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第四章 混迷
第47話 神に背きしもの
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別にぼくは、自分が何者であったかを、それほど秘密にするつもりはなかった。
いや、実をいうと、カッコをつけていただけなのかもしれなかった。
このぼくの好みにぴったりの少女に対して、ぼくが実は、齢90歳の老衰でくたばったばかりのじじいだと、知らせるよりも、謎めいた美少年で、もうしばらく、いさせて欲しかったというのが、本音だ。
エミリアと会うのは数十年ぶりだったが、ぼくの記憶にある通りの、美少女のままだった。
幼いながらも品のある顔立ちは、表情によって、清楚にも、あどけなくも、妖艶にも見える。
怪盗集団ロゼル一族の棟梁。
エミリア。
「あなたの前世は、“背教者”ゲオルグなの、ヒスイ?」
ティーンが言った。
「じゃあ、小悪党どころか、世界の偉人じゃない。」
「そんなお偉い存在なものか。」
ぼくは、不貞腐れて言った。
「大邪神ヴァルゴールも、気が利かない。上古の英雄王でも転生させておけば、いまごろは、中央軍など、死体の山だ。」
「わかった。」
ティーンは、納得がいった、とでもいうように大きく、頷いた。
「なにが、わかったんだ、アルディーン姫。」
エミリアが、からかうように言った。
「魔拳士ジウル・ボルテックや、邪神がなんで、わたしに力を貸してくれるかは、わからないけど、中央軍を粉砕して欲しいなんて、わたしはちっとも思っていない。
適材適所……わたしが、もっとも必要とする人材を配置してくれた……ということだろう。」
「アルディーンは、あたまのよい子だよね。」
もう1人の少女、ラスティが言った。
「さあ、お湯が冷める前に、湯浴みをしてしまおうよ。」
ラスティ…ラスティ!
エミリアとの思いもよらない最下位に、気がつくのが、遅れたが、その名は、もっとも神竜に近いと噂される古竜、“氷雪公主”ラスティのものだった。
ラスティは、ティーンを脱がそうとし始めるし、ティーンはそれに、抵抗しはじめたので、ほくは、寝台に横になって、背を向けた。
ぼくの背中で、女性たちは、バタバタと平和な争いを続けていたが ちゃぽちゃぽと水の跳ねる音と、ふううっというティーンの満足そうなため息がきこえた。
「……中央軍が、わたしの身体に、アデルの魂を移して『継承』を完了させようとしているのは、相手の意思も関係なく、“魂移し”が出来る魔導師グリシャム・バッハの存在にかかってるのよ。」
お風呂の力か、やや、落ち着いた声で、ティーンは言った。
「あなたの足取りが調べがつけば、当然、魔王宮のなかにも追手はかかる。」
これはエミリアの声だった。
「あなた方は、三層の竜を傷つけた罪で、古竜に拘留されているから、多少の期間は、保護してやることはできる。だが、それは無限ではないし、向こうが、正当な権利をもって、引渡しを要求してこられたら、いずれ、渡さぬ訳にはいかないたもろう。」
「正当な権利?」
「統一帝国皇室の姫を保護するという名目だ。」
「ティーン……アルディーン姫の身柄を要求できる勢力は、いくつもありますよ。」
ぼくは、彼女たちに背を向けたま、そう言った。
「今回の中央軍の仕掛けに、彼らも一斉に動き出すでしょう。それこそ“正当な権利”を主張してね。」
「中央軍以上に、『正当性』のあるものがいるの?」
ラスティの声だった。
「人間の音楽とか踊りは好きだけど、組織ことまではわからない。」
「魔王宮の竜たちも一度、人間社会を見物しておくといいと思うよ。」
ぼくは言った。
「ゾールを初めとして、魔王宮の古竜たちは、そのまま、好き勝手に人間社会に出すべきではないと、アモンが、判断したばかりだら、ね、ゲオルグ。」
「ランゴバルドの冒険者学校はどうかな?
