最強パーティなのに最下級からなりあがる~怪盗ロゼル一族と神竜の鱗

此寺 美津己

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36、最後のダンスは、憧れ続けた彼女と一緒に~2

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このアモンという古竜の鱗は、自分よりも遥かに硬い。

ゾールは歯噛みしながらも認めた。
そして、おそらく、いや間違いなく、彼よりも総合的な力は上だ。

魔術について、特に空間を操作する魔術について、彼はそれなりに自信を持っていた。
いや、竜の都でも彼に匹敵するものはいないと、自負していた。

だが、上には上がいる。
それを彼は素直に認めた。

そして、あのルトという少年。

彼が、此度の脚本を書いたのだ。
5枚の「神竜の鱗」。全てが集まった瞬間に、全てが台無しになるようなこの罠を。

なにが冒険者学校の生徒だ。

そんな冒険者学校の生徒がいてたまるか!

おそらく、彼もまた 未知の、力をもった亜人なのだ。

ゾールは、必ずしも竜の長老たちからは好まれていない。
ただ、その実力をもって推し通ってきたのだ。確証はなにもないが、長老たちのひとりが、生意気な若竜に灸を据えてやろうと思いついたのか。

だが。

今回も推し通る!!

歩法瞬き。

極度の筋肉の緊張。筋肉が体重のかかり具合とは真逆の方向への急速な移動。

そしてそれを繰り返すことは、場合によっては筋肉の断裂をも起こしかねない。

ふん。

と、ゾールは鼻で笑った。

それがどうした。
3連続の「瞬き」は、おそらく勇者たるクロノでも限界だったろう。

足のなかでブチブチとなにかがちぎれる音がする。

そこまでして繰り出した剣の一撃でさえ、こいつ、古竜アモンは軽々と拳で払い除けた。

だが本命はこれではない。

4度目の「瞬き」でアモンの背後に回り込んだゾールは渾身のブレスをはなった。
竜鱗とブレスは鉾と盾に例えられる。

最強の鱗は最強のブレスを防ぎきれるのか。

答えは、NOだ。

竜族においては、常に攻撃は防御を凌駕する。

つまり、鱗の強度において、ゾールを上回るアモンでもゾールのブレスで貫ける可能性はある、のだ。
そして、事実。

アモンは、回避の行動をとった。

ゾールのブレスは虚しく、空を切る。

いや。
ブレスは大きく歪曲し、再び、ゾールに向かった。ゾールは自らの身体から生み出した剣でそのブレスを受け止める。

ゾールの剣は、彼のプレスの威力を宿した。

「瞬き」!

左足は骨折した。
だが、いま、この瞬間、アモンはゾールの姿を完全に見失ったはずだ。

彼の体からの素材でつくった唯一の剣であれ、竜のブレスを纏わせて攻撃出来るのは一度だけ。それ、以上は剣身がもたない。

アモンは。

彼を見向きもせずに、その拳を床に叩きつけていた。

以下は念話による会話である。
崩壊する世界のなかで、声による会話などしようもない。

“創られたばかりの世界は脆い。”

アモンは声は優しく、諭すようだった。

“世界を創れることに慢心したな、若き竜よ。おまえが創った不安定な世界でなければ、わたしもこんなやり方は出来なかった。
さすれば、さいごのヒトたちくらいはくらっかもしれぬ。”

世界が崩壊する。

そしてその崩壊とともに自分もまた。

無に向かって落ちていくその尾を、人間の手が掴んだ。

“少々、おまえが気に入ったようだ。少しわたしのもとで修行していけ。”

“あ、あなたさまは!”

ふふっ

と声の主は笑った。

“外の世界では、この名で呼ぶなよ。我が名は”



ドロシーのやり場のない怒りやら悲しみやら。
一切合切と一緒に、ランゴバルド塔は崩壊した。

いまでは最大の建築物ではないものの、ランゴバルドを代表するランドマークである。
それが、根元から砕け散り、上部はそのままの形状で落下した。それも地に落ちる前に、粉々にくだけ、衝撃波はまわりの建物を次々と倒壊させた。

煙と埃、さらに細い破片の混合物が、ルトたちを襲った。ロウがリウが、てんでに障壁を展開した。
ギムリウスが竜巻をよんで、かれらのところにはチリのい一片すらも届かなかった。

「なにがどうなって」

ラウレスがつぶやいたが、古竜がそんなことを言うな、と誰もが思った。

「あ、あれ」

エミリアが指差した方向。
けむりにつつまれたその中からアモンが歩いてくる。

鼻歌をうたっている。
上機嫌だ。

しかし、引きずっているものはなんだろう。

全員の目にそれは身の丈40メトルも黒い竜にみえた。
死骸ではないのだろう。しかし、完全に気を失っている。

エミリアは、その事実を認め、蒼白になってリウを振り返った。

「あれ、あれって。」

「うむうむ。」リウはにこやかに頷いた。「アモンならきっと気にいると思ったんだ。未熟なれど、才能溢れる若い竜の命をむざむざ散らすこともないからな。」

ドロシーは速やかに意識を失う道を選んだ。

ギムリウスに急遽、糸を提供してもらったロングコートのまま、ルトの腕の中におさまる。

「こっちは片付いたぞ。」
アモンは楽しげに手を振った。
「こいつはわたしがもらう。『魔王宮』に放り込んで半世紀ばかり修行させる。
なかなか、面白い技をつかう。歪曲するブレスとか。」

「結局のところ、なにが目的だったんです? こいつは。」

「わたしに惚れていたのだよっ!」
と、ウキウキした口調でアモンは答えた。
「わたしにまつわるものをコレクションしていたようだ。
ただ神竜の鱗をともなると、枚数も限られる。管理しているのは、竜の都やら、ギウリークやら、ランゴバルドやら。」

アモンは、深淵竜を蹴飛ばした。蹴飛ばした衝撃で人化するなどあるのだろうか。

博学なルトも元魔王もはじめて見る光景だった。

改めてひとの姿をとった深淵竜は、先ほどよりも若い姿をとっている。

そのまま瓦礫の上に正座!

「いくらなんでもそうなると厄介なので、誰かを犯人にしようと思いました。」

観念した犯人が自白するように、ゾールは語る。

「東方の国が保管していたものは、国そのもなが崩壊していたのであっさり手に入りました。
行方不明の1枚は、アルド海に沈んでいた船の中から見つけました。
あとは、竜の都のものは、ラウレスに。ミトラとランゴバルドのものは、ロゼル一族を、それぞれ犯人に仕立てるつもりでした。」

「全体としては悪くないと思うな。」
ルトが、ぽつりと言った。
「神竜に神獣、真祖に魔王がひとつ所にいることを予想すらほうが無理だ。」

「や、やっぱり自分でもそう思ってる?!」

「と、ところで」
とニフフが、言った。
彼の「5枚の鱗をあつめて、リアモンドを魔王宮から解放する」という目的そのものが無意味、あるいは大きなお世話だったのだか、そうなると、気になることがある。
「ランゴバルドに保管された『神竜の鱗』はいかがになりましたでしょうか。」

ああ。

アモンは今気がついかのように(実際そうだったのだが)言った。

「ルトに渡したものと一緒に、全部、踏み砕いてしまった。」

「そんな、あれは世界の宝・・・」

これではクビになると、おいおい泣きはじめた。アモンも罰が悪そうに、それを見つめている。

「あの」

ルトが手を上げた。

「神竜の鱗くらいもう一枚あげたらいかがでしょうか
あとノリでリウが壊してしまったミトラの大聖堂の分も。」
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