最強パーティなのに最下級からなりあがる~怪盗ロゼル一族と神竜の鱗

此寺 美津己

文字の大きさ
3 / 38

2、呼び出された少年

しおりを挟む
ランゴバルド博物館のご老人から、本当に呼び出しが来るとは思っていなかった。

暗くなり始めた街路から、博物館にはいると、相変わらず大昔の魔導師の亡霊みたいな格好のニフフ老人が待ち構えていて、ぼくを例の神竜の鱗が展示してある小部屋へと誘った。

「ランゴバルドはいつまで滞在される予定ですか?」

ぼくを年齢をごまかして冒険者学校に潜り込んでいるすご腕の魔導師だと、信じているニフフ老はいちいち敬語を使ってくれるのだが、これは居心地悪いことおびただしい。



確かにランゴバルドには、少しの間、滞在の予定はあった。

ここで、現代の人間文化についての情報を仕入れつつ、これからの活動費を稼ぎ、フォオリナの合流を待つ、というのが当初、ぼくらがランゴバルドを訪れた時点でのもくろみだったのだが、なんと、故郷グランダの冒険者資格が、ここでは使えない。

この時点で、ぼくたちは実質、詰んだと言ってもかよかったのだが、訪れたギルドのアウラさんの機転で、冒険者学校に放り込まれた。

ここは、食事付き寮あり、授業料ただ、の、おそらくはランゴバルドが、貧民救済も兼ねた特別な学校で、目的のひとつ、「しばらくランゴバルドに滞在する」はタダで達成できたのだから、不幸中の幸い、というか。

無事に卒業すれば、その時点で真鍮級、成績が良ければ鉄級の冒険者資格ももらえる。

学校という集団生活に、はたして千年引きこもりと人外どもがはたしてどの程度順応できるのか、不安はあったのだが、なんとかそれなりに順応してくれた。

クラスメイトに「魔王」とか「陛下」とか呼ばれているリウは、「魔王党」と名乗る集団を引き連れて、学校内を闊歩している。

アモンは、学校の自警団「神竜騎士団」の団長に収まった。前団長のメイリュウが毎日、甘えにくるのが面倒くさいらしいが、順調である。

ここらへんは、部下がいて常時かしずかれるのが当たり前と思ってるやつらなので、部下たちのレペルがダダ下がりしたことに目をつぶれば、これが日常なんだろう、ど思う。

ロウ=リンドは、クラスのきれいどころを3人ばかりピックアップして引き連れている。
ときどき戦闘訓練もつけてやってるようで侮れない。チーム名「紅玉の瞳」はかつて彼女が属していた暗殺者ギルドの名前からとったらしく、この先どうするつもりなのか。

ギムリウスはマイペースである。

ただ、習慣的に食事をとる習慣が無いくせに、しばらく食事をしないと回りがすべて食べ物にみえるらしく、定期的に食事に連れ出す役目を、なぜか貴族の放蕩息子のマシューくんがやってくれている。

と、いうことで、ぼくは比較的、ヒマであった。

「西域での正式な冒険者資格が欲しいのです。」
ぼくは正直に言った。
「故郷での冒険者資格を活かして、ここで今後の軍資金を稼ぐつもりだったのですが、まさか、冒険者学校に入り直しは予定外でした。」

「みたところ、北のご出身のようですが。
たしか、あちらは、冒険者に到達級以上のランクがなく、同じ到達級でも玉石混交と聞きました。」

それはその通りなのだ。おかげでぼくらは、もう一度冒険者学校からやり直すハメになっています。

と、言うと二フフ老は恐縮したように

「いや、しかし、それほどの魔力をお持ちになっていながら・・・ランゴバルドのギルドの目は節穴ですな。」

「とんでもありません。むしろ、規則通りならば錆級からはじめなければならないところを、冒険者学校を紹介してもらい感謝しております。」

二フフ老にお茶を入れてもらいながら、ぼくらはしばらくランゴバルドとグランダの冒険者事情、魔術研究について情報を交換しあった。
別にこんなところでボロがでないのは、実際に、ぼくはグランダでは現役の冒険者で、グランダ魔道院の総支配ボルテック卿の知己であるからだ。

「ところで・・・」

急ぎのよう、と言って呼び出した割には、ゆっくりと雑談をしたのち、二フフ老は、クリスタルの球のなかでゆっくりと回転しながら、煌めく竜の鱗を指さした。

「これを盗もうとするものがいる、とお聞きになったらどう思われます?」

ついさっきまで、いっしょに談笑していた仲間は同じものを何百枚かもっているはずだが、それはあくまでも、彼女の立場での話。
世間的には、これ一枚で国の予算が組めるほどの価値があるという。

「それはいる、でしょうね。
これがいかほどの価値のあるものかは、以前お目にかかったときに教えていただきました。
ならば、盗もうとするものはいるでしょう。

失礼ですが、ここはそれほど警備が厳重だとは思えません。」

「まことに。
これには理由があって、ひとつには、この鱗自体が意思をもつように、ここから移動させられることを拒むのです。

もうひとつは。」

二フフ老は、懐から球を取り出した。
光にみたされた水晶球のようだった。


「これは、特殊なちからをもつ球です。
この鱗のありかを光の点で示してくれるので、仮に盗まれたとしても場所を発見して奪還することは容易なのです。」

ぼくは目をこらした・・・・しかし、球は全体が発光しており、光の点などはどこにも見えない。

「この球がこのようになったのはごく最近のことです。」
二フフ老は悲しげに言った。
「お気づきの通り、これでは、鱗のありかを示すことはできません。
そしてよりにもよってこんなときに、『鱗を返せ』と要求してきたものがおります。」

「返せ」はおかしい。それを言える唯一の資格のあるものは、ついさっき、ドロシーとぼくの取っ組み合いを見て大笑いしていたはずだ。

「誰です? それは。」

「わかりません。書面では『ロゼル一族』と名乗っておりました。

万が一にそなえて、冒険者ギルドにも依頼しましたが・・・ルト殿。どうか、あなたのお力も貸していただけませんでしょうか。」

二フフ老はふかぶかと頭を下げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

処理中です...