76 / 80
高校生編
二十(2026、冬)
しおりを挟む
「あきら……いいよ、ぜんぶ、のんで」
樹は、囁いた。彼の首筋の血管に沿ってやはり肌は赤らみ、ひび割れのように血の流れが光を発していた。既に樹のうちにある晶の血液が、彼を異物として攻撃しようとしているのだった。
全部。
そう、全部――飲んでしまえば……
全部、自分のものにしてしまえば、もう、この苦しみを、味わわなくていい……
鋭く歯を立てたとき、樹は抵抗しなかった。樹の、血――どくどくと音を立てる生命のめぐりが直接口に流れ込む。
(あつい……)
いつも通り、その血は濃く甘かったが、どこか苦く舌に沁みるような塩辛さがあった。――そう、涙のように……
傷つけたいと思ったことなど、今まで一度たりともなかったのに、今、腕の中に樹を抱きしめながら、晶は初めて心の底から願った。傷つけばいい、痛みを感じればいい、自分が負ったのと同じ傷を、おまえも負えばいい――その思いは止めようもなく晶を揺さぶり、晶は血を飲み下しながら泣いていた。
おまえも、悲しめばいい――
そう思ったときだった。
殴られたような衝撃とともに、感情が、直接流れ込んできた……
その感情は海のように満ち、波打ち、身体を浸して呼吸を奪った。
「あ……」
震える手で、樹の背に爪を立てた。溺れるものがすがるように――
(かなしい)
圧倒的な闇、何も見えなくなるほどの、思い――
(あきら、なくの、かなしい……)
なかないで。
かなしい。
おれが。
おれがなかせた。
わかってた。
あきらをなかせる、わかってた、のに。
「い、いつき――」
いやだ、
あきらをなかせるおれは、
――きらいだ。
いなければ、いい。
こんなに、かなしいくらいなら、
なかせるくらいなら、
――樹は、泣いていた――
いないほうがいい。
「あきらぁ……」
樹は、ふっと耳元に息を吐き、重たい頭を肩にもたせかけた。「あきら、すき……」
「……いつき、――」
唇を首筋から離し、呻くように、晶は囁いた。
「樹――」
涙が溢れ、温かく頬を濡らした。
「ごめん。ごめん――いつき、ごめん」
「ん……?」
「お、おまえが、悲しいの……知らなくて……わかってなくて……わかってやれなくて、ごめん……」
「ん」
「い、いなくならないで」
肩を震わせて、晶は啜り泣いた。
「おまえが、いないのは嫌だ。お願いだから、いなくならないで――」
樹の火は、闇の中で揺らめき、はかなくきらめいた。そう、危険なまでに、晶は既に樹の血液を飲み干そうとしていたのだ。
「飲んで、樹――おまえも」
晶は、変化させた爪先で自らの首筋を切り開いた。血液が輝きながら溢れ、鎖骨のくぼみに溜まる。樹が唇をつけ、啜った。そのまま傷に口を当て、喉を鳴らして飲み下す。
「もっと、飲んで、樹……」
自らも樹の首筋に舌を這わせながら、晶は囁いた。
「ん……いいの、あきら。おえがいても。あきら、なくのに……」
「おまえがいないほうが、嫌なんだよ」
樹が首筋を吸うたびに、身体の底から喜びが湧き上がる。晶は、樹の芹のような香りのうなじに自分の頬を擦り付けた。
(温かい――)
樹の炎が強く大きくなるのが、嬉しい。
「あきらも、もっとのんで……」
「うん……」
癒えつつある傷を、再度晶は開いたが、今度のそれは傷つけるためではなく、愛撫のような口づけだった。樹は深くため息をつき、身体の重みを晶に預けてきた。
立ち尽くし、抱き合ったまま、何めぐりしたか分からないほどに互いの血液を交換しあう。闇の中に燃える火は温かく熱く、溶けるように柔らかかった。
唇を首筋につけたまま、晶は囁いた。
「俺といてよ……いなくならないで。ずっと……」
樹は、首筋に口づけ、ついで晶の顔を持ち上げると、唇を合わせた。
「いるよ、おれ、ずっと」
樹の唇は温かく甘く、晶はため息をついて目を開けた。
睫毛が触れるほど近くに、樹の瞳があった。僅かな紗がその虹彩を過ったとき、七色の光がぶつかり合い、溶け合いながら燃えた。
「いつき――おまえの、眼」
唇を触れ合わせながら、彼は囁いた。「綺麗……」
「あきらも」
ふっと彼は微笑み、その息を、晶は舌先に味わった……「きれい。にじのいろ」
二人は、七色の瞳で見つめ合いながら、微笑み、もう一度口づけを交わしあった。
*
ふと、樹が顔を上げた。
「ピアノ」
「え?」
「だれか、ひいてる」
耳を澄ますと、微かに、確かに晶にも聞こえた……
「公会堂の多目的ホールかな……誰か、いるんだ」
そのとき、階段を降りてくる足音がした。振り返ると、それは友人たちだった。
「よかった……生きてた」
崇は開口一番そう言った。
「スマホ、壊れたんじゃない? 鳴らしても圏外になるわよ」
紫穂がほっと息をついた。
「たかし、しほ、きた」
「心配したのよ」
「夜蟲だらけだっただろ――窓から入ったの?」
「図書館側はあんまりいなかったぜ。それより――」
崇は、公会堂の方に顎をしゃくった。隣接する公会堂とは、渡り廊下でつながっている。
「誰か、ピアノを弾いてる」
「俺たちも、今気づいたんだ。――行ってみる?」
少年たちは顔を見合わせた。
静かに、ぽつりぽつりと聞こえてくるピアノ――そのメロディは、パッヘルベルの「カノン」だった。
