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第四章 混迷
第45話 中空の牢獄
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古竜は、好き好んで、人間の姿をとることが、多い。
彼らが人間の文化を、こよなく愛してやまないものが多いのは、周知の事実だが、、料理や酒の味を楽しむには、彼らの巨体は問題になるのだ。
もちろん、観劇やら演奏会の会場には入れっこない。
といわけで、ぼくもまだ行ったことはないのだが、古竜たちが暮らす竜の都は、人間の都市をもして作られており、古竜たちは、人間の姿をとってくらしているそうだ。
ぼくらを通してくれた部屋は、そんなにいいものではない。
なにかの繊維を編んだような、籠の部屋だった。
階段などは、ない。ここまで、ぼくらはゾールの浮遊魔法でやってきた。
中空に糸で吊り下げされ、部屋である。
二人がゆっくりと寛げるだけのスペースはある。
同じく繊維で編んだ寝台は、用意されていた。
深淵竜ゾールは、かいがいしく、食べ物と飲み物をもってきた。
呆れたことに、酒も一本下げていた。
「怪我をした状態での泥酔は、おすすめしない。」
ワインを、これも籐製のテーブルに置いて、彼は言った。
「リアモンドさまは、何処かへお出かけだ。裁きはリアモンドさまが下す。それまでは、おまえたちは、第三層の虜囚となる。」
「……迷惑をかける。」
ぼくは、寝台に腰をかけて、痛覚を麻痺させる魔法を唱えながら言った。
「迷惑、だ? おまえたちは、迷宮内で罪を犯したがために、拘束されているのだぞ?」
「まあ、まことにありがたいです。」
ティーンは、細かな作業をする彫り師が、使うような目にはさむタイプの拡大鏡を取り出した。
ぼくの身体をじっくりと見回したのは、ほかにどこか、怪我がないか、調べたのだろう。
「おまえは、クローディア家のアルディーンだな?」
「ティーンとお呼びください、古竜ゾール殿。」
「この後におよんで、偽名を使う意味があるのか?」
「はい。
わたしの素性に気づかなかったと、あとで、中央軍に主張できます。」
ゾールは、ため息をついた。
「そっちのヒスイだけでなく、おまえまで、そのような高度な政治的判断をするのか?」
「はい、ゾール殿。わたしもヒスイも、人間社会では、小悪党なのです。
主義主張もなく、社会を正す正義感もなく、目先の欲望や、その場限りの打開策を後先考えずに、実行します。
過度に残酷になることもありませんが!人を傷つけることも裏切ることにも、たいしてきがとがめません。」
「……ふむ?」
ゾールは顎を撫でたが、そのしぐさは!彼が今とっている少年にはなんとも似つかわしくないものだった。
「では、おまえは、あの統一帝国とやらの継承権は、欲しくない、というのだな?」
「そこら辺の判断は、小悪党のわたしには、分かりかねます。
ただ、奴らがほしいのは、皇帝アデルの魂を移すための器としての、わたしの身体です。
その場合、わたしがどうなるのか……偉大なるアデル陛下の一部として、吸収させるのか、肉体を失って、はじき出されるのか。
それは、“死”となんらかわりはかわりないでしょう。
それはイヤです。」
「なら、おまえはどうしたい?」
「さあ? 世間がわたしのことなど、忘れてくれて、好き勝手に生きられるようになるのが、わたしの願望ですが。」
ゾールの声には、咎めるような響きがまじった。
「ならば、おまえは、なんの意志もなく、今後の展望もなく、身を焦がす欲求もないまま、単に追っ手から身を守るために、魔王宮を訪れた、というのか?」
「小悪党なもので。」
首を捻るゾールに、ぼくは話しかけた。
「ぼくらのような小悪党は、たとえば、おまえがかつて、操っていた古来の盗賊団などとは、わけが違うのさ。
理解しろよ。」
ゾールは、ぼくをじっと見つめた。
「無意識にでも、視線に威圧をこめないでくださいませ。」
ぼくの身体を、片目にはめた魔道具で操作しながら、ティーンは言った。
「彼は怪我人なのです。重傷といえるのは、足首の捻挫くらいですが。けっこう、あちこちに打撲があります。たぶん、今夜は熱が出ます。」
「あとで、氷と布を用意させよう。」
