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第九章
第414話
しおりを挟む「それでは皆さん、魔人ということですか?」
「いいえ、白虎は獣人です」
そして魔人と獣人の説明を始めるピピン。
『自分が知っていることをほかの人が知っているとは限らない』
それは私や他種族と生活して知ったこと。そして書架の本を読んで知識を得た。そのきっかけが、私と初めて会ったダンジョンでのこと。
「私とリリンは、仲間たちに足止めのために放り出されました。もちろん私は魔物ですから、倒すか倒されるかの二者択一です。エミリアは真っ先に攻撃した強い部類に入る仲間を瞬殺しました。そんなエミリアの次の対戦相手に、戦闘経験もない未熟な私たちをだしたのです」
「それでも助かったのは何故ですか?」
「エミリアは、私たちが仲間から捨てられるように出されたのをみています。そして、私はせめてリリンだけでも助けようとエミリアの前にたちました。しゃがんで目線を下げてくれたエミリアは、私に『戦うのか?』と聞きました。それに頷いた私たちにエミリアは突然じゃんけんを始めました」
「じゃんけん……ですか?」
「はい、そしてじゃんけんに勝ったエミリアは、私たちに指を向けて『あっち向いてホイ』と言ったのです。指先をじっとみていた私たちは、指先が横を向いたためつられて横を向いて……負けました」
「それが勝負だということですか?」
メッシュの驚きはギリギリ声にでなかった。さすがベテラン記者である。
「はい、そして負けた私たちに『どこでもいいから逃げなさい』と。敗者は勝者の言うとおりにするもの。だから、エミリアの言うとおりにすることにしました。リリンと相談した結果、『どこでもいいなら、エミリアのところへ逃げてもいいのではないか?』と意見が合いました。もちろん、エミリアに拒否されたら諦めるつもりだったのです」
「エミリアさんは受け入れてくれたのですね?」
「そうです。そして名前を与えていただき、聖魔師となって保護してくださいました」
そのため、二人は私から受けた大きな恩を返したいと望んでいるそうだ。この取材で私たちは同席が許された。ただし、口を挟むのは厳禁。だから、取材を受けるピピンの話を黙って聞き、隣に座るリリンに「そうだったの?」と確認することもできない。ただ、そんな私の様子に気付いたピピンが、こちらをみて優しく微笑んで頷いた。
「私たちはエミリアと同行することで世界が広がりました。もっと、色々なことを知りたいと望んだ私に、エミリアは書架の出入りを許可してくださいました。そこにはたくさんの本があり、私はその本で勉強しました。リリンにはわかりやすく説明するため、私には復習にもなりました。わからないところはエミリアに説明してもらいました」
のちに白虎と妖精たちが加わり、私が精神的な負担から倒れて寝ている間に、講師ピピンと体罰補佐のリリンによって勉強会が開かれていたらしい。
「妖精たちが得た知識は妖精ネットワークによって広がっています。時間はかかりますが、妖精たちは人の常識を身につけ始めています」
「たしかに、庁舎で前から手伝ってくれている妖精たちが変わり始めたと言う話は聞いています」
「聖魔師と契約していなくても情報は共有されます。それによって、いま以上に妖精たちとの関係が変わっていくでしょう。私たちはそんな妖精たちと人との橋渡しになりたいと思っています」
ピピンはそれを魔人化と獣人化になった理由のように話した。事実はあの淀みから『魅了の女神がアゴールの赤ちゃんから大人しく離れるだろうか』と懸念した。そして、『もしも魅了の女神と戦うことになったときに少しでも戦力になりたい』と思ったのが理由だ。
火龍から、自分たちが聖属性を含んでいると教えられたことで、進化する覚悟を決めた。さらに、騰蛇が目覚めに力を貸したことで神属性も帯びることとなった。これは私が聖女としての力を使った場合に『進化に協力したのが神の眷属で、その影響がエミリアにも引き継がれた』と言い訳ができるように、騰蛇たちが考えてくれた口実だった。
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