SWEEP

夢野なつ

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ヘルゼルの告白

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 はじめ、俺の問いにヘルは答えようとしなかった。じっとうつむき、俺が諦めるのを待っているようだった。だが俺は辛抱強く待った。この答えを聞かなければ、カンナの奴ときちんと向き合えない気がしたからだ。
 やがて根負けしたヘルは、何を言っても言い訳だけど、と前置きした上でこう言った。
「忘れられてると……思ったんだ」
「カンナが、お前の事を?」
 今の執心ぶりを見れば信じられない仮定だ。
「カンナくんが中央を離れて、長い時間が経って……ほら、地区が変わったら通信も禁止されるし、状況が分からなくて」
 やっぱり言い訳だよね、ごめんねと謝るヘルゼル。本当に謝罪したい相手はカンナなんだろうが、今悲しげな顔を向けている対象は俺だ。
「……待ち切れなくなる気持ちは、分からないでもないさ。ただ、そこまで申し訳無いと思ってるんだったら、今度奴に直接的言ってみな」
「……そうだね。それが、いいよね」
「ああ。あいつも大人だ、言えば聞くだろ。その代わり」
「その代わり?」
「改めてスカウトされても、きっちり断れよ」
 俺は真面目に言ったつもりなのに、笑われてしまった。まあいい。こんな些細な事でヘルが和んでくれるなら。
「……昔から思ってたし、今でも変わらない。デシレと俺と、カンナくんと、3人で仕事できたらなって。それなら一番楽しいのにって」
「なるほど、な」
「でもね、駄目だった。中央でもう一度カンナくんと会った時、隣には、ビスさんが居た。ビスさんは俺の事嫌いだから……どうしてだろう?」
「出会った時から嫌われてたのか?」
「うん……そうみたい」
 不思議な話だ、と俺は首をかしげる。今まで何も話さないからてっきり、俺の知らぬ間にビスの前で、無邪気ゆえの無作法でも働いていたのかと思っていた。
 老い去ったと思い込んでいた俺の中の好奇心が、疼く。
 カンナへのメールを打ち直す。ケーキのくだりは全消去して、こう書いた。
『話がある。ヘルはお前に。俺はビスに。近いうちに頼む』
 俺はこの文面を一瞬だけヘルに見せ、同意も取らずに送信ボタンをタップする。ヘルは混乱しているように見えた。そりゃそうか。
「え……え? デシレ、ビスさんと何話すの?」
「大人の話だよ」
 俺がくくっと笑うと、ヘルはふくれっ面をしてこう不満を漏らす。
「俺だって大人だよ」
「そうは見えないけどな?」
「あー、もう! 嫌い!」
 じたばた地団駄を踏む姿が面白すぎて、もっともっとからかいたくなる。
 だが、このくらいにしておこう。
「じゃあ、約束を取り付けられたら日付を教えるから。お前もカンナと、水入らずの話でもしてこいよ。あと、『ごめんなさい』な」
「――うん!」
 そう応えるヘルゼルの顔は、しっかり前を向いていた。
 見習うべき姿勢だ。
 俺もビスに、色々と聞かなければならない事ができたのだし、気合をいれねばならない。
「最凶……か」
 ビスの二つ名を思い出すと、毎度毎度寒気がするのは俺だけだろうか?
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