ゾールは言った。
「ここには、人間も何人か暮らしている。
その者に、おまえたちの面倒をみさせよう。」
彼らが人間の文化を、こよなく愛してやまないものが多いのは、周知の事実だが、、料理や酒の味を楽しむには、彼らの巨体は問題になるのだ。
もちろん、観劇やら演奏会の会場には入れっこない。
といわけで、ぼくもまだ行ったことはないのだが、古竜たちが暮らす竜の都は、人間の都市をもして作られており、古竜たちは、人間の姿をとってくらしているそうだ。
ぼくらを通してくれた部屋は、そんなにいいものではない。
なにかの繊維を編んだような、籠の部屋だった。
階段などは、ない。ここまで、ぼくらはゾールの浮遊魔法でやってきた。
中空に糸で吊り下げされ、部屋である。
二人がゆっくりと寛げるだけのスペースはある。
同じく繊維で編んだ寝台は、用意されていた。
深淵竜ゾールは、かいがいしく、食べ物と飲み物をもってきた。
呆れたことに、酒も一本下げていた。
「怪我をした状態での泥酔は、おすすめしない。」
ワインを、これも籐製のテーブルに置いて、彼は言った。
「リアモンドさまは、何処かへお出かけだ。裁きはリアモンドさまが下す。それまでは、おまえたちは、第三層の虜囚となる。」
「……迷惑をかける。」
ぼくは、寝台に腰をかけて、痛覚を麻痺させる魔法を唱えながら言った。
「迷惑、だ? おまえたちは、迷宮内で罪を犯したがために、拘束されているのだぞ?」
「まあ、まことにありがたいです。」
ティーンは、細かな作業をする彫り師が、使うような目にはさむタイプの拡大鏡を取り出した。
ぼくの身体をじっくりと見回したのは、ほかにどこか、怪我がないか、調べたのだろう。
「おまえは、クローディア家のアルディーンだな?」
「ティーンとお呼びください、古竜ゾール殿。」
「この後におよんで、偽名を使う意味があるのか?」
「はい。
わたしの素性に気づかなかったと、あとで、中央軍に主張できます。」
ゾールは、ため息をついた。
「そっちのヒスイだけでなく、おまえまで、そのような高度な政治的判断をするのか?」
「はい、ゾール殿。わたしもヒスイも、人間社会では、小悪党なのです。
主義主張もなく、社会を正す正義感もなく、目先の欲望や、その場限りの打開策を後先考えずに、実行します。
過度に残酷になることもありませんが!人を傷つけることも裏切ることにも、たいしてきがとがめません。」
「……ふむ?」
ゾールは顎を撫でたが、そのしぐさは!彼が今とっている少年にはなんとも似つかわしくないものだった。
「では、おまえは、あの統一帝国とやらの継承権は、欲しくない、というのだな?」
「そこら辺の判断は、小悪党のわたしには、分かりかねます。
ただ、奴らがほしいのは、皇帝アデルの魂を移すための器としての、わたしの身体です。
その場合、わたしがどうなるのか……偉大なるアデル陛下の一部として、吸収させるのか、肉体を失って、はじき出されるのか。
それは、“死”となんらかわりはかわりないでしょう。
それはイヤです。」
「なら、おまえはどうしたい?」
「さあ? 世間がわたしのことなど、忘れてくれて、好き勝手に生きられるようになるのが、わたしの願望ですが。」
ゾールの声には、咎めるような響きがまじった。
「ならば、おまえは、なんの意志もなく、今後の展望もなく、身を焦がす欲求もないまま、単に追っ手から身を守るために、魔王宮を訪れた、というのか?」
「小悪党なもので。」
首を捻るゾールに、ぼくは話しかけた。
「ぼくらのような小悪党は、たとえば、おまえがかつて、操っていた古来の盗賊団などとは、わけが違うのさ。
理解しろよ。」
ゾールは、ぼくをじっと見つめた。
「無意識にでも、視線に威圧をこめないでくださいませ。」
ぼくの身体を、片目にはめた魔道具で操作しながら、ティーンは言った。
「彼は怪我人なのです。重傷といえるのは、足首の捻挫くらいですが。けっこう、あちこちに打撲があります。たぶん、今夜は熱が出ます。」
「あとで、氷と布を用意させよう。」
ゾールは言った。
「ここには、人間も何人か暮らしている。
その者に、おまえたちの面倒をみさせよう。」
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