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第四章 混迷
第38話 憂鬱なピクニック
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吸血鬼は、厳密には死んでいるわけではない。
だが、一定のランク以上の吸血鬼は、アンデッドに対して強い影響力をもっている。
暗い森の中で、ぼくらは、二回ほど屍人お遭遇したが、ライミアがひと睨みして、追い払った。
というわけで、ぼくらのこの層での冒険は、あまり風景に恵まれないピクニックだった。
この迷宮を攻略したものの手記は、何冊も出ているが、這って進まなければならないような狭い通路や、さまざまなアンデッドの襲撃のなか、待ち伏せする部屋をくぐり抜けて、第三層への入り口を発見するのだ。
古典的なホラーの舞台になりそうな巨大な古城は、威圧するように伸びえている。
「普通に第一層から、降りてくると、城の中に出る。」
ライミアは、ぼくの思いを見通すかのように言った。
「第三層への入り口も、この城の中にある。
つまり、第二層攻略についてのいくたの冒険者たちの記述は、この城の中のものだったよのよ。」
「では、ぼくらもこれから、スケルトンとら屍人と戦ったり、這いつくばって、狭い通路を進んだり、高位吸血鬼が、待ち構えるボス部屋を攻略したりしないといけないわけか?」
「まさか!
第三層への入り口は、正面から入った大広間から、ひとつ階段をおりたところにあるわ。言っておくけども、普通の階段ね。
だけか、膝の関節痛なんかで、階段が苦手って方はいるかしら?」
ついひと月まえの、ぼくの体は、階段どころか、平らな部屋ななかでも、おばつかなかったが、転生さまさまである。
「あの、ヒスイ。迷宮攻略が、想像してたのと、まるっきり、違うんだけど」
「だから、これを、基準にするな!」
とは、ほぼ、丸一日、歩き続けたぼくは、それなりに疲れてはいた。
ライミアは、玄関の大扉を(揺れただけで)開けると、雑炊を作って振舞ってくれたを
屋内で、煮たきというのも、どうだろうと思うのだが、城の中は、別にそんなことを、しんぱいしてなくてもいいような荒れ具合であった。
「最後の晩餐、になるかもしれないってこたね。」
ティーンは、旺盛な食欲をみせながら言った。
思えば、この少女は、本当に大したものだ。
もともと、自分のためにはじめた脱出劇だったが、完全に偶然に知り合ったぼくを信頼して、ここまで着いてきてくれている。
これは、小悪党同士の互いへの信頼があったからだろう。
我々、小悪党仲間がいだく信頼というものは、普通に暮らまともなものたちがいだく、心からの信頼とか、まして愛情とかとはまったく違う。
こいつは、こうならなければ裏切らない。
そう言った条件付きの「信頼」なのだ。
ティーンが、ぼくが裏切るであろう状態とは、ティーンから、皇位継承のゴタゴタが終わり、完全に安全な状態になってからだろう。
もし、そんなことになれば、今度は、統一帝国を食い荒らす獅子身中の虫として、ぼくを排除にかかるかもしれなかった。
「最後の晩餐は、大袈裟ね。」
サリア・アキュロンは、自分も雑炊をオカワリしながら言った。
「そもそも、明日自分がどうなるかなんて、なにも、わからないものよ。
そう言った意味ではいつだって、最後の晩餐だし。
あと、ライミアは、基本的に人間がするような食事は必要ないから。」
あらためて、ぼくらはライミアを見つめた。
真祖直系の女吸血鬼は、鍋底に煮える雑炊に、なにやら香辛料をさらに投下した。
あじへん?
「……たしかに、わたしにとって、これは単なる嗜好品らしい。」
ぶつぶつとつぶやいた低い声は、不平不満をぶちまけているときの声だった。
「だが、食べないとお腹がすくし、一定時間起きていれば、眠くなる。
血が欲しいなどとは、思ったこともないし、端的に言ってしまえば、若返られせてもらっただけで、体にはなんの違和感もない。」
「人間そっくりに行動できる、というのは上位吸血鬼の証明だから」
ぼくの言葉は、なんとなく、慰めるように届いたかもしれない。
「まぎれもなく、ライミアさん。あなたが真祖の血によって誕生した初めての吸血鬼であるのことを意味している。」
「そうなんだ。」
噛み締めるように、ライミアは言っいながら、赤く染った雑炊を、みんなの器に取り分けた。
その異国の香りに誘われるように、ティーンとサリアは、新たによそわれた雑炊を、口にする。
「うわっ!!!」
「か、からっ!」
サリアは、コートの裏の試験管を何本か取り出すと、飲料水の入ったぼとるに、水滴ずつを垂らして、一口、さらにティーンにも、すすめた。
ゴクゴクと喉を鳴らして、それを飲むと、ティーンはため息をついた。
「……ふうっ……は、はじめて食べるよ。これ。」
ライミアは、苦笑して、“収納”から具材を取りだし、鍋に放り込んだ。さらに白いミルクのような液体を注ぎ込む。
「最後の晩餐、云々は、サリア・アキュロンの言う通り、意味が無い。
わたしたちは、腹が空いたから、こうして、食事をとっているわけであって、古竜と会うのに、こちらの状態などは、関係ないのだ。
こちらが万全の状態だから、その力に拮抗できるという代物ではないんだ、やつらは、な。」
じゃあ、なにがいちばん、左右するの?
