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出雲ライン
ふたりの指揮官
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九州地方全域が、沖縄の時と同じ常闇の災に見舞われたことにより、ただでさえどよめいていた日本国民は大きなパニックに陥った。国や専門家によるろくな説明もなされず、自分たちの住む国がおかしくなっていく。明日は我が身かと、恐怖に震えない方が無理というものだ。
瀧の指示に従った政府は、国民に避難誘導を行うことになった。闇の帳の対象地域が日本国内に限られているのでは、と勝手に妄想して報道したマスコミの影響は国民を騒がせ、結局避難民のうち多くは中国や韓国といった距離の近い諸外国へ移送された。が、そもそもこの問題が急に発生した異常現象である上、謎の災害が自国へ飛び火することを恐れた諸外国の受け入れ体制は決して寛大ではなかった。国外へ逃げることができた者はわずかで、あとの者は列島の北方面に避難して、その場しのぎの対応に歯噛みすることとなった。
そんな混沌の地と化した日本を救うべき存在、神子が守る第二の防衛ライン・出雲では――。
「降りたきゃ降りてもいいよ~。責任感のない神子として一生後ろ指差されるけどね」
「降りるべきは君の方だ。君のようなイカサマまがいのあくどい手段でイザナミたちを倒しても、それこそ生涯陰口を叩かれるんじゃないか?」
不幸なことに出雲ラインのメンバー内では、致命的なまでの異能相性の悪さが露呈している。いや、相性が悪いというよりも、役目がかぶっているという方がはっきりしている。
「メンツにこだわって実力を軽視するのが年の功かぁ? 先輩様は違うね」
「小町のオウムは黙ってろっす! どう考えても四万十さんが指揮を取った方が、いいプランが組めるに違いないっすよ!」
四人で構成されている出雲ラインの現状は、完全な対立状態にある。
そもそものリーダーであり、出雲ラインで一番先輩の四万十悟と、彼を信望する若手神子、早手翔太郎。このふたりは持ち前の潔癖とも言える正義感の強さゆえ、正々堂々と千里たちを迎撃することを提案している。
一方のサブリーダー、四万十から二年遅れて補導された北小町と、早手と同期の少々意地悪い正確をした神子、赤井ぐまのグループは、出島ラインの構成員が各個撃破された報告を受け、今のうちに出雲ラインの管轄全域に監視網を敷き、不意打ちや囲い込みで千里らを撃破する作戦を立ち上げた。譲るつもりはこれっぽっちもない。
力を合わせるべき防衛ライン内部で分裂が起きていることが嘆かわしいのはもちろんのこと、最悪なのが先にも述べた役目の重複だ。異能は与えられるものであり、神子は自分の力を選ぶことはできない。四万十と北は、傾向こそ正反対だがどちらも指揮官適正の高い異能を所持している。
四万十の異能は前線メンバーの身体能力向上を、北の異能は敵の撹乱や現在位置の把握など妨害行為を行うものだ。一応、ツートップの形で別々の仕事ができそうな気もするのだが、それを採用しようと指導員が議論を誘導してみても、今度はどちらが上に立って現場指揮を執るかで揉めてしまう。もはや喧嘩するために会議していると言われても文句の言えない出雲の面々である。
「出島が落ちた時刻から逆算して、イザナミとスサノオがこちらに到着するのもあと二時間、といったところだ。それまでに君たち、僕の命令に従う準備をしておきたまえ」
「あ~らら、大口叩いちゃってかっこ悪い。はいはいわかりました、あなたの言いたいことはね。僕チンの正義が一番強くてかっこいいんでしょ? でもね、覚えておきなさい。この戦いは早めに勝たなきゃ被害がどんどん拡大する時間勝負の案件なの。この出雲で奴らを食い止められなければ、日本の三分の一くらいが闇に沈むってこと、自覚してよね」
