72 / 83
第五章 銀雷の夢
第66話 一夜が明けて
しおりを挟む
「どうだった?」
朝食の席に、顔をそろえたときに、ロウは、そう言ってぼくをからかった。
さすがに、吸血鬼のご真祖さまだ。
デリカシーの欠けらも無い。
ぼくの表情をみて、ロウはさらに笑った。
「失敗したんだな! 少年。」
「いま、ぼくはルーデウス閣下に血を吸われてるんだ。なんかしたらルーデウス閣下に筒抜けだ。」
「拒んだのか!!
どうやって、拒否したんだ?」
ロウは、意地悪く、ぼくの脇腹をつつく。
アデルがそれを凶悪な視線で、睨んだいた。
うーん。せっかくの朝ごはんなのに、食欲が失せていく。
「くすぐられたんだ。」
憮然として、アデルが言った。
「一時間くらいやられたかな。さすがにその気も失せた。」
「罪作りだぞ、ルウエン。それともお相手は、きれいなお姉さんがいいか?」
「きれいな、おねえさん?
どこに?」
ほれほれ、とロウは自分を指さした。
「朝食はお粥と干物か。」
「む、むしっ!!」
「おかわり!!」
ラウレスの元気のいい声が響く。
目の前には、空のどんぶりが積み重なっていた。
「あと、ステーキが食べたい。」
「朝からか。何グラム焼く?」
「一頭!」
「そんなステーキはない。」
ルーデウス閣下と、ロウランは、ワインを飲みながら、カナッペをつまんでいた。
もともと、食事の必要ない二人だったが、久しぶり食べ物を「味わえる」ようになったルーデウス閣下に、ロウランがつきあっているようだった。
近くのテーブルで、食事をすませたヘンリエッタもこちらに合流した。
「リウが」
と、ぼくが話し出すと、みんな一瞬、ギョッとなる。
いい加減になれろ。
あいつは、「黒の御方」とかいう妙な悪役でも、はっきり言えば、魔王でもない。リウだ。
「リウが、その危ない魔道人形を持ち出した以上、やつらよりも早く、ドロシーと接触したいのです。
最後の手がかりは、ミルラクという村だ。場所はわかっているが、ロウ。」
ここで呼ばれるとは、思って居なかったのか、ロウは、お粥と干物をを口いっぱいにほうばったまま、ノドを詰まらせかけた。
おまえこそ、食事の必要は無いはずなのに!
この真祖さまは、ちゃんと三食召し上がり、ときには、お酒もたしなむのだ。
そもそも呼吸だってしなくていいのだから、喉がつまっても慌てなくていいだろうに。
「ミルラクまで、転移は可能か?」
「一人ずつなら飛べる。」
ロウはなんとか、エールで食べ物を流し込みながら言った。
「でも、昔と違っていまは、転移を使う者は著しく少ないんだ。
転移そのものは、もともと探知されやすい魔法だし、もし、転移を使えば、西域全体に、『ロウ=リンドここにあり!』と宣言することになるな。」
「しまった!」
ぼくは、思わず頭を抱えた。
「ギムリウスを連れてくるんだった!!」
ロウは、傷ついたように、くちびるを尖らせた。
「そりゃあ、ギムリウスなら、無音で全員を連れて転移できるさ。
でも、転移だけさせて、はいここでさよなら、と言ってあいつが帰ると思うか?
いずれにしても、『城』の防御の要が不在になる事になる。」
「わかった。では、魔道列車を乗り継いで、まずはロザリアを目指そう。
そこから、徒歩でミルラクに向かう。」
ぼくは、みんなの顔を見回した。
ああ、アデルがそっぽを向いている。
ヘンリエッタが手を挙げた。
「ひとつ、提案があるんですが?」
「わかった。旅の間は、一緒の部屋に泊まろう。」
アデルが言った。
「そ、それは構いませんが。
なんのためです、姫様。」
フィオリナの「百驍将」のひとりであるヘンリエッタにとっては、たしかにアデルは主筋だ。
完全に話の腰をブチおられたのに、丁寧にしゃぺるヘンリエッタを、ちょっと可哀想に、ぼくは思った。
「こいつは、ロウといちゃいちゃしたいらしいから、同室はロウに譲る!
おまえは、友だちだから一緒に寝ろ!」
「ち、ちょっと!」
ルーデウスが飛び上がった。
「ルウエンはわたしの獲物です。なんでここで、真祖さまが横取りを。」
アルセンドリック侯爵ロウランは、氷点下の視線でロウを睨んだ。
「まあ。三百年待たされた挙句に、まだあなたのお遊びに付き合わなければならないのでしょうか?」
ぼくは、このときになるまで、パーティがとんでもない美人揃いで、ぼくひとりが男性。いわゆるハーレムパーティなのに気が付かなかった。
「しばらくは、野宿になると思うから、その話はおいといて。」
単純にもてていあなあ、ではない。
吸血鬼どもは、完全に血を吸いたがっているし、そのせいでほかの吸血鬼の嫉妬までうけている。
「ヘンリエッタさんの、提案ってなんですか?」
ヘンリエッタは、背中の雑嚢から羅針盤のようなものを取り出した。
「女神様は、銀雷の魔女が自分の傍を離れる際に、いつでも連絡がつくように、竜珠を手渡している。」
「その魔道具で、竜珠の位置を探知できるわけか!」
「さすがです、姫さま。
ただしあまり遠くまでは、作動いたしません。なので、まずは、予定どおりに、ミルラクの村を目指しましょう。
同じ山系内にいれば、羅針盤が反応いたします。」
朝食の席に、顔をそろえたときに、ロウは、そう言ってぼくをからかった。
さすがに、吸血鬼のご真祖さまだ。
デリカシーの欠けらも無い。
ぼくの表情をみて、ロウはさらに笑った。
「失敗したんだな! 少年。」
「いま、ぼくはルーデウス閣下に血を吸われてるんだ。なんかしたらルーデウス閣下に筒抜けだ。」
「拒んだのか!!
