小悪党、転生~悪事を重ねてのし上がって大往生、これでいいやと思ったらなぜか周りが離してくれません

此寺 美津己

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第四章 混迷

第48話 戦巫女

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ミヤレは、自分が悪目立ちしていることにまったく気がついていない。
全身を覆う鎧は、厚みのある金属で出来ている。
耐衝撃、対斬撃、耐熱、耐電撃、耐魔力、面頬を下ろしてしまえば、通常なら即死に至るような毒ガスも半死くらいに留めてくれる。
(半死でどうするのだ、という問題ももちろんあるが、当然そこは自分に回復魔法をかけつつ、回りの空気の浄化、またはそこからの脱出を模索するのだ。)

ただし様々な、付与を行った結果、鎧の重量は増している。

外見としては、重装甲の騎士鎧に近いかもしれない。
そして、騎士が馬に乗るのは、自力では満足に動けないような重量を運ぶためなのだ。


魔王宮の入口。
通称、舞踏会場にたむろするのは、大半が、観光目的であり、冒険者にみえるものたちは、冒険者のコスプレを下観光客である。

その中に、全身鎧を身につけ、山のような荷物を背負ったミヤレの姿は、明らかに異様に映った。

もちろん、少数ながら、魔王宮の探索や素材の回収を目的とする本物の冒険者パーティも皆無では無い。
だか、そういったものたちは、“舞踏会場”なとで、立ち止まることは、ない。

ガイドは必要としないし、ここで改めて、高い値段で、食料や水、装備を追加するのもは少ない。
また、食糧などかさ張るものは、“収納”機能を備えたリュックのひとつも、気の利いたパーティならば、持っているのが普通なので、こんな大荷物を背負って、迷宮入りするものは、本当に珍しいのだ。

なので、ガイド屋“ワンショットリーガン”の店主であるリーガンは、目の前に現れたミヤレの姿に肝を潰した。

「……ひょっとすると、『戦女神神殿』の戦巫女か?」

リーガンがやっとそれだけを絞り出すと、鎧の戦士は、頷いた。

「えらい装備だな。目指すエリアは、どこだ?」

「ひとを探してしている。ガイドを頼みたい。観光用ではない本当のガイドだ。
それと、これは標準装備だ。『えらい装備』ではない。」

「聞いた事はある。
戦巫女は、己自身を戦女神の戦闘力にいかに近づけるかに、信仰の重きをおいているとか。
かの女神が、奮ったとされる力を再現しようとすると、そうか、その装備か。」

リーガンは、ミヤレに座るように、依頼した。
背の荷物を脇において、腰を下ろしたミヤレのお尻の下で、椅子が軋んだ。

「ミヤレ、という。」
厚い篭手をはめた手が、革の小袋を机に置いた。
いや、小袋ではない。
篭手が無骨すぎるために、袋が小さく見えただけだ。

リーガンが、中身を確認すると、“戦女神通貨”が、ザラザラとこぼれ落ちてきた。

美しい女性の横顔が、浮き彫りになった金貨であふ。

これは困る。
これは、たしかに通貨ではあるが、北方では、流通していないのだ。
普通に通貨として、使えるのは、戦女神神殿のあるオールべくらいで、ほかの地域では、戦女神の戦力を雇う時くらいしか、使えない。

「手持ちはあまりないので、これを担保に、優秀なガイドを雇いたい。
探す相手は、魔道院に在籍していた、クローディア家の姫君、アルディーン様だ。」


「魔王宮は、かなり広い迷宮なんだが。」
断る気まんまんで、リーガンは慎重に言った。
積まれた金貨の価値はとんでもない。
“戦女神の巫女”を一分隊。1年間雇うことが出来るだろう。
それは、おそらく古竜をも倒せる戦力なのだが、リーガンには使いようがない。
「……ひとひとりを探すのは至難の業だ。」

「わたしは、我が神の血を引くアルディーン姫をなにがなんでも保護しなければならないのだ。」

「だったら、なおさらだ。自分で迷宮な潜るよりも、ここで、その姫様が出てくるのをまったほうがいい。出入口は、ここしかないから、必ずここを通る。そのときに、その姫様を保護すればいい。」 

「それでは、遅い。」
ミヤレは、不満げに言った。椅子が、彼女のお尻の下で、どうように不満げな呻きをもらした。
「クローディア家も、北方軍も、動き出している。そして、なによりも中央軍だ。
やつらの手に、姫を渡す訳にはいかない。」

平々凡々なガイド屋の店主として、リーガンはそんなものには、関わりたくなかった。

「それにしても手がかりのひとつもないのでは」

「それが、ある。」
ちょっと、嬉しそうに戦巫女は、笑った。
「まず、姫はひとりではない。とんでもない美形の少年と一緒だ。姫もなかなかだから、あの二人が一緒なら、けっこう目立つ。」

リーガンの脳裏に、つい数日前に、ガイドを請け負ったティーンとヒスイの顔が浮かんだかどうか。

「それに、姫の目的は、階層主に会うことだ。階層主を探せば、自動的に姫のもとにたどり着ける。」

「……それは、禁則区域への案内と、災害級の魔物への橋渡し、を行うということになる。」
リーガンは、大袈裟に両手を天井に差し伸べた。お手上げ、の意味である。
「うち、の評判をきいてきてくれたんだろうが、ね。階層主の試しを通過したガイドは、ウチもひとりしたおらず、そいつはいま迷宮入りしていて、ここにはいないよ。」

「なら! その次に頼りになるガイドを紹介してくれ。」
ミヤレは、一歩も引く気は無さそうだった。
完全武装の戦巫女を排除するには、どうの程度のコストがかかるだろうか。

少なくとも、この案内所は、全壊になるだろう。

「わたし、行きましょうか?」

その声は、天井からかかった。

ミヤレは、少し驚いたようだった。

少年とも少女もとつかない。中性的な美貌の、その生き物は、天井にへばりついていた。

しかし。
いつから?

部屋はそれほど広くはなく、天井にそんなものがいたなら、ミヤレも、そしてリーガンも気がついたはずだった。

のとのと、と這うように、その生き物は降りてきた。
すっと立ち上がった動作は、人間のもので、まだ10をいくつも過ぎていない子供のように見える。


「ウリム、あんたが……」

「ふむ。」
ミヤレは、ひとめでこの生き物が尋常な存在でなきことを認めたようだった。
「わたしは闘うことしか出来ない。
迷宮を案内し、わたしを階層主のもたにまでみちびけるか?」

「できるよ。」

「なら頼む。おまえも階層主の試しを受けているのか?」

「いや。でも階層主に紹介はできるよ。」

「まて! ウリム、おまえ、なにを勝手なことを!!」

可憐な生き物は、リーガンの顔を見返した。
「関わりたくない、という気持ちは理解出来る。」
生き物は、ゆっくりと言って聞かせるように話した。
「でも、もうすっかり、巻き込まれているんだよ。」


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