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七つの海の七つの星の
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アルフレッド、君は呵呵とばかり笑い僕に向かってこう叫んだ。
「ダイモン、頭だけは良いくせに気が回らないね。怪盗が自分の盗んだものを自慢しないわけがないだろう? そうでなくて誰が怪盗を名乗るかね?」
言われてみれば怪盗などという巫山戯た名を掲げる者にまともな思考回路の持ち主は居ない気がする。
つまり今回の七宝石盗難事件の犯人はアルフレッドに違いないということだ。
彼が昨夜私に見せてくれたあの宝石箱は本物だった。
こうして蒸気ヘリコプターから吊るされた縄梯子にさっそうと飛び移り、アルフレッドはロンドンから去っていった。
また真実を見抜けなかったと、キャサリンの奴にどやされるのだろうが、正直に言うとあまりこの後の展開には関心がない。
私は彼が見せびらかした七つの宝石(昨夜はレプリカだと思っていたが)に、心を奪われてしまったのだ。
盗難品に目移りするとはなんともお笑い草だが、美しいものは美しいのだから仕方がない。
かといってあの宝石をアルフレッドにねだろうものなら、私が犯罪者になってしまうし、そもそもせっかく苦労して盗んだ宝石を彼が人に譲るわけもないだろう。
要するに私は、失恋したのと同じような感傷に浸っている。
もう彼女――あの七宝石に相まみえることはないのだと、そう思うと胸が張り裂けそうだ。
燃え盛る不死鳥の羽の如きルビー、夜闇に光る一等星にも似たダイヤモンド、滴る露に照らされた薔薇の葉と同じ色をしたエメラルド……。
私は遭いたい。あの宝石たちに、もう一度。
「何を呆けているのですか、ダイモン?」
声をかけられてはっと振り返るとそこには配下を引き連れたキャサリンが立っていた。
摩天楼の明かりとサーチライトの照射する激しい明かりに背後から照らされる彼女は、あたかも神罰を下すため降りてきた熾天使のようだった。
「ああ……すまないね。また彼を逃がしてしまったよ」
「奴がロンドンに訪れたらすぐに連絡するように、と申し付けていたことを今日も忘れていらしたのですか? まったく呆れ返りますわね」
「許してくれ、僕はひとりのロンドン市民である前に、彼の友人なんだ」
「はあ……。これだからあなたがたは」
キャサリンが指を鳴らすと、配下のボディーガードたちが散っていった。
完全に立ち去ったわけではなく、どこからでも彼女を守れる配備に付いたのであろう。
「この件は上に報告しておきますので。では、ごきげんよう」
「お説教は終わりかい?」
「私も暇ではないのです。それに」
ひときわ大きなため息をついて、キャサリンは言い放つ。
「――友というものの大切さは、私も理解していますから。苦いものが走るほど」
「……そうかい。ありがとう」
「あなたが感謝することではありません。では、良い夜を」
キャサリンが背を向けた瞬間、私の脳裏にはあの七宝石の輝きが蘇っていた。
やれやれ。
せっかくのありがたいお言葉も、愚か者の胸には響かないというわけ、か。
「ダイモン、頭だけは良いくせに気が回らないね。怪盗が自分の盗んだものを自慢しないわけがないだろう? そうでなくて誰が怪盗を名乗るかね?」
言われてみれば怪盗などという巫山戯た名を掲げる者にまともな思考回路の持ち主は居ない気がする。
つまり今回の七宝石盗難事件の犯人はアルフレッドに違いないということだ。
彼が昨夜私に見せてくれたあの宝石箱は本物だった。
こうして蒸気ヘリコプターから吊るされた縄梯子にさっそうと飛び移り、アルフレッドはロンドンから去っていった。
また真実を見抜けなかったと、キャサリンの奴にどやされるのだろうが、正直に言うとあまりこの後の展開には関心がない。
私は彼が見せびらかした七つの宝石(昨夜はレプリカだと思っていたが)に、心を奪われてしまったのだ。
盗難品に目移りするとはなんともお笑い草だが、美しいものは美しいのだから仕方がない。
かといってあの宝石をアルフレッドにねだろうものなら、私が犯罪者になってしまうし、そもそもせっかく苦労して盗んだ宝石を彼が人に譲るわけもないだろう。
要するに私は、失恋したのと同じような感傷に浸っている。
もう彼女――あの七宝石に相まみえることはないのだと、そう思うと胸が張り裂けそうだ。
燃え盛る不死鳥の羽の如きルビー、夜闇に光る一等星にも似たダイヤモンド、滴る露に照らされた薔薇の葉と同じ色をしたエメラルド……。
私は遭いたい。あの宝石たちに、もう一度。
「何を呆けているのですか、ダイモン?」
声をかけられてはっと振り返るとそこには配下を引き連れたキャサリンが立っていた。
摩天楼の明かりとサーチライトの照射する激しい明かりに背後から照らされる彼女は、あたかも神罰を下すため降りてきた熾天使のようだった。
「ああ……すまないね。また彼を逃がしてしまったよ」
「奴がロンドンに訪れたらすぐに連絡するように、と申し付けていたことを今日も忘れていらしたのですか? まったく呆れ返りますわね」
「許してくれ、僕はひとりのロンドン市民である前に、彼の友人なんだ」
「はあ……。これだからあなたがたは」
キャサリンが指を鳴らすと、配下のボディーガードたちが散っていった。
完全に立ち去ったわけではなく、どこからでも彼女を守れる配備に付いたのであろう。
「この件は上に報告しておきますので。では、ごきげんよう」
「お説教は終わりかい?」
「私も暇ではないのです。それに」
ひときわ大きなため息をついて、キャサリンは言い放つ。
「――友というものの大切さは、私も理解していますから。苦いものが走るほど」
「……そうかい。ありがとう」
「あなたが感謝することではありません。では、良い夜を」
キャサリンが背を向けた瞬間、私の脳裏にはあの七宝石の輝きが蘇っていた。
やれやれ。
せっかくのありがたいお言葉も、愚か者の胸には響かないというわけ、か。
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