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【第36話/85日目】 恋の答えは、身体に聞いても出ない
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夜。
雨音の混ざる静かな部屋で、私はひとり、布団の中にいた。
遥香の唇の感触も、悠真の手のひらのあたたかさも、まだ身体の奥に残っていた。
でも――どちらも、決定的な“答え”にはならなかった。
キスじゃ、わからなかった。
抱きしめられても、何も確信にはならなかった。
あの一瞬で息が止まりそうになって、
胸の奥が熱くなって、
なのに、その熱はすぐに消えてしまった。
それはきっと、
“ときめき”と“愛されている”は、まったく別のものだから。
「愛されて、満たされたときに呪いは解ける」
最初に聞いたときは、
それが“誰かに触れられること”だと思っていた。
けれど、違った。
身体が震えるのは、
皮膚の反応じゃなくて、
“心”が揺れたときにだけ、訪れるものだった。
(……私は、ほんとうに“誰か”を選べるのかな)
遥香のまっすぐさも、
悠真の優しさも、
どちらも欲しかった。
どちらにも、すがりたかった。
でも、“愛される”ってことは、
“誰かひとりに、自分を全部ゆだねる”ということなんだ。
中途半端に手を伸ばすだけでは、
その手に“愛”は宿らない。
(……じゃあ、私は誰の前で、いちばん素直になれる?)
雨音が、時計の秒針のようにリズムを刻んでいく。
迷いはまだ消えない。
でも、少しずつ確かになってきている。
“選ばなきゃいけない”からじゃない。
“選びたい”と思える誰かが、ちゃんとそこにいるから。
──85日目。恋の答えは、触れられた場所じゃなく、心の奥にしかない。
雨音の混ざる静かな部屋で、私はひとり、布団の中にいた。
遥香の唇の感触も、悠真の手のひらのあたたかさも、まだ身体の奥に残っていた。
でも――どちらも、決定的な“答え”にはならなかった。
キスじゃ、わからなかった。
抱きしめられても、何も確信にはならなかった。
あの一瞬で息が止まりそうになって、
胸の奥が熱くなって、
なのに、その熱はすぐに消えてしまった。
それはきっと、
“ときめき”と“愛されている”は、まったく別のものだから。
「愛されて、満たされたときに呪いは解ける」
最初に聞いたときは、
それが“誰かに触れられること”だと思っていた。
けれど、違った。
身体が震えるのは、
皮膚の反応じゃなくて、
“心”が揺れたときにだけ、訪れるものだった。
(……私は、ほんとうに“誰か”を選べるのかな)
遥香のまっすぐさも、
悠真の優しさも、
どちらも欲しかった。
どちらにも、すがりたかった。
でも、“愛される”ってことは、
“誰かひとりに、自分を全部ゆだねる”ということなんだ。
中途半端に手を伸ばすだけでは、
その手に“愛”は宿らない。
(……じゃあ、私は誰の前で、いちばん素直になれる?)
雨音が、時計の秒針のようにリズムを刻んでいく。
迷いはまだ消えない。
でも、少しずつ確かになってきている。
“選ばなきゃいけない”からじゃない。
“選びたい”と思える誰かが、ちゃんとそこにいるから。
──85日目。恋の答えは、触れられた場所じゃなく、心の奥にしかない。
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