神子創造逸文外典

夢野なつ

文字の大きさ
16 / 18
出雲ライン

ふたりの指揮官

しおりを挟む
 九州地方全域が、沖縄の時と同じ常闇の災に見舞われたことにより、ただでさえどよめいていた日本国民は大きなパニックに陥った。国や専門家によるろくな説明もなされず、自分たちの住む国がおかしくなっていく。明日は我が身かと、恐怖に震えない方が無理というものだ。
 瀧の指示に従った政府は、国民に避難誘導を行うことになった。闇の帳の対象地域が日本国内に限られているのでは、と勝手に妄想して報道したマスコミの影響は国民を騒がせ、結局避難民のうち多くは中国や韓国といった距離の近い諸外国へ移送された。が、そもそもこの問題が急に発生した異常現象である上、謎の災害が自国へ飛び火することを恐れた諸外国の受け入れ体制は決して寛大ではなかった。国外へ逃げることができた者はわずかで、あとの者は列島の北方面に避難して、その場しのぎの対応に歯噛みすることとなった。
 そんな混沌の地と化した日本を救うべき存在、神子が守る第二の防衛ライン・出雲では――。

「降りたきゃ降りてもいいよ~。責任感のない神子として一生後ろ指差されるけどね」
「降りるべきは君の方だ。君のようなイカサマまがいのあくどい手段でイザナミたちを倒しても、それこそ生涯陰口を叩かれるんじゃないか?」
 不幸なことに出雲ラインのメンバー内では、致命的なまでの異能相性の悪さが露呈している。いや、相性が悪いというよりも、役目がかぶっているという方がはっきりしている。
「メンツにこだわって実力を軽視するのが年の功かぁ? 先輩様は違うね」
「小町のオウムは黙ってろっす! どう考えても四万十しまんとさんが指揮を取った方が、いいプランが組めるに違いないっすよ!」
 四人で構成されている出雲ラインの現状は、完全な対立状態にある。
 そもそものリーダーであり、出雲ラインで一番先輩の四万十さとると、彼を信望する若手神子、早手翔太郎。このふたりは持ち前の潔癖とも言える正義感の強さゆえ、正々堂々と千里たちを迎撃することを提案している。
 一方のサブリーダー、四万十から二年遅れて補導された北小町と、早手と同期の少々意地悪い正確をした神子、赤井ぐまのグループは、出島ラインの構成員が各個撃破された報告を受け、今のうちに出雲ラインの管轄全域に監視網を敷き、不意打ちや囲い込みで千里らを撃破する作戦を立ち上げた。譲るつもりはこれっぽっちもない。
 力を合わせるべき防衛ライン内部で分裂が起きていることが嘆かわしいのはもちろんのこと、最悪なのが先にも述べた役目の重複だ。異能は与えられるものであり、神子は自分の力を選ぶことはできない。四万十と北は、傾向こそ正反対だがどちらも指揮官適正の高い異能を所持している。
 四万十の異能は前線メンバーの身体能力向上を、北の異能は敵の撹乱や現在位置の把握など妨害行為を行うものだ。一応、ツートップの形で別々の仕事ができそうな気もするのだが、それを採用しようと指導員が議論を誘導してみても、今度はどちらが上に立って現場指揮を執るかで揉めてしまう。もはや喧嘩するために会議していると言われても文句の言えない出雲の面々である。
「出島が落ちた時刻から逆算して、イザナミとスサノオがこちらに到着するのもあと二時間、といったところだ。それまでに君たち、僕の命令に従う準備をしておきたまえ」
「あ~らら、大口叩いちゃってかっこ悪い。はいはいわかりました、あなたの言いたいことはね。僕チンの正義が一番強くてかっこいいんでしょ? でもね、覚えておきなさい。この戦いは早めに勝たなきゃ被害がどんどん拡大する時間勝負の案件なの。この出雲で奴らを食い止められなければ、日本の三分の一くらいが闇に沈むってこと、自覚してよね」
「だからこそ君たちの協力がだな……」
「うるせえよ、先輩」
「赤井!」
「ちっ」
 噛み合わずまともに終わらない会議の様子を、部屋の隅で壁に寄りかかった姿勢で――日本中に偏在する瀧大臣が静かに不気味に眺めている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...