というティーンの、もっとも問いに、ライミアは、
「やつらの気分だな。」
と、答えた。
だが、一定のランク以上の吸血鬼は、アンデッドに対して強い影響力をもっている。
暗い森の中で、ぼくらは、二回ほど屍人お遭遇したが、ライミアがひと睨みして、追い払った。
というわけで、ぼくらのこの層での冒険は、あまり風景に恵まれないピクニックだった。
この迷宮を攻略したものの手記は、何冊も出ているが、這って進まなければならないような狭い通路や、さまざまなアンデッドの襲撃のなか、待ち伏せする部屋をくぐり抜けて、第三層への入り口を発見するのだ。
古典的なホラーの舞台になりそうな巨大な古城は、威圧するように伸びえている。
「普通に第一層から、降りてくると、城の中に出る。」
ライミアは、ぼくの思いを見通すかのように言った。
「第三層への入り口も、この城の中にある。
つまり、第二層攻略についてのいくたの冒険者たちの記述は、この城の中のものだったよのよ。」
「では、ぼくらもこれから、スケルトンとら屍人と戦ったり、這いつくばって、狭い通路を進んだり、高位吸血鬼が、待ち構えるボス部屋を攻略したりしないといけないわけか?」
「まさか!
第三層への入り口は、正面から入った大広間から、ひとつ階段をおりたところにあるわ。言っておくけども、普通の階段ね。
だけか、膝の関節痛なんかで、階段が苦手って方はいるかしら?」
ついひと月まえの、ぼくの体は、階段どころか、平らな部屋ななかでも、おばつかなかったが、転生さまさまである。
「あの、ヒスイ。迷宮攻略が、想像してたのと、まるっきり、違うんだけど」
「だから、これを、基準にするな!」
とは、ほぼ、丸一日、歩き続けたぼくは、それなりに疲れてはいた。
ライミアは、玄関の大扉を(揺れただけで)開けると、雑炊を作って振舞ってくれたを
屋内で、煮たきというのも、どうだろうと思うのだが、城の中は、別にそんなことを、しんぱいしてなくてもいいような荒れ具合であった。
「最後の晩餐、になるかもしれないってこたね。」
ティーンは、旺盛な食欲をみせながら言った。
思えば、この少女は、本当に大したものだ。
もともと、自分のためにはじめた脱出劇だったが、完全に偶然に知り合ったぼくを信頼して、ここまで着いてきてくれている。
これは、小悪党同士の互いへの信頼があったからだろう。
我々、小悪党仲間がいだく信頼というものは、普通に暮らまともなものたちがいだく、心からの信頼とか、まして愛情とかとはまったく違う。
こいつは、こうならなければ裏切らない。
そう言った条件付きの「信頼」なのだ。
ティーンが、ぼくが裏切るであろう状態とは、ティーンから、皇位継承のゴタゴタが終わり、完全に安全な状態になってからだろう。
もし、そんなことになれば、今度は、統一帝国を食い荒らす獅子身中の虫として、ぼくを排除にかかるかもしれなかった。
「最後の晩餐は、大袈裟ね。」
サリア・アキュロンは、自分も雑炊をオカワリしながら言った。
「そもそも、明日自分がどうなるかなんて、なにも、わからないものよ。
そう言った意味ではいつだって、最後の晩餐だし。
あと、ライミアは、基本的に人間がするような食事は必要ないから。」
あらためて、ぼくらはライミアを見つめた。
真祖直系の女吸血鬼は、鍋底に煮える雑炊に、なにやら香辛料をさらに投下した。
あじへん?
「……たしかに、わたしにとって、これは単なる嗜好品らしい。」
ぶつぶつとつぶやいた低い声は、不平不満をぶちまけているときの声だった。
「だが、食べないとお腹がすくし、一定時間起きていれば、眠くなる。
血が欲しいなどとは、思ったこともないし、端的に言ってしまえば、若返られせてもらっただけで、体にはなんの違和感もない。」
「人間そっくりに行動できる、というのは上位吸血鬼の証明だから」
ぼくの言葉は、なんとなく、慰めるように届いたかもしれない。
「まぎれもなく、ライミアさん。あなたが真祖の血によって誕生した初めての吸血鬼であるのことを意味している。」
「そうなんだ。」
噛み締めるように、ライミアは言っいながら、赤く染った雑炊を、みんなの器に取り分けた。
その異国の香りに誘われるように、ティーンとサリアは、新たによそわれた雑炊を、口にする。
「うわっ!!!」
「か、からっ!」
サリアは、コートの裏の試験管を何本か取り出すと、飲料水の入ったぼとるに、水滴ずつを垂らして、一口、さらにティーンにも、すすめた。
ゴクゴクと喉を鳴らして、それを飲むと、ティーンはため息をついた。
「……ふうっ……は、はじめて食べるよ。これ。」
ライミアは、苦笑して、“収納”から具材を取りだし、鍋に放り込んだ。さらに白いミルクのような液体を注ぎ込む。
「最後の晩餐、云々は、サリア・アキュロンの言う通り、意味が無い。
わたしたちは、腹が空いたから、こうして、食事をとっているわけであって、古竜と会うのに、こちらの状態などは、関係ないのだ。
こちらが万全の状態だから、その力に拮抗できるという代物ではないんだ、やつらは、な。」
じゃあ、なにがいちばん、左右するの?
というティーンの、もっとも問いに、ライミアは、
「やつらの気分だな。」
と、答えた。
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