樹は、囁いた。彼の首筋の血管に沿ってやはり肌は赤らみ、ひび割れのように血の流れが光を発していた。既に樹のうちにある晶の血液が、彼を異物として攻撃しようとしているのだった。
全部。
そう、全部――飲んでしまえば……
全部、自分のものにしてしまえば、もう、この苦しみを、味わわなくていい……
鋭く歯を立てたとき、樹は抵抗しなかった。樹の、血――どくどくと音を立てる生命のめぐりが直接口に流れ込む。
(あつい……)
いつも通り、その血は濃く甘かったが、どこか苦く舌に沁みるような塩辛さがあった。――そう、涙のように……
傷つけたいと思ったことなど、今まで一度たりともなかったのに、今、腕の中に樹を抱きしめながら、晶は初めて心の底から願った。傷つけばいい、痛みを感じればいい、自分が負ったのと同じ傷を、おまえも負えばいい――その思いは止めようもなく晶を揺さぶり、晶は血を飲み下しながら泣いていた。
おまえも、悲しめばいい――
そう思ったときだった。
殴られたような衝撃とともに、感情が、直接流れ込んできた……
その感情は海のように満ち、波打ち、身体を浸して呼吸を奪った。
「あ……」
震える手で、樹の背に爪を立てた。溺れるものがすがるように――
(かなしい)
圧倒的な闇、何も見えなくなるほどの、思い――
(あきら、なくの、かなしい……)
なかないで。
かなしい。
おれが。
おれがなかせた。
わかってた。
あきらをなかせる、わかってた、のに。
「い、いつき――」
いやだ、
あきらをなかせるおれは、
――きらいだ。
いなければ、いい。
こんなに、かなしいくらいなら、
なかせるくらいなら、
――樹は、泣いていた――
いないほうがいい。
「あきらぁ……」
樹は、ふっと耳元に息を吐き、重たい頭を肩にもたせかけた。「あきら、すき……」
「……いつき、――」
唇を首筋から離し、呻くように、晶は囁いた。
「樹――」
涙が溢れ、温かく頬を濡らした。
「ごめん。ごめん――いつき、ごめん」
「ん……?」
「お、おまえが、悲しいの……知らなくて……わかってなくて……わかってやれなくて、ごめん……」
「ん」
「い、いなくならないで」
肩を震わせて、晶は啜り泣いた。
「おまえが、いないのは嫌だ。お願いだから、いなくならないで――」
樹の火は、闇の中で揺らめき、はかなくきらめいた。そう、危険なまでに、晶は既に樹の血液を飲み干そうとしていたのだ。
「飲んで、樹――おまえも」
晶は、変化させた爪先で自らの首筋を切り開いた。血液が輝きながら溢れ、鎖骨のくぼみに溜まる。樹が唇をつけ、啜った。そのまま傷に口を当て、喉を鳴らして飲み下す。
「もっと、飲んで、樹……」
自らも樹の首筋に舌を這わせながら、晶は囁いた。
「ん……いいの、あきら。おえがいても。あきら、なくのに……」
「おまえがいないほうが、嫌なんだよ」
樹が首筋を吸うたびに、身体の底から喜びが湧き上がる。晶は、樹の芹のような香りのうなじに自分の頬を擦り付けた。
(温かい――)
樹の炎が強く大きくなるのが、嬉しい。
「あきらも、もっとのんで……」
「うん……」
癒えつつある傷を、再度晶は開いたが、今度のそれは傷つけるためではなく、愛撫のような口づけだった。樹は深くため息をつき、身体の重みを晶に預けてきた。
立ち尽くし、抱き合ったまま、何めぐりしたか分からないほどに互いの血液を交換しあう。闇の中に燃える火は温かく熱く、溶けるように柔らかかった。
唇を首筋につけたまま、晶は囁いた。
「俺といてよ……いなくならないで。ずっと……」
樹は、首筋に口づけ、ついで晶の顔を持ち上げると、唇を合わせた。
「いるよ、おれ、ずっと」
樹の唇は温かく甘く、晶はため息をついて目を開けた。
睫毛が触れるほど近くに、樹の瞳があった。僅かな紗がその虹彩を過ったとき、七色の光がぶつかり合い、溶け合いながら燃えた。
「いつき――おまえの、眼」
唇を触れ合わせながら、彼は囁いた。「綺麗……」
「あきらも」
ふっと彼は微笑み、その息を、晶は舌先に味わった……「きれい。にじのいろ」
二人は、七色の瞳で見つめ合いながら、微笑み、もう一度口づけを交わしあった。
*
ふと、樹が顔を上げた。
「ピアノ」
「え?」
「だれか、ひいてる」
耳を澄ますと、微かに、確かに晶にも聞こえた……
「公会堂の多目的ホールかな……誰か、いるんだ」
そのとき、階段を降りてくる足音がした。振り返ると、それは友人たちだった。
「よかった……生きてた」
崇は開口一番そう言った。
「スマホ、壊れたんじゃない? 鳴らしても圏外になるわよ」
紫穂がほっと息をついた。
「たかし、しほ、きた」
「心配したのよ」
「夜蟲だらけだっただろ――窓から入ったの?」
「図書館側はあんまりいなかったぜ。それより――」
崇は、公会堂の方に顎をしゃくった。隣接する公会堂とは、渡り廊下でつながっている。
「誰か、ピアノを弾いてる」
「俺たちも、今気づいたんだ。――行ってみる?」
少年たちは顔を見合わせた。
静かに、ぽつりぽつりと聞こえてくるピアノ――そのメロディは、パッヘルベルの「カノン」だった。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる