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35、甘いひととき
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迷宮ランゴバルドは、ランゴバルドの都をそのまま模して作っている。
建物も中の構造もほぼそのままのはずだ。
「いちいち創造するよりもその方が楽」
とは、リウの弁であったが、まだ迷宮を創造したことのないぼくには、「ああ、そういうものか。」という感想しかない。
できれば、一生、迷宮の創造はしないで過ごしたいものだ。
さっきはギムリウスに、ああは言ったものの、迷宮を攻略すべき冒険者が自分で迷宮を作ってしまうのは、やっぱりちょっと違うとは思うのだ。
アモンが深淵竜と遊んでいる間、失神したロゼルのものたち、それにドロシーを野晒しにしておくのも、ということで、一番近くで、損傷の少ない建物に運び込み、必要なものには手当をしようということになった。
ロウとエミリア、それに本体から離脱したヒトガタのギムリウスが、手分けして、彼らを建物内に運び込む。
ドロシーはぼくが担いて、天井のまだ残っている建物に連れていった。
流石に調度類は、再現されていないので、瓦礫のないところに寝かせて、回復呪文をかけた。
古竜が発する「死」の波動を受けたのだ。そうそう死ぬことはなくても体に精神に何らかの悪影響が残る可能性はある。
だが、頬に手を当てただけでドロシーはパチリと目を開いた。
手を離そうとしたが、そのぼくの手を握りしめて、そこに唇を這わせた。
愛情表現の一種かもしれないけど、洗ってからの方がいいね。
そう言うとドロシーは、笑って、目を閉じた。
「・・・・ここは?」
「たぶん、博物館近くの庁舎だと思う。ちょっと壊れているけど、明日の朝には元通りになってるから。」
「・・・みんなは?」
「深淵竜は、アモンが相手をしている。
エミリアは、奴の気に当てられたロゼル一族の手当てだな。」
「みんな来ているの?」
「うん。
ロウとギムリウスはロゼルの手当てを手伝っている。リウは、ニフフとラウレスの面倒を見ている。
えらくショックを受けていてね。
はっきり言って、とっとと失神したドロシーたちの方が被害は少なかったかもしれない。」
ドロシーはつい、と両手を伸ばしてぼくの頭を抱き寄せた。
黒蜥蜴のジャケットの前のボタンは、外れていて、下はギムリウスのあの不道徳なボディスーツだけだ。
いやそれも、ニフフの竜爪に半ば引き裂かれてしまっている。
「ちゃんと、わたし、心臓動いてる?」
そう。ドロシーの薄い乳房を通して、その胸の中で間違いなく確かな鼓動が聞こえてきた。
「もう・・・死んじゃうのかと思った。」
ぼくの頭をかき回すように撫ぜる。
これは、リウもときどきやるのだが、ぼくはあんまり好きじゃないのだ。髪の毛が乱れるし。
「今度こそダメだと思った。あの・・・ニフフさんに捕まったときに。」
「竜鱗対策だな。何か考えとく。なあに、防御力は高いが無敵じゃないんだ。衝撃とかの物理的なダメージと魔力のダメージに同時に流し込んでやれば」
「もうっ!」
なぜか怒ったようにドロシーは、ぼくの顔を引き寄せた。
「ルト。喉乾いた。」
「水、出そうか? 果汁かなんかの方がいい?」
「違うの。」
彼女の唇がぼくに重なった。舌がぼくの舌にからむ。
流れる唾液を、ドロシーはこくこくと飲み込んだ。
「・・・美味しい。」
指がぼくのシャツのボタンを外していく。
「ねえ、寒いな。」
「なら耐寒属性を高める魔法を。」
「じゃなくて。」
ルトの体で温めてよ。
もう残骸だけになったギムリウスのスーツを体をくねらせるようにして、肩を抜いた。
もう上半身は裸と変わらない。
・・・肌の滑らかさと温かさはともかく、視覚的には実のところ、新鮮味は薄い。
今までのボディスーツも全裸よりタチの悪いものだったし、何しろ、前に画像とはいえ、ロウとの訓練風景を見てしまっているからなあ。
だから、どうしても「それ」との比較になってしまう。
あのときは、肋が浮いていた胸は、しっかりと胸筋に支えられている。お腹の辺りも不健康そうな弛みがなくなって、すらりとしている。
つまりは、フィオリナの体型に近い。
「ルト・・・」
ドロシーは、手を下ろして下半身のスーツを脱ぎにかかる。
ほぼ、お腹の辺りまで裂かれたスーツは、簡単に脱げた。
長い足は、ぼくの腰を絡めとるようにして、ぼくを抱き込んだ。
ドロシーの香りがぼくをつつむ。
女性が異性を欲している時の香りだ。
なるほど。
そうか。
「ドロシー、あの、命の危険にさらされると、生き物は、子孫を残したいという欲求が急激に高まるらしい。」
へ?
