あれ、何で驚いているの? 私は聖魔師なんだけど? つまり、私に絡んだ時点で『テイマーに手をだすな』っていう大陸法を違反してるんだよ」
商人でも職人でも冒険者でもない連中は青ざめている人たちを嘲笑っていたが、彼らの表情から笑いが消えた。ようやく全員が事実にたどり着いたのだろう。自分たちも大陸法違反の犯罪者だと。
「私本人じゃなくても、私が所有する農園に侵入した時点で大陸法違反。つまり皆さん全員仲良く犯罪者。『知らなかったから許される』なんてないからね。大陸法は一律二十年の実刑。おめでとう、私に慰謝料を支払ったら頑張って罪を償ってね~」
さあ、大陸法違反の慰謝料は白大金貨五枚。借金奴隷にならずに二十年後に自由になれるのは何人いるかな~?
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