私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル

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最終章

第740話

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私たちがナナシを追い詰めたのは、グモール国の王都。
ここの噴水のモニュメントには、かつて巨大な水晶が安置されていた。水晶にはナナシの魔力が封じられていた。その価値を知らない王子が傲慢な発言をしたことで、このグモール国を守ってきた地の妖精たちを怒らせた。その結果、水晶は騰蛇に献上されている。

《 この、闇にまみれる前の魔力を我が浄火によって清め、大地の回復に使わせてもらおう 》

騰蛇は同調術を使っても、私以外、たとえダイバであっても一緒にいるときは妖精たちを介して会話をする。『神の眷属』であるため、直接の会話は相手にとって《 脳内を轟音で破壊する行為 》らしい。私は妖精たちと契約しているため影響はなく、普通に会話が可能だ。騰蛇にとっては、機織り女アラクネと妖精たち以外で普通に話ができる貴重つ希少な存在のため、私の肩をもってくれている。

そして女神だった頃のナナシを知っている騰蛇に私は……女神の特定を済ましている。

騰蛇の回答は《 なぜ、その名を? 》だった。すでにその名は奪われた失われたため、どんな記録にも残されていない。

「私の世界では名前は残っているから」
《 そうか 》

静かにそう返す声。それがこの世界ではタブーの名前があっているという騰蛇の答え。

「ねえ、騰蛇。これってナナシが保有していた魔力の何割?」

騰蛇が時間をかけて浄火している、ナナシの魔力。以前見たときは全体的に『毒々しい黒と濃紺の混ぜ合わさった色』だった。それが天辺に向かって明るい紺色へとグラデーションになっている。突端からは小さな光球が昇っていく。あの光球が大地を回復させていく魔力だ。

「ナナシに戻ることは?」
《 それはありえない 》

神の魔力にも属性があり、火の神に属する眷属の魔力で燃やしたことでナナシの魔力と違う属性になったそうだ。騰蛇の浄火を通して濾過ろかしたことで、ナナシの属性を排除したらしい。

《 そうだな。7割以上8割未満、ってとこだろう 》
「ナナシの魔力を完全に吸い取ったわけじゃないんだね」

それを言い換えれば、女神だった頃のナナシは魔力が多かったといえる。
そんな騰蛇かとの会話を思い返して一歩立ち止まる。大地を覆う植物がまるで結界の境界みたいに一線が引かれて、これ以上先に植物が生えないように区切られている。

「これは……」
《 昨日からだよ 》

この地で異常を確認していた地の妖精たちが、木の上から次々降りてきて報告してくれる。……やはり、『ナナシinエルフレッド』はグモール国内の魔力を吸い取っているようだ。
アラクネの服を着ていない妖精たちにはエイドニア王国まで移動してもらう。

《 エミリア様、そして信者の皆様。無事の帰還をお祈りしています 》
「ありがとう。エイドニア王国の王都にある『聖女様のびょう』に残っている妖精たちがいるからね」
《 はい 》
《 みんなー、移動するよー 》

妖精たちは何度も何度も振り返りながら、それでもここで出来ることがないこともわかっているため去っていく。聖女様の廟、そして私が各国に送ったお堂や仏像に祈りを捧げてくれるそうだ。

「それがエミリアや私たちを強化してくれます」
《 分かりました。各国の妖精たちは一緒に祈りを捧げましょう 》

ピピンの言葉は多分正しい。信仰がその対象者を強くする。それが私たちの『かくし玉』だ。

グモール国の国境を越える前に、大きく深呼吸をする。そして一歩、踏み出した。
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