どうやって、拒否したんだ?」
ロウは、意地悪く、ぼくの脇腹をつつく。
アデルがそれを凶悪な視線で、睨んだいた。
うーん。せっかくの朝ごはんなのに、食欲が失せていく。
「くすぐられたんだ。」
憮然として、アデルが言った。
「一時間くらいやられたかな。さすがにその気も失せた。」
「罪作りだぞ、ルウエン。それともお相手は、きれいなお姉さんがいいか?」
「きれいな、おねえさん?
どこに?」
ほれほれ、とロウは自分を指さした。
「朝食はお粥と干物か。」
「む、むしっ!!」
「おかわり!!」
ラウレスの元気のいい声が響く。
目の前には、空のどんぶりが積み重なっていた。
「あと、ステーキが食べたい。」
「朝からか。何グラム焼く?」
「一頭!」
「そんなステーキはない。」
ルーデウス閣下と、ロウランは、ワインを飲みながら、カナッペをつまんでいた。
もともと、食事の必要ない二人だったが、久しぶり食べ物を「味わえる」ようになったルーデウス閣下に、ロウランがつきあっているようだった。
近くのテーブルで、食事をすませたヘンリエッタもこちらに合流した。
「リウが」
と、ぼくが話し出すと、みんな一瞬、ギョッとなる。
いい加減になれろ。
あいつは、「黒の御方」とかいう妙な悪役でも、はっきり言えば、魔王でもない。リウだ。
「リウが、その危ない魔道人形を持ち出した以上、やつらよりも早く、ドロシーと接触したいのです。
最後の手がかりは、ミルラクという村だ。場所はわかっているが、ロウ。」
ここで呼ばれるとは、思って居なかったのか、ロウは、お粥と干物をを口いっぱいにほうばったまま、ノドを詰まらせかけた。
おまえこそ、食事の必要は無いはずなのに!
この真祖さまは、ちゃんと三食召し上がり、ときには、お酒もたしなむのだ。
そもそも呼吸だってしなくていいのだから、喉がつまっても慌てなくていいだろうに。
「ミルラクまで、転移は可能か?」
「一人ずつなら飛べる。」
ロウはなんとか、エールで食べ物を流し込みながら言った。
「でも、昔と違っていまは、転移を使う者は著しく少ないんだ。
転移そのものは、もともと探知されやすい魔法だし、もし、転移を使えば、西域全体に、『ロウ=リンドここにあり!』と宣言することになるな。」
「しまった!」
ぼくは、思わず頭を抱えた。
「ギムリウスを連れてくるんだった!!」
ロウは、傷ついたように、くちびるを尖らせた。
「そりゃあ、ギムリウスなら、無音で全員を連れて転移できるさ。
でも、転移だけさせて、はいここでさよなら、と言ってあいつが帰ると思うか?
いずれにしても、『城』の防御の要が不在になる事になる。」
「わかった。では、魔道列車を乗り継いで、まずはロザリアを目指そう。
そこから、徒歩でミルラクに向かう。」
ぼくは、みんなの顔を見回した。
ああ、アデルがそっぽを向いている。
ヘンリエッタが手を挙げた。
「ひとつ、提案があるんですが?」
「わかった。旅の間は、一緒の部屋に泊まろう。」
アデルが言った。
「そ、それは構いませんが。
なんのためです、姫様。」
フィオリナの「百驍将」のひとりであるヘンリエッタにとっては、たしかにアデルは主筋だ。
完全に話の腰をブチおられたのに、丁寧にしゃぺるヘンリエッタを、ちょっと可哀想に、ぼくは思った。
「こいつは、ロウといちゃいちゃしたいらしいから、同室はロウに譲る!
おまえは、友だちだから一緒に寝ろ!」
「ち、ちょっと!」
ルーデウスが飛び上がった。
「ルウエンはわたしの獲物です。なんでここで、真祖さまが横取りを。」
アルセンドリック侯爵ロウランは、氷点下の視線でロウを睨んだ。
「まあ。三百年待たされた挙句に、まだあなたのお遊びに付き合わなければならないのでしょうか?」
ぼくは、このときになるまで、パーティがとんでもない美人揃いで、ぼくひとりが男性。いわゆるハーレムパーティなのに気が付かなかった。
「しばらくは、野宿になると思うから、その話はおいといて。」
単純にもてていあなあ、ではない。
吸血鬼どもは、完全に血を吸いたがっているし、そのせいでほかの吸血鬼の嫉妬までうけている。
「ヘンリエッタさんの、提案ってなんですか?」
ヘンリエッタは、背中の雑嚢から羅針盤のようなものを取り出した。
「女神様は、銀雷の魔女が自分の傍を離れる際に、いつでも連絡がつくように、竜珠を手渡している。」
「その魔道具で、竜珠の位置を探知できるわけか!」
「さすがです、姫さま。
ただしあまり遠くまでは、作動いたしません。なので、まずは、予定どおりに、ミルラクの村を目指しましょう。
同じ山系内にいれば、羅針盤が反応いたします。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる
初
ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。
レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。
これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる