私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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第十二章

第642話

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ムルコルスタ大陸にいるキッカさんたち鉄壁の防衛ディフェンスは、引退しても顧問として名を残すアルマンさんやコルデさんに定期報告をしている。月に1回、最初の頃は週一で彼らは個々で連絡してきていた。いわゆる生存確認だ……彼ら自身の。

その連絡メールの中で引っかかる情報が入っていた。エイドニア王国セイマール地方から干潮時にのみ渡れる、地続きの火山島の噴火に異常が起きているらしい。元々ここは10キロほど大陸から離れた孤島だったのが、長年の噴火で流れた溶岩が冷えて繋がったそうだ。ただし海流に削られ続けるため、干潮で渡れる海の道は海面から50センチ下にあるらしい。

「栄養満点の溶岩だから魚たちのエサにちょうどいいよね~。海にとってもいい栄養が含まれているから、波が世界中に運んでくれるし」
「おい、エミリア? その火山が以前エミリアが言っていた噴火に関することではないのか」
「……たぶん違う」

前兆があるなら神が放置するはずがない。世界全集の記載通りなら、火山は今でも神が管理しているのだ。そうじゃなければ、いくつかの火山島で温泉をメインとした保養地として成り立たないだろう。

「エミリアちゃん、行ったことあるの?」
「あるよ。巨人族、おっきな方の人たちね。その人たちが住んでる島があるの」

彼らが「いやしの水を温泉に使ってもいいか?」と聞いてきたのは、妖精たちと出会う前。ピピンとリリンが一緒に住み始めて、私がある程度起きていられるようになった頃。ピピンが世界全集で温泉地として一番近い島を教えてくれた。使用を許可していた書架に日本の温泉地の雑誌を並べて置いていたので、温泉が身体に良いと気付いたらしい。

普通に飛んでいったら、航路から外れている島に客が来たって大騒ぎになった。

「上を下への大騒ぎでさ、事情を話して療養させてほしいと頼んだらこころよく引き受けてくれたんだ。寝ている間も温浴までしてくれて、それをピピンが覚えてくれて。妖精たちと一緒に暮らすようになっても、私が倒れるとテント内の浴室で温浴療法で世話をしてくれたんだ」

作務衣さむえのような浴衣よくいが用意されていて、それを着て眠っていた私は巨人族の人たちに世話をしてもらった。……目が覚めたときに、8歳の女の子が私をひざ抱っこ状態で温泉に入っていた。目を覚ましたのに気付いて、大切にお姫様抱っこで運ばれた。長めの眠りから目覚めてもリハビリが必要になる。それがリハビリも兼ねた温浴で、多少の違和感が残ったものの普通の生活に戻れた。

「ただ寝かせるだけより、ハーブを浮かべた風呂で温浴する方が身体の回復にいいと教わりました」
「私も色んな植物を分けてもらって、テントの温室で育てたんだよ」

リリンは本当にたくさん勉強していた。ひとえにハーブと言ってもたくさんの種類があり、用途や効能も多岐に渡る。のんで効くものから温度に弱いもの、温浴に使えるものまで。

本にしてたくさんの人に知ってもらえないかとポンタくんに相談したら、まずレポートにしてほしいと言われた。ピピンの協力の元、妖精たちにも手伝ってもらいながら知り得たハーブの知識をレポートにまとめ、植物を記録した魔導具も一緒にポンタくんに送った。

ポンタくんはその情報の多さに目を回し、希少性の高いハーブが含まれていたことに気付き、泡を吹いてひっくり返ったそうだ。

「すでに存在が伝説化した薬草まで……!!!」
「薬草じゃあな~い、のぉ。ハーブ、よぉ~」

まだ上手く喋ることができなかったリリンだったが、一生懸命に自分だけではなくピピンや妖精たちの協力でレポートにできたこと。さらには自分は教わっただけで本当に評価されないといけないのは巨人族の人たちだ、と訴えた。

「それではその巨人族の皆さんからも許可をいただきます」

……これが巨人族の人たちに向けられてきた今までの評価が驚くほど大逆転した。隠れ住んでいた彼らは、今ではこの本のが有名になったことで知識の高さが認められで有名になった。その本を知っている人から巨人族に対しての差別意識は薄くなった。まあ……最初は大きい身体に驚かれているが。

温浴や浴衣よくいが知られて共同浴場や露天風呂で採用されると、温浴療法による治療も用いられるようになった。治療院でもハーブを使った温浴療法で、リハビリの期間が短くなった。
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