小悪党、転生~悪事を重ねてのし上がって大往生、これでいいやと思ったらなぜか周りが離してくれません

此寺 美津己

文字の大きさ
56 / 59
第五章 迷宮ゲーム

第52話 古竜の牢獄

しおりを挟む
ティーンは、治癒魔法は得意らしい。
実際、この数日間、ぼくはティーンに、最新の治癒魔法を中心とする最新の魔法を講義してもらっている。
せっかくの数日のアドバンテージを稼ぎ出したにも関わらず、第三階層主リアモンドは、まだ帰ってこない。
迷宮内部からの連絡には、ウィルズミラーは使えないが、古竜たちには、竜珠がある。
リアモンドに連絡は着くはずだし、ティーンとぼくの来訪が、連絡に値しない事象だとはとても思えなかった。

実際に古竜たちも、ぼくたちをどうしたらいいか、判断がつきかねるから、ぼくたちをこうして半監禁しているのだろう。

「でも、この何日間は、とっても貴重な時間だわ。」
ティーンは、とんでもない場所で、出会い、なし崩しに彼女の逃走に付き合うことになったが、どうもぼくたちは、相性がいいようだった。
まるで、何年のまえからの知り合いのように、気軽に会話が出来たし、一緒にいて、一瞬たりとも退屈はしなかった。
人生経験という点では、ぼくは彼女の6倍はあったが、彼女の頭の冴えや記憶力は、ぼくを楽しませた。

…同様に、ぼくの話しも彼女は楽しんでくれていた、と思いたい。

「皇位継承を巡っては、いくつかの勢力が、しのぎを削ってるの。
いちばん、リードしているのは、アデルの長子ガトル皇子を中心とする一派ね。宮中の高級官僚を取りまとめて、すぐにでも皇位を継承しても、そつ無く、帝国を運営できる。一方で、軍からは積極的な指示は受けていないの。
第二皇子のサラステインは、地方軍、とくに東部方面軍の指示が厚い。もともと一時、冒険者をしていたもので、武人の風格があって、大衆からの人気も高い。
経済界からの献金がもっとも多いのが、キケルト皇女。
軍事予算を削って、公共投資を積極的に行おうとする予算案をなんどか提出していてる。反面、公共投資のなかに、鉄道にかわる流通網の構築が含まれていて、鉄道公社からは警戒されている。
この3人が、そのほか、アデルの血を引かない、候補者たちからは頭ひとつ、抜きでた存在。
中央軍は、その中では、影響力がすくないほう。誰が組むにしても、中央軍が強すぎて、傀儡化しちゃう未来が目に見えているのよね。」

ほうほう、と感心するぼくに、ティーンは冷たい目をむけた。

「ある程度、教養のある人間なら、このくらいの知識はあるのよね。
ヒスイ。新聞はとったなかったの?
ウィルズミラーが使えないなんて、化石みたいな事は言わないわよね?」

「それは、ボルテックからも最初に言われた。」
ぼくは、怠惰な生活を嘆いたが、老いる、といのは、そういうことだ。足腰が不自由になってからも、馬車馬のように働き続けないと、寝食もままならぬようなら、それはそれで不幸に違いない。

「それで?
後継者争いについて、中央軍が、圧倒的有利な立場どころか、有力候補から、軒並みそっぽを向かれている状態なのは理解した。
それと、ここで、時間稼ぎが出来たのとどういう関係が。」
ぼくは、気がついて、頷いていた。
「そうか。ほかの対立勢力がほっておかないか。」

「そういうこと。
アデルの魂をわたしに移すなんて、反則はともかく、どうにでもなる傀儡として、わたしを候補者に擁立したいんだぅてことは、動きからみても明らかよね。
ごまかそうとしたって、筆頭魔導師のグリシャム・バッハまで、送り込んでしまったのだから。
ほっておくと思う?
少なくとも、クローディアの実家と、北部方面軍、それに中央軍とはとりわけ中の悪い遊撃機動軍、戦女神神殿あたりは動きだすころ。」

「それに加えて、第二層の吸血鬼たち。
第三層の古竜も、それぞれの思惑で動くだろう。
言っておくけど、ぼくはあの超越者どもに好かれることには、自信があるんだ。」

ティーンは、んな、根拠もないことを、と言いかけて、うーんと首をひねった。

「……たしかに、氷雪公主ラスティは毎日のように、ここを尋ねてくれているけど。」

世話役としては、エミリアがいるのだから、古竜たちのなかでもリーダー各のはずのラスティが足繁く、通う必要はない。
にも関わらず、毎日、どころか、日に数回もラスティは、尋ねてくる。
三回に一回は手作りのクッキーを持ってくる。
焦げていることも多いが、食べられる味だ。
褒めてやると、にこにこと笑って、喜ぶ。

「“深淵竜”もだろう?
とにかく、ぼくは、あいつらには好かれやすいんだ。」
「神にする背いた男、“背教者”ゲオルグが?
不思議な話しよね!」
「それ以前に、だ。」

ぼくは、足をゆっくり伸ばしたり、曲げたり、問題がなさそうなので、立ち上がって、とんとんと、床を踏んでみた。
足の治癒は、完璧だ。
極端な治癒魔法。たとえば、見るまに傷が塞がり、肉が盛りあがったり、切断された手足が生えてきたりするものは、あとあと機能面で問題が生じることが多い。

ティーンの治癒魔法は、そこまで、極端な回復力はなかったが、副作用もなく、すこし、歩いたり、飛び跳ねたりしてみたが、まったく痛みも違和感もなかった。

「それ以前に、なによ?」
「裏社会で、少々、名が売れていたチンピラを神が、地上における代行者として、スカウトすると思うか?」


少し考えて、ティーンは言った。

「まあ、ありえないと思う。」

「ありえないことが、起こっている。
ぼくが、神の地上代行者となったのは、神が自ら魔王をつくって、古の魔王に対抗させるという発想に興味があったのと、神様たちが、提供してくれた利益だ。
やつらが、護衛用につけてくれた天使ひとりで、当時、ぼくが抱えていたトラブルを前部解決できたのさ。」

「好奇心旺盛で、短絡的。」
ティーンは、顔をしかめた。
「まあ、わたしにも似たようなところがあるのは認めるけど。
そして、目先の欲求に弱くて、善悪の判断がつかない。」

「そして、神創魔王を作るのに、あんまりにも犠牲がでるので、イヤになった。
いわゆる、蠱毒に近いやり方でな、あれは。
一国を贄にして、やっと一体の擬似魔王を誕生させるという方法だ。
なので、ぼくは、ちょうど銀灰にやっていた竜王たちに乗り換えることにした。」

「無節操で、すぐ相手を裏切る。」

「ちなみに、当時知り合った“竜王の牙”の古竜たちは、ぼくの考えに賛同してくれたぞ。
分かるだろう?
無限寿命をもつ、超越者どもは、人間から見れば、一人残らず、小悪党でしかないんだ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...