という顔でドロシーはぼくを見た。
「死の恐怖にさらされたんで、体が勘違いしてると思うんだけど、全然違う。
さっきは危ない目に遭わせてしまって、本当に悪かったと思ってる。
古竜がわざわざ人間に、残酷な振る舞いをするなんてことは、本当に珍しいんだよ。
でももう大丈夫。危ないことなんて何にも起こらない。
深淵竜とか言うあの蜥蜴もどきは、アモンがコッテリお仕置きをしてくれる。
明日は、また普通に学校に行かれるよ。
もし疲れているんなら、そうだ。授業をサボろう。午前中はゆっくり休んで、午後から、街にでて一緒に買い物をしてから、どこかで美味しいものを食べよう。
ぼくじゃなくて、マシューの方がよければ、ネイア先生に頼んで、ちゃんと二人で、外出許可を取れるようにする。」
ドロシーは、半ば呆然と、ぼくを見ている。
(造像上の)リウがなぜか笑い転げていた。
建物も中の構造もほぼそのままのはずだ。
「いちいち創造するよりもその方が楽」
とは、リウの弁であったが、まだ迷宮を創造したことのないぼくには、「ああ、そういうものか。」という感想しかない。
できれば、一生、迷宮の創造はしないで過ごしたいものだ。
さっきはギムリウスに、ああは言ったものの、迷宮を攻略すべき冒険者が自分で迷宮を作ってしまうのは、やっぱりちょっと違うとは思うのだ。
アモンが深淵竜と遊んでいる間、失神したロゼルのものたち、それにドロシーを野晒しにしておくのも、ということで、一番近くで、損傷の少ない建物に運び込み、必要なものには手当をしようということになった。
ロウとエミリア、それに本体から離脱したヒトガタのギムリウスが、手分けして、彼らを建物内に運び込む。
ドロシーはぼくが担いて、天井のまだ残っている建物に連れていった。
流石に調度類は、再現されていないので、瓦礫のないところに寝かせて、回復呪文をかけた。
古竜が発する「死」の波動を受けたのだ。そうそう死ぬことはなくても体に精神に何らかの悪影響が残る可能性はある。
だが、頬に手を当てただけでドロシーはパチリと目を開いた。
手を離そうとしたが、そのぼくの手を握りしめて、そこに唇を這わせた。
愛情表現の一種かもしれないけど、洗ってからの方がいいね。
そう言うとドロシーは、笑って、目を閉じた。
「・・・・ここは?」
「たぶん、博物館近くの庁舎だと思う。ちょっと壊れているけど、明日の朝には元通りになってるから。」
「・・・みんなは?」
「深淵竜は、アモンが相手をしている。
エミリアは、奴の気に当てられたロゼル一族の手当てだな。」
「みんな来ているの?」
「うん。
ロウとギムリウスはロゼルの手当てを手伝っている。リウは、ニフフとラウレスの面倒を見ている。
えらくショックを受けていてね。
はっきり言って、とっとと失神したドロシーたちの方が被害は少なかったかもしれない。」
ドロシーはつい、と両手を伸ばしてぼくの頭を抱き寄せた。
黒蜥蜴のジャケットの前のボタンは、外れていて、下はギムリウスのあの不道徳なボディスーツだけだ。
いやそれも、ニフフの竜爪に半ば引き裂かれてしまっている。
「ちゃんと、わたし、心臓動いてる?」