あそこは、アデル帝も一時、在籍していたはずだから、古竜も名前を変えれば、入学させてくれるはずですよ。」
「あなたが、ゲオルグだとすれば、死んでから1ヶ月もたってないはずだけど?、」
エミリアの声には、嘲るような響があった。
「10年前に理事長が引退してから、あそこはだいふ、変わってしまってるの。
知らない?」
それは、ぼくが、あらゆふことに興味を失って、隠遁生活を送っていた時期だった。
悠々自適。
ものは言いようだが、要するに、一人暮らしにはやや広すぎるコンドミニアムに、ひとり、寝て起きて、ときを無為に過ごしていた時間だった。
「廃校になった……とでも言うのですか?」
ぼくは、振り返りかけて、タライの中で湯を浴びているティーンの裸の背中をみて、あわてて、壁に向き直った。
「逆よ。いまは、とんでもないエリート校。アデル陛下の皇位継承候補の12名が全員、あそこを卒業しているのよ?」
ぼくは、どれだけ、世間から遠ざかっていたのだろう。
そもそも、アデルが継承者として、12名の男女を育てていることも、ジオロから聞いてはじめて、知ったのだ。
ウィルズミラーは、もってたし、新聞も配達されていたが、それはとりとめのない、どうでもいい記事に埋め尽くされていて、必要な情報がどこにあるのかも分からなかった。
いや。
それは、自分のせいだった。
必要なものを探すための、ほんの少しの努力。
それを怠ってしまうのが、ぼくにとっては「老い」がもたらしたいちばん顕著な悪影響だった。
いや、実をいうと、カッコをつけていただけなのかもしれなかった。
このぼくの好みにぴったりの少女に対して、ぼくが実は、齢90歳の老衰でくたばったばかりのじじいだと、知らせるよりも、謎めいた美少年で、もうしばらく、いさせて欲しかったというのが、本音だ。
エミリアと会うのは数十年ぶりだったが、ぼくの記憶にある通りの、美少女のままだった。
幼いながらも品のある顔立ちは、表情によって、清楚にも、あどけなくも、妖艶にも見える。
怪盗集団ロゼル一族の棟梁。
エミリア。
「あなたの前世は、“背教者”ゲオルグなの、ヒスイ?」
ティーンが言った。
「じゃあ、小悪党どころか、世界の偉人じゃない。」
「そんなお偉い存在なものか。」
ぼくは、不貞腐れて言った。
「大邪神ヴァルゴールも、気が利かない。上古の英雄王でも転生させておけば、いまごろは、中央軍など、死体の山だ。」
「わかった。」
ティーンは、納得がいった、とでもいうように大きく、頷いた。
「なにが、わかったんだ、アルディーン姫。」
エミリアが、からかうように言った。
「魔拳士ジウル・ボルテックや、邪神がなんで、わたしに力を貸してくれるかは、わからないけど、中央軍を粉砕して欲しいなんて、わたしはちっとも思っていない。
適材適所……わたしが、もっとも必要とする人材を配置してくれた……ということだろう。」
「アルディーンは、あたまのよい子だよね。」
もう1人の少女、ラスティが言った。
「さあ、お湯が冷める前に、湯浴みをしてしまおうよ。」
ラスティ…ラスティ!
エミリアとの思いもよらない最下位に、気がつくのが、遅れたが、その名は、もっとも神竜に近いと噂される古竜、“氷雪公主”ラスティのものだった。
ラスティは、ティーンを脱がそうとし始めるし、ティーンはそれに、抵抗しはじめたので、ほくは、寝台に横になって、背を向けた。
ぼくの背中で、女性たちは、バタバタと平和な争いを続けていたが ちゃぽちゃぽと水の跳ねる音と、ふううっというティーンの満足そうなため息がきこえた。
「……中央軍が、わたしの身体に、アデルの魂を移して『継承』を完了させようとしているのは、相手の意思も関係なく、“魂移し”が出来る魔導師グリシャム・バッハの存在にかかってるのよ。」
お風呂の力か、やや、落ち着いた声で、ティーンは言った。
「あなたの足取りが調べがつけば、当然、魔王宮のなかにも追手はかかる。」
これはエミリアの声だった。
「あなた方は、三層の竜を傷つけた罪で、古竜に拘留されているから、多少の期間は、保護してやることはできる。だが、それは無限ではないし、向こうが、正当な権利をもって、引渡しを要求してこられたら、いずれ、渡さぬ訳にはいかないたもろう。」
「正当な権利?」
「統一帝国皇室の姫を保護するという名目だ。」
「ティーン……アルディーン姫の身柄を要求できる勢力は、いくつもありますよ。」
ぼくは、彼女たちに背を向けたま、そう言った。
「今回の中央軍の仕掛けに、彼らも一斉に動き出すでしょう。それこそ“正当な権利”を主張してね。」
「中央軍以上に、『正当性』のあるものがいるの?」
ラスティの声だった。
「人間の音楽とか踊りは好きだけど、組織ことまではわからない。」
「魔王宮の竜たちも一度、人間社会を見物しておくといいと思うよ。」
ぼくは言った。
「ゾールを初めとして、魔王宮の古竜たちは、そのまま、好き勝手に人間社会に出すべきではないと、アモンが、判断したばかりだら、ね、ゲオルグ。」
「ランゴバルドの冒険者学校はどうかな?
あそこは、アデル帝も一時、在籍していたはずだから、古竜も名前を変えれば、入学させてくれるはずですよ。」
「あなたが、ゲオルグだとすれば、死んでから1ヶ月もたってないはずだけど?、」
エミリアの声には、嘲るような響があった。
「10年前に理事長が引退してから、あそこはだいふ、変わってしまってるの。
知らない?」
それは、ぼくが、あらゆふことに興味を失って、隠遁生活を送っていた時期だった。
悠々自適。
ものは言いようだが、要するに、一人暮らしにはやや広すぎるコンドミニアムに、ひとり、寝て起きて、ときを無為に過ごしていた時間だった。
「廃校になった……とでも言うのですか?」
ぼくは、振り返りかけて、タライの中で湯を浴びているティーンの裸の背中をみて、あわてて、壁に向き直った。
「逆よ。いまは、とんでもないエリート校。アデル陛下の皇位継承候補の12名が全員、あそこを卒業しているのよ?」
ぼくは、どれだけ、世間から遠ざかっていたのだろう。
そもそも、アデルが継承者として、12名の男女を育てていることも、ジオロから聞いてはじめて、知ったのだ。
ウィルズミラーは、もってたし、新聞も配達されていたが、それはとりとめのない、どうでもいい記事に埋め尽くされていて、必要な情報がどこにあるのかも分からなかった。
いや。
それは、自分のせいだった。
必要なものを探すための、ほんの少しの努力。
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