「だからこそ君たちの協力がだな……」
「うるせえよ、先輩」
「赤井!」
「ちっ」
噛み合わずまともに終わらない会議の様子を、部屋の隅で壁に寄りかかった姿勢で――日本中に偏在する瀧大臣が静かに不気味に眺めている。
瀧の指示に従った政府は、国民に避難誘導を行うことになった。闇の帳の対象地域が日本国内に限られているのでは、と勝手に妄想して報道したマスコミの影響は国民を騒がせ、結局避難民のうち多くは中国や韓国といった距離の近い諸外国へ移送された。が、そもそもこの問題が急に発生した異常現象である上、謎の災害が自国へ飛び火することを恐れた諸外国の受け入れ体制は決して寛大ではなかった。国外へ逃げることができた者はわずかで、あとの者は列島の北方面に避難して、その場しのぎの対応に歯噛みすることとなった。
そんな混沌の地と化した日本を救うべき存在、神子が守る第二の防衛ライン・出雲では――。
「降りたきゃ降りてもいいよ~。責任感のない神子として一生後ろ指差されるけどね」
「降りるべきは君の方だ。君のようなイカサマまがいのあくどい手段でイザナミたちを倒しても、それこそ生涯陰口を叩かれるんじゃないか?」
不幸なことに出雲ラインのメンバー内では、致命的なまでの異能相性の悪さが露呈している。いや、相性が悪いというよりも、役目がかぶっているという方がはっきりしている。
「メンツにこだわって実力を軽視するのが年の功かぁ? 先輩様は違うね」
「小町のオウムは黙ってろっす! どう考えても四万十さんが指揮を取った方が、いいプランが組めるに違いないっすよ!」
四人で構成されている出雲ラインの現状は、完全な対立状態にある。
そもそものリーダーであり、出雲ラインで一番先輩の四万十悟と、彼を信望する若手神子、早手翔太郎。このふたりは持ち前の潔癖とも言える正義感の強さゆえ、正々堂々と千里たちを迎撃することを提案している。
一方のサブリーダー、四万十から二年遅れて補導された北小町と、早手と同期の少々意地悪い正確をした神子、赤井ぐまのグループは、出島ラインの構成員が各個撃破された報告を受け、今のうちに出雲ラインの管轄全域に監視網を敷き、不意打ちや囲い込みで千里らを撃破する作戦を立ち上げた。譲るつもりはこれっぽっちもない。
力を合わせるべき防衛ライン内部で分裂が起きていることが嘆かわしいのはもちろんのこと、最悪なのが先にも述べた役目の重複だ。異能は与えられるものであり、神子は自分の力を選ぶことはできない。四万十と北は、傾向こそ正反対だがどちらも指揮官適正の高い異能を所持している。
四万十の異能は前線メンバーの身体能力向上を、北の異能は敵の撹乱や現在位置の把握など妨害行為を行うものだ。一応、ツートップの形で別々の仕事ができそうな気もするのだが、それを採用しようと指導員が議論を誘導してみても、今度はどちらが上に立って現場指揮を執るかで揉めてしまう。もはや喧嘩するために会議していると言われても文句の言えない出雲の面々である。
「出島が落ちた時刻から逆算して、イザナミとスサノオがこちらに到着するのもあと二時間、といったところだ。それまでに君たち、僕の命令に従う準備をしておきたまえ」
「あ~らら、大口叩いちゃってかっこ悪い。はいはいわかりました、あなたの言いたいことはね。僕チンの正義が一番強くてかっこいいんでしょ? でもね、覚えておきなさい。この戦いは早めに勝たなきゃ被害がどんどん拡大する時間勝負の案件なの。この出雲で奴らを食い止められなければ、日本の三分の一くらいが闇に沈むってこと、自覚してよね」
「だからこそ君たちの協力がだな……」
「うるせえよ、先輩」
「赤井!」
「ちっ」
噛み合わずまともに終わらない会議の様子を、部屋の隅で壁に寄りかかった姿勢で――日本中に偏在する瀧大臣が静かに不気味に眺めている。
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