そう。ドロシーの薄い乳房を通して、その胸の中で間違いなく確かな鼓動が聞こえてきた。
「もう・・・死んじゃうのかと思った。」
ぼくの頭をかき回すように撫ぜる。
これは、リウもときどきやるのだが、ぼくはあんまり好きじゃないのだ。髪の毛が乱れるし。
「今度こそダメだと思った。あの・・・ニフフさんに捕まったときに。」
「竜鱗対策だな。何か考えとく。なあに、防御力は高いが無敵じゃないんだ。衝撃とかの物理的なダメージと魔力のダメージに同時に流し込んでやれば」
「もうっ!」
なぜか怒ったようにドロシーは、ぼくの顔を引き寄せた。
「ルト。喉乾いた。」
「水、出そうか? 果汁かなんかの方がいい?」
「違うの。」
彼女の唇がぼくに重なった。舌がぼくの舌にからむ。
流れる唾液を、ドロシーはこくこくと飲み込んだ。
「・・・美味しい。」
指がぼくのシャツのボタンを外していく。
「ねえ、寒いな。」
「なら耐寒属性を高める魔法を。」
「じゃなくて。」
ルトの体で温めてよ。
もう残骸だけになったギムリウスのスーツを体をくねらせるようにして、肩を抜いた。
もう上半身は裸と変わらない。
・・・肌の滑らかさと温かさはともかく、視覚的には実のところ、新鮮味は薄い。
今までのボディスーツも全裸よりタチの悪いものだったし、何しろ、前に画像とはいえ、ロウとの訓練風景を見てしまっているからなあ。
だから、どうしても「それ」との比較になってしまう。
あのときは、肋が浮いていた胸は、しっかりと胸筋に支えられている。お腹の辺りも不健康そうな弛みがなくなって、すらりとしている。
つまりは、フィオリナの体型に近い。
「ルト・・・」
ドロシーは、手を下ろして下半身のスーツを脱ぎにかかる。
ほぼ、お腹の辺りまで裂かれたスーツは、簡単に脱げた。
長い足は、ぼくの腰を絡めとるようにして、ぼくを抱き込んだ。
ドロシーの香りがぼくをつつむ。
女性が異性を欲している時の香りだ。
なるほど。
そうか。
「ドロシー、あの、命の危険にさらされると、生き物は、子孫を残したいという欲求が急激に高まるらしい。」
へ?
という顔でドロシーはぼくを見た。
「死の恐怖にさらされたんで、体が勘違いしてると思うんだけど、全然違う。
さっきは危ない目に遭わせてしまって、本当に悪かったと思ってる。
古竜がわざわざ人間に、残酷な振る舞いをするなんてことは、本当に珍しいんだよ。
でももう大丈夫。危ないことなんて何にも起こらない。
深淵竜とか言うあの蜥蜴もどきは、アモンがコッテリお仕置きをしてくれる。
明日は、また普通に学校に行かれるよ。
もし疲れているんなら、そうだ。授業をサボろう。午前中はゆっくり休んで、午後から、街にでて一緒に買い物をしてから、どこかで美味しいものを食べよう。
ぼくじゃなくて、マシューの方がよければ、ネイア先生に頼んで、ちゃんと二人で、外出許可を取れるようにする。」
ドロシーは、半ば呆然と、ぼくを見ている。
(造像上の)リウがなぜか笑い転げていた。
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