私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

文字の大きさ
601 / 791
第十一章

第614話

しおりを挟む

3人は周りの手を借りずに人として成長していく。常識から逸脱したときは宿屋の家族から注意や説教を受けてはいるが、彼らも見守るだけだ。
それもエアさんからの助言があったからだ。

そうして3人は冒険者として『はじめての森』にある初心者向けのダンジョンに3人だけで向かえるようになった。武器はアクアとマーレンが魔法剣、マリンが魔法弓と補助魔法。3人は魔法も使えるが「魔法に頼らない戦い方を目指す」と決めている。3人とも得意は水魔法。上位魔法になれば氷魔法で攻撃もできるが、自分たちの治療や回復に使う。さらに水の温度を上げることで熱湯、さらに蒸気で相手を熱風で呼吸困難にして倒す。凍らせて瞬殺したり乾燥すらできる。

「そんな戦い方をしていたら、魔法が効かない魔物とあったら? 魔法が効かないダンジョンもある。エリーが上位種には魔法が効かないどころか、魔法を吸収して強化してしまう魔物もいると教えてくれた。だから武器を使う」

マーレンは短い間だがエアさんに魔法を教わった。そのときに「魔法に頼りすぎてはいけない」と繰り返し注意されたらしい。それを冒険者になることで大切な教えだったと理解した彼の言葉を、双子も素直に従う。

「「なんでー?」」

クセになっていた双子の言葉、それにマーレンは自分の言葉で説明をする。それはエアさんの教え方であり、自身も理由を説明されて納得したからだ。それは実際に目にしている。エアさんに編んでもらった防寒具を建物の中では脱ぐという約束が守られなかったことで彼女は薬学やくがく施設に引きこもった。

ひと月の謹慎後、エアさんに再会して謝罪したマーレンだったが、「言われたから謝った」だったのだろう。それはエアさんにもバレていたようで、ひとつひとつ説明されながら注意された。

マーレンは「なぜ注意をされたのか」を説明されて理解したのだという。そのため、双子に理由を説明して分かってもらう。……俺たちのように「大人の言うことには従うべき」という押し付けは相応しくない。間違いなく俺は家族に反発して家を出たことがあるのだから。


3人を俺たちは見守るだけで手を出さないことにした。もちろん冒険者としては先輩として指導するが、それもマーレンが中心になって指示をする。そんな形で人としても冒険者としてもまっすぐ成長した3人は、間もなくエアさんと再会する予定だった。しかし、あの一瞬の悲劇で3人は延期することに決めた。

「お姉ちゃんは待っててくれる」
「みんなが協力して復興しているのに僕たちが予定通りに海を渡ったら、絶対会ってくれないって」
「今まで会えなかったんだから、あと1年2年遅くなっても……10年後でも会ってくれるよね」

そう決めて、ユージンの分も率先して人々の救助を続けてきた。そして危険を承知で北の国の調査に同行した。その前にアクアとマリンはフィシスたちから、自分たちが水の聖霊と人間とのハーフだと知らされた。そして無限寿命だとも聞かされた。

「だったら私たちがみんなの盾になる!」
「気をつけなさい。無限寿命で死なないといっても仮死になるわ。再生には何千年もかかるのよ」
「かまわない。それでみんなを助けられるなら」
「あんな後悔を繰り返すくらいなら……誰も死んでほしくない!」

下手をしたら危険を承知で庇うだろう。そんな危機感からフィシスたちは俺たちやマーレンにも話した。
真剣な話だったにも関わらず、マーレンは双子と一緒になって笑った。

「大丈夫だよ。僕たちには『お姉ちゃんに会う』という目標がある。軽々しい行動はとらない。……そんなことをしたら、お姉ちゃんが悲しむ」
「そんなことになったら、お姉ちゃんと会えなくなる」
「私たちが寝たら、起きたときにはお姉ちゃんもキッカたちもみんな寿命で死んでる。……エリーだって、今回はお姉ちゃんたちのおかげで死ななかっただけ。いつ起きるかわからないんだから」

マリンのいうとおり、エリーは身体が潰れていたのに生きていた。瀕死で虫の息だったエリーが助かったことは奇跡と言われている。いまはフィシスたちがシメオン国にあるエルフの里に戻した。王都の外では復興で賑やかになっている。エリーが眠る治療院にはココロや身体が傷付いた人が次々と運ばれてくる。エリーが落ち着けないだろう、と心配したフィシスたちがエルフの里と連絡して運んだのだ。

今は意識がない状態で目を開くだけのエリー。そこまで回復したと聞いて俺たちは喜んだ。しかし完全に目が覚めたとしても、ユージンでも分かるとおり身体の機能が完全に回復するまでだいぶ時間がかかるだろう。

……エリーには完全に回復するまで、仲間の死を伝えないことにした。いつまで誤魔化せるだろうか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。