私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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最終章

第741話

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「あ~ら。思ってたより遅かったわね~」

王都の前で余裕をみせるのは……あの公開処刑でみたエイドニア王国の前国王エルフレッド。声は女性、多分ナナシだろう。

「キモいな」

そりゃあそうだろう。裾や袖口がほつれてボロボロの格好に、裾が縦に裂けたボロのマント。見かけは草臥くたびれた男で、声は若い女性。顔が女性的でも中性でもイケメンでもない男が、『麗しい女性の声』なのだ。

「差別しちゃあイカンのだろうけどさ。あわねーな、その顔と声」
「なんだとぉ!」

おや、今度は男の声。

「今のは前王の……?」
「へええ。こんな声だったんだ」
「知らないの?」
「知らん」
「キッカやエリーたちしか見たことないだろ」

それは仕方がない。日本のように映像によって身近に感じることはなく、生活基準は城の中。生まれたときから城の中で大事に大事に飼われている珍獣は、何かあればお城のテラスからヘラヘラ笑って手を振っているだけの……

物の怪モノノケ
「誰がだ‼︎」
「「「お前がだ!」」」

前王の異議に即時、多数が反論した。
息をのんだのは、そんな言葉を言われたことがないからか。しかし、仕方がない。だって

不死人しなずびとは人外生命体だもんね」
「ぐぬぬぬぬ……」

言い返したくとも言い返せないのだろう。自分が不死人しなずびとになるまでは自分もずっとそう見下してきたのだから。
私たちが前王を挑発しているのには理由がある。

「身体のぬしが前面に出ていたら、ナナシは表に出られないのか。2人同時に表に出ていられるのか。口から発することで声となるのか」

3番目の問題は2番目の補足だ。声は基本、声帯を震わせて口から出てくる。前王が口から話し、ナナシは念話で同時に話すことがあるのか。それを確認したいのだ。

《 もしも片方しか表に出られないなら、魔法も攻撃も一人分しか使えないってことになる 》

2人同時に攻撃があるのか、交互にしか攻撃できないのか。

「それでも……絶対『ごめんなさい』させてやる!」

もちろん前王の身体は不死だ。実は、レイモンドが自身の身体を提供した実験によって、どの魔法や属性が効果をみせるのか。ある程度は分かっているつもりだ。

「不死と言っているが、魂は疲労が蓄積すれば消滅もありうるのだな」
「その際は、腐乱しない肉体が残されるけどな」

ナナシが狙っているのは、その残されるであろう肉体を自分の器にすること。

「親父は俺に任せてくれ。……不死人しなずびとにして苦しめた責任は俺がもつ」

私たちにとって、不死人しなずびとへの攻撃は神による処罰の対象だ。

「別に異世界出身者の私なら処罰対象外じゃない? この世界の神は私に土下座して謝罪しなくてはいけない側なんだし」
「たとえそうであっても。俺にさせてください」

アルマンさんがセイマールで弟王とをしても処罰がつかなかったときと同様、愚息レイモンド前王エルフレッドの一騎打ちは『親子喧嘩』となるだろう。

「愚息無視の分際で」
「具足虫だろ」
「ダンゴムシ」

私とダイバの言葉にレイモンドの目が死んだ。

「愚息無視……。そうですね」

遠くを見るような目になったレイモンドが目を閉じて大きく息を吐くと、ゆっくりと目蓋をあげる。

「俺と父はろくに話したことはない。放任主義、なんてカッコイイものではない。出来の良い兄貴がいたから、不出来な俺に興味はなかった。それだけだ」
「そうして放置した結果。違法召喚に手を出して、親子仲良く不死人しなずびとの罰」

あ……落ち込んだ。
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