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出島ライン
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「それで三人とも殺してきたのか、あんたら。仕事が早いね」
伊勢が運転するグレーの軽乗用車で、千里ら復讐者は九州を離れようとしていた。出島ラインの基地があった場所に、千里が異能で暗闇を生む種を撒き、あとは明日の『夜明け』を待つのみだ。九州に日の出は訪れない。
「死んだのはひとりだよ。もうひとり勝手に死ぬかもしれないけど」
「幾兎くん、はしゃいでるの? 声が随分楽しそうだわ」
「うーん、どうでしょうね。でもこれから僕たちは、人をいっぱい殺して殺して、この道を進んでいくわけじゃないですか。だから、こういう話も明るいトーンでできないとやっていけない気がするんです」
「それがお前さんの処世術ってわけか。ため息が出るね」
沼斑が凝った首を回してガチガチ音を立てる。幾兎らが戦っている間、沼斑と伊勢はセーフハウスで待機していたが、思いの外早く帰ってきた千里と幾兎の手際の良さに背筋がひやっとした。
管理省はもっと、このふたりの確保に躍起になってもいいのではないだろうか、と危ぶむほどだ。
「それで、次はどこに?」
「出雲に防衛ラインがあるから、一気にそこを目指すわ。伊勢さん、運転よろしくね」
「重労働、ゴチになります、ってやつね。はいはい」
だんだん暮れていく薄紅の空を追い越しながら、四人は行く。
日本全土に死と眠りをもたらす旅路は、まだ始まったばかりだ。
「出島が落ちましたか」
管理省の司令室で報告を受け、瀧が興味なさげに呟いた。
「瀧大臣、これも計画通り、ってわけですか?」
「暗条くんの提案を突っぱねていたわりには、随分怪訝な声で質問するんだね、山内くん」
「能面は黙ってろ」
のっぺり笑顔を顔に貼り付けた川田が、何のことやら、という風な素知らぬ顔をする。
「仲良くしなさいとは言わないが、もう少し静かにコミュニケーションを取りたまえ。ああ、それと……」
日本の一大事を引き受けたというのに、そして作戦の第一陣が崩れ去ったというのに、瀧は実に悠々と話を続ける。
「ネズミが二匹ほどうろついているようですね、イザナミとスサノオのそばに」
「と言いますと?」
「裏切り者ですよ、端的に言うと。沼島の研究所から消えた人間がいる」
皮肉なほど仲良くざわついた山内と川田。知らされていない情報だったようだ。
「大したことじゃない。落ち着きなさい。防衛ライン一本分にも満たない些事です」
「それは、奴らに情報などが筒抜けになるのでは? あ、いや……申し訳ありません、大臣」
「君の懸念はわかります。だが、必要以上に焦ったところでいい結果は得られない。粛々と任務を進めていれば、結果は追いついてくる。こういった事態であれ、必ずね」
場違いにニヤリ、と瀧が笑ったことに、山内と川田はついぞ気づかなかった。
出島ライン 終
伊勢が運転するグレーの軽乗用車で、千里ら復讐者は九州を離れようとしていた。出島ラインの基地があった場所に、千里が異能で暗闇を生む種を撒き、あとは明日の『夜明け』を待つのみだ。九州に日の出は訪れない。
「死んだのはひとりだよ。もうひとり勝手に死ぬかもしれないけど」
「幾兎くん、はしゃいでるの? 声が随分楽しそうだわ」
「うーん、どうでしょうね。でもこれから僕たちは、人をいっぱい殺して殺して、この道を進んでいくわけじゃないですか。だから、こういう話も明るいトーンでできないとやっていけない気がするんです」
「それがお前さんの処世術ってわけか。ため息が出るね」
沼斑が凝った首を回してガチガチ音を立てる。幾兎らが戦っている間、沼斑と伊勢はセーフハウスで待機していたが、思いの外早く帰ってきた千里と幾兎の手際の良さに背筋がひやっとした。
管理省はもっと、このふたりの確保に躍起になってもいいのではないだろうか、と危ぶむほどだ。
「それで、次はどこに?」
「出雲に防衛ラインがあるから、一気にそこを目指すわ。伊勢さん、運転よろしくね」
「重労働、ゴチになります、ってやつね。はいはい」
だんだん暮れていく薄紅の空を追い越しながら、四人は行く。
日本全土に死と眠りをもたらす旅路は、まだ始まったばかりだ。
「出島が落ちましたか」
管理省の司令室で報告を受け、瀧が興味なさげに呟いた。
「瀧大臣、これも計画通り、ってわけですか?」
「暗条くんの提案を突っぱねていたわりには、随分怪訝な声で質問するんだね、山内くん」
「能面は黙ってろ」
のっぺり笑顔を顔に貼り付けた川田が、何のことやら、という風な素知らぬ顔をする。
「仲良くしなさいとは言わないが、もう少し静かにコミュニケーションを取りたまえ。ああ、それと……」
日本の一大事を引き受けたというのに、そして作戦の第一陣が崩れ去ったというのに、瀧は実に悠々と話を続ける。
「ネズミが二匹ほどうろついているようですね、イザナミとスサノオのそばに」
「と言いますと?」
「裏切り者ですよ、端的に言うと。沼島の研究所から消えた人間がいる」
皮肉なほど仲良くざわついた山内と川田。知らされていない情報だったようだ。
「大したことじゃない。落ち着きなさい。防衛ライン一本分にも満たない些事です」
「それは、奴らに情報などが筒抜けになるのでは? あ、いや……申し訳ありません、大臣」
「君の懸念はわかります。だが、必要以上に焦ったところでいい結果は得られない。粛々と任務を進めていれば、結果は追いついてくる。こういった事態であれ、必ずね」
場違いにニヤリ、と瀧が笑ったことに、山内と川田はついぞ気づかなかった。
出島ライン 終
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